REG2復習(Volume2)

の続き

Volume1は、
・Chapter1-5:投資によらない所得に対する所得税
・Chapter6:投資による所得(資本不課税原則が適用される所得)に対する所得
だった

Volume2のChapter9-11では、連邦所得税法の残りとして、パートナーシップや株式会社の設立を取り扱う
パートナーシップ持分partnership interestや株式stockも財産propertyの一種であるため、将来処分時に実現損益を計算するためにbasisを算出しておかなければならない

Volume2のChapter12-14では、連邦遺産税と連邦贈与税を取り扱う

Chapter 7:パートナーシップ①

PSは租税主体ではない
・PSの所得はパートナーの段階でのみ課税される(二重課税が回避可能)
・PSは税法上、発生した所得や費用を各パートナーにpass throughさせる役割を持つ

学ぶこと
・PSの設立
・PSの日常業務
 ・PSに関わる課税所得の計算過程
 ・PS持分のbasisの変動:資本の拠出による調整、PS損益による調整
※PSの出口戦略はChapter8で取り扱う

PSの特徴

・州政府への登録が不要
・パートナー間の合意は口頭でもOK(書面は不要)
・所有と経営が一致(株式会社は、所有と経営が分離)
・パートナーは無限責任(株主は、有限責任)

課税に関するPSと株式会社との違い
・株式会社:二重課税される、発生主義でしか納税できない
 ①株式会社として、税前利益に対して法人税が課税される(Form1120)
 ②株主として、配当を受けると配当所得に対して課税される(Form1040)
・PS:二重課税されない(パススルー)、現金主義で納税できる(個人や小規模会社と同様)
 ①PSとして、課税なし(Form1065で情報のみ申告する)
 ②パートナー個人として、所得に対して課税される(Form1040のScheduleE)※個人事業主の場合はScheduleCであることに注意

PSの設立

PS設立における損益認識の基本的な考え方
PSにおける財産(パートナーシップ持分)のbasisを算出するために、まず財産取得時にいくら課税されるのかを理解する

PSの設立にあたり、構成パートナーは以下のいずれかで貢献contributeすることにより、パートナーシップ持分を取得する
①現金の拠出:非課税 ※まだ儲けを出してないので課税もされない
②不動産や事業用資産の現物出資:非課税(実現利得は生じるが、認識損益は0とする) ※交換取引と同様
③役務の提供:課税 ※ストックオプション受取時にFMV分課税されるのと同様

パートナーシップ持分のBasisの算定
①現金を拠出して取得した場合:現金の金額
②現物出資により取得した場合:拠出時点での財産のBasis額 ※交換取引と同様
③役務の提供により取得した場合:パートナーが取得した持分のFMV額 ※取得時に既に課税されているため、二重課税されないようにbasisを上げておく

PSにおける財産のBasisの算定
②により、パートナーのbasisを引き継ぐ
つまり、拠出時点での財産のbasis=出資したパートナーが取得した持分のbasis=PSにおける受領財産のbasis
また、資本損益の算出において、持分の保有期間(=受領財産の保有期間)は、個人的に保有していた期間も含めて税率を適用する(長期資本損益の方が低税率にできる)

PS設立において損益認識が必要とされる場合
交換取引との相違点
パートナーの拠出した財産に抵当がついている場合、パートナーの債務をPSが引き受けることになる
パートナーが拠出した財産のbasis額を超えてパートナーの債務が減少される場合、超過分は認識利得として認識しなければならない
例えば、あるパートナーがPSの持分50%をBasisが$150,000である財産を拠出したとき
・抵当が$100,000だった場合:減少した債務は50,000(<$150,000)なので、認識利得は$0
・抵当が$320,000だった場合:減少した債務は160,000なので、認識利得は$10,000(=160,000-150,000)

例えば、あるパートナーがPSの持分20%を、FMVが$10,000、Basisが$4,000である財産(抵当$7,000をPSが引き受け)を出資することで取得した
・パートナーの認識利得は?: 7000*80% - 4000 = 1600 ※設立時に儲かっているため
・取得した持分のbasisは?: 4000 + 1600 - 5600 = 0

PSの所得税の計算

PSが日々生み出した利益に対する税金は誰がどのように納税していくのか?
PSは納税主体ではないが、PLを作成して申告する義務はある

PSの所得は、2段階でパートナーにパススルーされる
第1段階:PLを構成する各勘定科目の中から、「特別扱いする項目」(通常所得の計算には含めず、個別に控除しなければならない項目)のみを抜き出して各パートナーにパススルーする(Schedule K)
第2段階:残りの項目から通常所得の合計額を算出(Form1065)し、各パートナーにパススルーする(金額をSchedule Kに転記する)
・ScheduleKの金額を、持分比率に応じて分配し、見やすいフォーマットにした資料(Schedule K-1)を作成し、各パートナーに送付する(各パートナーが納税しやすいようにするため)
・各パートナーは、通常所得をScheculeEに転記し、個別の控除項目をScheculeAに転記して申告する

特別扱いする項目(人によって控除額が異なる項目)
・消極的活動に伴う損失の控除:不動産などの賃貸所得、利子/配当/ロイヤリティによる所得
・投資活動に伴う損失の控除:資本損益、1231上損益
・中小企業に対する優遇税制:179条費用化控除
・慈善寄付金
・投資利息(投資目的の借入金に対する利息)
・外国所得税:項目別控除と税額控除のどちらで控除するか選択できるため
・非課税所得

通常所得の計算に含める項目(合計値で十分な数値)
・売上高
・売上原価cgs
・支払賃金
・貸倒損失
・賃借料
・減価償却費及び償却費
・保証支払額:パートナーに対して、PSの通常所得配分の前に、損益に関わらず報酬を支払うこと(サラリーマンに対する賃金と同様の取り扱い)
 ・パートナー個人としては通常所得の扱い
 ・PSとしては事業経費の扱い(Form1065で控除可能)

※予備知識:2017年税制改革法(減税雇用法:TCJA, Tax cuts and Jobs Act)
・トランプ税制(法人税の減税政策)の一部
・PSにも恩恵を与えるため、所得控除を認めた

損失の制限(アットリスクルール)
PSからパススルーされた通常損失のうち、パートナーが控除に使えるのは、パートナーシップ持分のbasis(パートナーがリスクを負っている範囲)までに限定される
※ PSは無限責任なので、全額を分担して支払う必要がある(分配率は契約で定める)

財務会計上の利益と通常所得の差異

FARとREG2の相違点の復習
PSの作成するPLに調整を行い、Form1065(情報申告)に記載する通常所得を計算する

PSの情報申告書(Form1065)

・Form 1065 (Information Return):通常所得のみ
・Schedule K:特別扱いする項目+通常所得、PL上の情報が全て載っている
・Schedule K-1:パートナー毎への配布用(各個人でScheduleEやScheduleAに転記する)

パートナーシップ持分のBasis

PSの設立時、各パートナーの拠出額がPS持分の当初basis(原始投資基準額)になる
PSを運営し、売上や入金があっても、PS持分のbasisは変わらない
期末12月になり、パススルーが行われると、利益分(所得分)が自動的に課税されるため、PS持分のbasisも増加する
翌期1月になると、PSからパートナーに分配distribution(パススルー時点で課税されているので分配時には非課税)があり、投資を回収したので、PS持分のbasisも減少する
このように、PS持分は毎年変動する

PS持分の変動要因(調整要因)
①パートナーとPSの間の取引(拠出および分配)
②PSからパートナーへの損益パススルー
③負債の調整

パートナーとPSの間の取引(拠出および分配)
・追加の資本拠出(追加出資)→加算調整
・PSからの分配(投資回収)→減算調整

PSからパートナーへの損益パススルー
・PSの通常所得/PSにおける非課税所得のパススルー→加算調整
・PSの損失のパススルー→減算調整

負債の調整
・パートナー個人の負債が変化する場合
 ・負債が減少(PSによる引き受けなど)→減算調整
 ・負債が増加(PS負債の引き受けなど)→加算調整
・PSの負債が変化する場合
 ・負債が減少(借入金の返済など)→減算調整
 ・負債が増加(借入など)→加算調整

Chapter 8:パートナーシップ②

学ぶこと
・PSの日常業務
 ・PS持分のbasisの変動:PSからの分配による調整
 ・関連納税者間取引の取り扱い
 ・課税年度の決定
・PSの出口戦略
 ・PSからの分配
 ・PS持分の売却

PSにおける関連納税者間取引

PSの日々の業務
関係納税者間の資産処分から生じた損失は認められない(利得には課税される)

関連納税者間取引における資本資産の処分益
受領者が非資本資産として取り扱う場合には、処分するのが資本資産の場合でも、譲渡者は通常所得(資本所得ではなく)として扱わなければならない
つまり、処分益には高税率が適用される
例えば、PS1が関連納税者であるPS2に土地を売却し、PS2が第三者に土地を売却(土地は棚卸資産=非資本資産の扱い)した場合

PSの課税年度

個人でPSを設立する場合、課税年度を2/1-1/31にすると、課税の繰延期間が一番長くできる(節税効果が高い)
なぜなら、期末=パススルーが20x1/1/31になり、個人の確定申告は20x2/4/15であるため
・パートナーが個人である場合、個人の課税年度は1/1-12/31なので、PSの課税年度も1/1-12/31になる
・パートナーが会社である場合、課税の繰延が最小額となるように課税年度が選択される

PSの終了

PSの構成パートナーが1名になった(自営業に戻った)場合、税法上はPSが終了したことになる
REG1で学習したパートナーシップ法上の終了(解散→清算→告知)とは異なる

※予備知識:アメリカの会社法
・事業組織法:ほとんどが州法だが、統一法や模範法であるため、州法間の差異は小さい
 ・パートナーシップ法:UPA(1914年)、RUPA(1992年)
 ・会社法:MBCA(1950年)、RMBCA(1984年)

PSが合併や分割された場合、大きい方が存続PSとなる

PSからの分配

PSの出口戦略
・パートナーとPSのやりとり
・パートナーシップ持分の売却

PSからの分配
・継続事業における分配 nonliquidating distribution
・清算過程に伴う分配 liquidating distribution
 ・PSの解散
 ・パートナー個人のPSからの脱退:パートナーシップ持分を償還し、見返りに分配を得る

損益の認識
・PS側の損益認識:パートナーに財貨を分配しても、PS側では損益を認識しない(認識損益はゼロになる)
・パートナー側の損益認識:原則としては、損益を認識しない(場合によって認識するが、なるべく認識しない仕組みになっている) ※なぜなら、パススルー時に既に課税されているから
 ・清算に伴い分配を受け、投資額が回収できなかった(分配が持分basis以下)場合 ※清算されるため、分配後のPS持分はゼロになる
  ・金銭による分配の場合:損失として認識する ※金銭のbasisを上げることはできないため
  ・財産による分配の場合:受領財産のbasisを上げる(将来、損失を認識する) ※なるべく損失を認識しない
 ・持分basis以上の分配を受領した場合
  ・金銭による分配の場合:basisをゼロまで減算しても余った分は利得として認識する ※金銭のbasisを下げることはできないため
  ・財産による分配の場合:受領財産のbasisを下げる(将来、利得を認識する) ※なるべく利得を認識しない

税法では、PSとパートナーの間など、密接な関係者間の取引においては、なるべく損益認識を行わないという考え方を採っている(恣意的に損益が作り出されることを防ぐため)

PSからの分配におけるBasisの算定

PSからの分配は、パートナー側からすると投資の回収にあたるため、パートナーシップ持分のbasisを減算調整する

以下の7パターン×2(継続or清算)を理解する必要がある
・ケース1:持分basis以下の分配を金銭で受領した場合
・ケース2:持分basis以上の分配を金銭で受領した場合
・ケース3:持分basis以下の分配を財産で受領した場合
・ケース4:持分basis以上の分配を財産で受領した場合
・ケース5:持分basis以下の分配を財貨(複数種)で受領した場合
・ケース6:持分basis以上の分配を財貨(複数種)で受領した場合
・ケース7:持分basis以下の分配を財貨(複数種)で受領(かつ金銭額が持分basis以上)した場合
※ケース3,4において、パートナーがPSからの受領財産のbasisは、原則としてPS側での当該財産のbasisを引き継ぎ、損益認識を繰り延べるために必要に応じて加減調整する(株式会社の場合、全く異なる考え方をするので要注意)
※ケース5,6,7において、複数種の財貨で分配を受けた場合、初めに金銭を処理し、次に財産を処理する

パートナーシップ持分の売却

パートナーがPS持分を処分すると、原則として、資本損益が発生し、実現損益(=実現総額−basis)が発生する
・PS持分の処分に伴い、パートナーがPSの負債から解放された場合、その負債分を実現総額に加算する
・利得のうち、以下に該当するものは、近い将来に実現される(通常所得になる)ため、通常所得として取り扱う(資本所得より高税率で課税される)
 ・未実現債権 unrealized receivables (現金主義のCPAがサービス提供したが代金を回収していない)
 ・含み益を有する棚卸資産 appreciated inventory

PSとして課税され得る他の事業形態

LLPとLLCは、PSとして課税されるか、会社として課税されるか、選択可能
・有限責任パートナーシップ(LLP)
・有限責任会社(LLC)
LLPとLLCは全員が有限責任(ジェネラルパートナーがいない)

※予備知識:パートナーシップの種類(GPS/LPS)
・GPS(General Partnership):通常のPS、パートナー全員がジェネラルパートナー(無限責任、経営に参加する)
・LPS(Limited Partnership):リミテッドパートナー(有限責任、経営に参加しない)が1人以上いる

Chapter 9:株式会社①

大航海時代の東インド会社が発祥

パートナーシップの学習と同様に、設立/日常業務/出口戦略に分けて理解していく
パートナーシップとの違いを意識しながら学ぶ
・設立時に株主はいくら課税されるのか?
・株主が取得した株式のbasaisはいくらか?

株式会社は株主から独立した租税主体である
・所得に対して法人所得税を支払う

学ぶこと
・法人所得税の概要
・設立に関わる取り扱い
・個人所得税との相違点
・財務会計上の利益から課税所得への調整

株式会社の税法上の分類
・C Corpotation(一般的な株式会社):Form1120を使って法人所得税を申告する
・S Corporation(小規模会社):Form1120Sを使って法人所得税を申告する

アメリカの法人所得税と個人所得税
法人所得税において、以下は個人所得税と同様(日本のように税法が分かれていないため)
・交際接待費
・減価償却費

株式会社の設立

設立時の話

株主側の損益認識
株式会社の設立方法(株式の取得方法):PSの設立方法と基本的には同じだが、Section351の規定がある
・金銭の出資:非課税 ※直後に会社を支配する場合
・役務の提供:課税(FMVに対して)
・財産(含み益を持つもの)の拠出:非課税 ※直後に会社を支配する場合

Section351
・金銭および財産を出資した者が、会社を支配(株式の80%以上を所有)していない場合は、損益が認識されてしまう
・つまり、役務を提供した者が20%以上いる場合、節税目的の株式会社設立(実態はPSで充分)だと見做されて課税されてしまう

また、以下の場合も株主は損益を認識する(課税される)
・役務を提供した場合
・投資会社を設立する場合
・交換差金(株式以外の資産)を受領した場合
・株式会社による債務の引き受け額が、出資した財産のbasisを超過する場合:株式会社の場合、PSとは異なり有限責任なので、責任から解放される割合の按分計算は不要(計算が簡単)

株式会社側の損益認識
株式会社が財貨と交換で株式を発行する場合(新株発行、自己株式の取引)、会計上の資本取引に該当するため、損益を認識しない

株主側のbasis算定
PSの場合と同様
・金銭の出資:金銭の金額
・役務の提供:取得株式のFMV
・財産の拠出:拠出財産basisを引き継ぐ(ただし、認識利得分は加算調整、交換差金受領分は減算調整する) ※同種資産の交換取引と同じ考え方

株式会社側のbasis算定
・財産の拠出:株主側のbasisを引き継ぐ(ただし、株主側の認識利得分は加算調整) ※暗記

保有期間
資本損益の算出において、株主が取得した株式の保有期間(=株式会社が受領した財産の保有期間)は、個人的に保有していた期間も含めて税率を適用する(長期資本損益の方が低税率にできる) ※PSと同じ考え方

法人所得税の計算

日常業務の話
法人所得税も、個人所得税と同様に、総所得から控除項目を差し引いて課税所得を計算する

総所得
・総利益:総収入−売上原価
・配当金
・利息
・資本純利得

控除項目(=事業経費):個人所得税とは異なり、AGI前控除、項目別控除、人的控除はない
・減価償却費:個人所得税の場合と同様なので省略
・試験研究費:個人所得税の場合と同様なので省略
・創業費
・慈善寄付金
・受取配当金控除
・災害損失
・欠損金NOL

内国歳入法163条(支払利子の損金算入制限規定)
・トランプ税制は減税政策だが、減税しすぎないように調整している
・事業関連利子(投資活動関連利子を除く)は、損金算入(控除)できないようにした
・損金算入限度額は、調整課税所得の30%に事業受取利子を加算した金額

※予備知識:EBITとEBITDA
・連邦課税所得 taxable income
・調整課税所得 adjusted TI:EBITに相当する額
・EBIT(利息控除前税前利益):税引前当期純利益+支払利息−受取利息
 ※借入金の影響(設立間もない企業で大きい)を除いた利益
・EBITDA(償却前EBIT):EBIT+減価償却費
 ※設備投資の影響を除いた利益

法人特有の控除項目

創業費
・含まれるもの:法律費用(設立許可書など)、州に支払う手数料、設立発起人の出費
・含まれないもの(資本取引に該当するため):株式の発行費用/売出し費用/上場費用
・会社が営業を開始した課税年度において、$5,000を上限に即時控除できる(創業費が$50,000を超える場合は超過額分でフェイズアウト)

慈善寄付金
・個人による慈善寄付金との相違点として、控除時期と控除可能額がある
・控除時期:原則として支払った課税年度(個人と同様)で控除しなければならないが、発生主義を採用する法人の場合は、課税年度内に取締役会決議さえしていれば、支払いが翌期の申告書提出期限内まで遅れても、課税年度内で控除できる
・控除可能金額:法人は課税所得の10%までしか控除できない

受取配当金控除(DRD)
個人が100%出資の会社Pを保有し、会社Pが100%出資の会社Sを保有している場合を考える
会社Sが利益を生み出した段階で課税され、会社Pが配当を受けた段階でも課税され、個人が配当を受けた段階でも課税されてしまう
三重課税を避けるため、親会社が子会社から配当を受け取る際には課税しないことにする(二重課税にする)
・控除制限:子会社株式の所有率により、DRDによる控除可能割合は異なる
・借入金によるポートフォリオ株式からの受取配当金の場合、借入金の支払利息で控除を受けているため、配当受取時には控除できない

損失の取り扱い
・災害損失:全額を事業関連の損失として控除可能(財産のbasisが上限)
・欠損金NOL

法人の資本損失の取り扱い

個人の場合、$3,000を上限としてAGI前控除ができた(投資促進のため)
法人の場合、資本純損失の相殺は不可

法人所得税申告書(Form1120)

株式会社は、当年度の課税所得がなくても申告書の提出義務がある
申告書の提出期限は、課税年度終了後の4ヶ月目の15日(課税年度が1/1-12/31の場合は、4/15)

法人の予定納税

年4回の分割払い(各回に法定年間支払額の25%ずつ)
法定年間支払額は以下のいずれか小さい方
・当該課税年度の税額(予想額)の100%
・前課税年度の税額の100%(前年度が12ヶ月あり、税金を支払っている場合)
※法人の場合、個人とは異なり、前課税年度が12ヶ月ない場合がある(設立間もない場合など)

法人所得税の税率
トランプ税制により、累進税率から一律21%に変更された

※予備知識:アメリカと日本の法人税率

財務会計上の利益との調整

総資産が一定規模以上の会社は、「財務会計上の利益」と「税務会計上の課税所得」の差異を、Schedule M-1上で調整して表示する

Schedule M-1の記載
・以下(永久差異項目/一時差異項目)を調整して、利益から課税所得を計算する
・Schedule M-1上の課税所得は、欠損金NOLおよび受取配当金控除DRDを控除する前の金額となる

・加算項目
 ・損金不算入な項目(費用):連邦所得税、生命保険の支払保険料、飲食費のうち50%分、寄付金の控除制限超過分、準資本損失、地方債購入のための借入金の支払利息
 ・益金参入する項目:前受家賃、前受利息、前受ロイヤリティ
・減算項目
 ・益金不算入な項目(収益):州債や地方債の受取利息、生命保険の受取保険金
 ・損金算入する項目:会計上の額を超える税法上の減価償却費

Schedule M-2の記載
・「非拘束性利益剰余金(unappropriated RE)」勘定の変動
・変動要因
 ・財務会計条の要因:配当支払による減少、利益剰余金の拘束による減少、利益による増加
 ・税法上の要因:過年度の連邦所得税の還付

Schedule M-3の記載
・総資産が1000万ドル($10 million)以上の法人は、Schedule M-1の代わりに、Schedule M-3(PartⅠⅡⅢ)を提出する必要がある

Schedule Lの記載
・財務会計条のBS(前期末分と当期末分)を表示する

Chapter 10:株式会社②

学ぶこと
・連結納税
・法人からの分配: 配当 / 資本の払い戻し
・人的所有会社(PHC)
・法人組織形態の変更


関連グループと支配法人グループ

企業結合の種類
・親子関係 parent-subsidiary
・兄弟姉妹関係 brother-sister
・以上が結合した関係 combined

・親子関係の場合、一定条件(議決権と株式合計の両方を80%以上保有)を満たすと、関連グループaffiliated groupに該当する(連結納税が可能となる)
・それ以外の企業結合の場合、支配法人グループcontrolled groupに該当する(連結納税は不可能)
※連結納税にするかどうかは経営者が選択できる(連結会計にするかどうかは選択できない)

連結納税のメリット/デメリット
・メリット:グループ内の損失を節税に活用できる、内部取引による利得の繰延が可能
・デメリット:課税年度の統一が必要、貴重作業が増大する

支配法人グループに対する課税特例
会社を分割することによる節税ができないようになっている(分割しても関係が強いとひとつのグループとして扱われてしまう)

関連納税者間取引では、売主にとって資本資産でも、買主が償却性資産として扱う場合は、売主は通常所得として扱う必要がある(売主が資本利得による低税率、買主が減価償却による節税を拒むため)

法人からの分配

ここから出口戦略

法人からの分配
・株式会社が自社の株主に対して、金銭および財産を分配すること
・株主からの出資の逆

分配の種類:取り扱いが異なる
・配当 dividends
・資本の払い戻し return of capital
・株式の償還 stock redemption
・会社の清算 complete liquidation

配当
株主は受領した配当(現金配当/株式配当)について、配当所得(通常所得ordinary gain)として課税される
※株の売却益は資本所得capital gain(低税率)なので注意

資本の払戻し
投資そのものの返還であり、非課税
「配当 return on investment」と「資本の払戻し return of investment」は税法上の処理が異なる
例えば、投資家が$100を投資して会社を設立し(当初の純資産は$100)、その会社が純資産$170まで成長したとする
この時、投資家に$100を分配すると
・$70分:投資からの収益であるため、配当所得として課税される
・$30分:設立時点の投資分の返還であるため、非課税

分配された財産のBasis算定

株主が受け取る分配には、金銭と財産が含まれる
財産を受け取る場合、basisとFMVのどちらを使うか悩むことになる

分配総額(株主側)
分配総額は、受け取った金銭の額+受け取った財産のFMV
ただし、債務を引き受けた場合は、その分だけ減算調整される
(30万円のローンが残っている100万の車を渡されて、100万渡したと言われても困るため)

利潤(E&P)の概念
・利潤:会社が稼いで留保してきた総額、会社の利益のうち二重課税されなければならない部分
・E&P(利潤)=CEP(Current、今期の利益)+AEP(Accumlated、今までの利益)

分配のルール(株主側)
①分配総額の算出
②会社にE&Pが存在する場合:分配総額のうちE&P分が配当所得として課税される(通常利得、高税率)
③株式のBasisが存在する場合:分配総額の残額を株式Basisを減算調整(Basisを上限として非課税となる)
④生じた残額は資本利得(低税率)として課税される

例えば、投資家が$100を投資して会社を設立し(当初の純資産は$100)、その会社が純資産$170まで成長したとする
この時、投資家に$200を分配すると
・$70分:投資からの収益であるため、配当所得として課税される(高税率)
・$100分:設立時点の投資分の返還であるため、非課税
・$30分:残高は資本利得として課税される(低税率) ※純資産$170の株が$200で購入される場合(株式売買による資本利得)と同じように考える

財産のBasis(株主側)
・分配による受領財産のbasisは、分配時点のFMVを使う
※パートナーシップの場合(原則としてbasisを引き継ぎ、必要に応じて加減調整する)と考え方が全く異なるので要注意
・負債のついた財産を受け取っても、受領財産のbasisからは負債額を減算しない(もし減算してしまうと、売却時に二重課税となってしまうため)

・株主の配当所得は?:分配総額 ※E&P額の範囲内
・株主が保有する株式のbasisは?:当初の株式basis−(分配総額−配当所得) ※分配総額のうち、配当所得以外の分は株式basisから分配(減算)するため
・株主が受領した財産のbasisは?:分配時点におけるFMV

損益認識(株式会社側)
・株式会社は、財貨と交換に株式を発行する場合、原則として損益を認識しない
・株式会社は、basisを超過するFMVの財産(含み益のある財産)を分配した場合、その差額分について利得を認識しなければならない(財産を直接分配するのではなく、一旦売却して得た金銭を分配したと見做す)
・株式会社は、FMVを超過するbasisの財産(含み損のある財産)を分配した場合、損失を認識しない(ただし、会社が清算される場合は損失を認識する)
 ※節税目的で損失を発生させることができてしまうため

E&Pの算定
・Basisを超過するFMVの財産(含み益のある財産)を分配した場合:認識した利得分、E&P(のうち今期の利益CEP)は増額される
・株主に分配した場合:分配総額の分、E&Pは減額される

株式の償還

株式償還とは、株主が株式を会社に引き渡し、その対価として会社から財貨を受領する取引
・配当として扱う場合:株式の償還により受領した対価は、会社のE&P範囲内で配当所得として課税される(高税率)
 ・1人株主が100株持っており99株を償還して対価を受け取る場合(持分比率は100%のまま)など、持分比率が変わらない場合
・交換として扱う(以下の条件を満たす)場合:差損益を資本損益として扱われる(低税率)
 ・償還が不均等
 ・全ての株式が償還される場合
 ・非法人株主からの部分償還である場合

・株式償還するのが個人である場合、交換として扱われた方が節税効果が高い(低税率)
・株式償還するのが法人である場合、配当として扱われた方が節税効果が高い(DRDあり)

・株式の償還に関する費用は控除できない(資本取引であるため)
・株式の購入のために使う借入金の利息は、控除可能(何の用途で借入金を使うかは区別できないため)


会社の清算

・完全清算:会社が解散され、清算手続により、会社の財産が株主に分配される
・完全清算の場合、株主の株式と会社の財産が交換されると見做され、資本損益を認識する(償還における交換取引と同じ)
 ※清算時にE&Pが残っていても、配当所得(高税率)ではなく資本損益(低税率)として扱ってよい
・清算会社が財産を分配した場合、FMVで売却した場合と同様に損益を認識し、株主側の受領資産basisはFMVとなる
 ※継続会社が財産を分配した場合、利得は認識するが、損失は認識しないため、要注意
 ※清算PSが財産を分配した場合、財産basisを調整する
・子会社が清算される場合、親会社が80%以上を保有している場合には、親会社が子会社の事業を引き継ぐと見做し、財産の分配による損益は認識せず、財産basisも引き継がれる
・清算会社が関連当事者に資産を分配する場合、損失は認識できない(設立時に既に非課税を認めたため)
 ※例えば、設立時に株主が含み損のある財産を出資して、分配時に会社側で損失を認識する、ということは許されない

人的所有会社税(PHC税)

人的所有会社(高所得者が累進税率を下げるために設立するお財布会社)には、通常の税に加えて、PHC税(ペナルティ税)が課される
人的所有会社は、高所得者が受け取る代わりの所得を蓄積する(高所得者への配当は小出しにする)ため、課税の繰延が起こるリスクが高い
・同意配当:実際に配当は行わず、書類上で配当と同額の出資が同時に行われたと見做すことで、配当額に対する課税と株式basisへの加算を行う処理

留保利潤金課税(AET)

利益の割に配当額が少ない会社(利潤を留保している会社)は、課税の繰延が起こるリスクが高い
さらに、配当所得(高税率)よりも株式売却益(低税率)の方が節税効果が高くなる
そのため、一定額以上の留保利潤金に対して課税することで、株主個人へ配当させ、納税させようとしている

法人組織形態の変更

実務上は、M&Aなどによって税金を安くするスキームなどに対する知識は重要だが、難しすぎる
法人組織変更に伴う交換取引は、会社側にも株主側にも、原則的には非課税(経済を振興するため)

非課税になるケース
・合併
・株式と株式の交換
・株式と資産の交換
・会社分割
・資本構成の再編:社債と引き換えに株式を発行するなど
・会社法上の変更:照合や設立州の変更
・破産手続などによる法人資産の移転

※予備知識:M&Aスキーム
会計上/税務上のメリットデメリットを考慮して、最適なスキームを選択する
・買収
 ・株式取得・資本参加:会社の経営権の獲得が目的
  ・株式譲渡:現金を支払って相手株式を買う(最も一般的)
  ・株式交換:自社株式を渡し、相手株式をもらう
  ・株式移転:自社株式を渡し、相手株式を新会社に取得させる
  ・第三者割当増資:相手企業に株式を発行させて自社が買う
  ・TOB:株式公開買付、不特定多数の株主から相手株式を買う
  ・MBO:経営者や従業員が資金調達して自社や自事業を買う(上場を辞めることが多い)
 ・事業譲渡・資産買収:事業や資産の獲得が目的
  ・事業譲渡:資産や契約を指定して獲得
  ・分割
   ・吸収分割
   ・新設分割
・合併:通常は100%子会社化した後で合併する
 ・新設合併 consolidation
 ・吸収合併 merger
・提携
 ・事業提携:資本の移動を伴わない
 ・資本提携:資本の移動を伴う

Chapter 11:小規模会社

税法上の会社の区分
・小規模会社(S Corporation):あたかもパートナーシップであるかのように課税される
・普通法人(C Corporation):株式会社

小規模会社の特徴

・小規模会社は、納税主体ではなくパススルー事業体であり、株主の段階のみで納税する(PSと同様)
・所有と経営が分離、株主は有限責任(株式会社と同様)

小規模会社の選択

小規模会社として適用されるための要件
・発行株式は1種類のみ:種類株(優先株式など)を発行していない
・株主は個人/信託/遺産財団/小規模会社のみ:PS/株式会社は株主になれない
・株主数は100人未満
・株主に非居住者の外国人がいない:パススルー先の個人を追跡しやすいように

これまで株式会社だった会社が、節税のために小規模会社になろうとする場合がある
小規模会社になるには株主全員の同意が必要だが、小規模会社を辞める場合には50%の同意でOK

小規模会社の所得税の計算

Built-in Gain Tax
小規模会社の段階で例外的に課税される項目
以前に株式会社であった小規模会社が認識する利得(小規模会社になって5年以内に実現した含み益)に対して課される税金

株主が控除できる損失の制限
・アットリスクルールが適用される(PSと同様)
・株主は、株式basisの他、小規模会社に対する債権の分まで控除できる

株割日割ルール

小規模会社申告書

Form1120Sで申告(提出期限は、課税年度終了後の3ヶ月目の15日)
パートナーシップと同様

小規模会社の株式のBasis

拠出および分配による調整
・追加出資の場合:basisを加算調整
・分配の場合:basisを減算調整

損益による調整
・小規模会社が利得を認識した場合:加算調整
・小規模会社が損失を認識した場合:減算調整

負債による調整
パートナーシップ(無限責任)とは異なり、小規模会社は有限責任であるため、発生しない

小規模会社からの分配

ここから出口戦略の話
以前に株式会社だったことのある小規模会社が論点になる
(設立時から小規模会社を継続している場合は、PSを同じ処理になるため)

小規模会社による株主への分配ルール
①分配総額の計算
②AAA(留保調整勘定)が存在する場合:分配総額のうちAAA額までは非課税となる
 ※AAAは、小規模会社を選択した後に稼得され、既にパススルーされて株主に課税されてきた分であるため
③E&P(利潤)が存在する場合:分配総額のうちE&P額までは配当所得として課税される(高税率)
④株式basisが存在する場合:分配総額のうち株式basis分は非課税となる、株式basisを減算調整する
⑤残額が存在する場合:資本利得として課税される(低税率)

・株主の配当所得は?:(分配金額−AAA)分の金額 ※E&P額の範囲内
・株主が保有する株式のbasisは?:分配直前の株式basis−(分配総額−配当所得) ※分配総額のうち、配当所得以外の分は株式basisから分配(減算)するため
・株主が受領した財産のbasisは?:分配時点におけるFMV

小規模会社側の分配資産の取り扱い
小規模会社がbasisを超過するFMVの財産を分配した場合、差額部分については利得を認識する
株式会社と同様に考える

Chapter 12:信託と遺産財団 Trust and Estates

まだ所得税の続き
・信託が儲けた所得
・遺産財団が儲けた所得
に対する所得税は、誰がどうやって支払うのか?

財産を移転する方法
・信託
・遺言

信託

・信託の設定者=委託者settlorは受託者trusteeに財産(信託財産)を譲渡し、受託者は受益者beneficiaryのためにその財産を管理し、収益を分配する
※委託者は大金持ちの親、受託者は弁護士や信託銀行、受益者は大金持ちの子、とイメージするとよい

信託の定義
・法的権限と受益的権原が別の者に属するという信認関係
※信託法(信託法リステイトメント)上では、受託者が財産に対する法的権原を持ち、受益者が財産に対する受益的権原を持つ

※予備知識:信認義務 fiduciary duty
・注意義務 duty of care:意図的な不正行為や重過失の禁止
・忠実義務 duty of loyalty:競業避止、利益相反行為の禁止

信託の種類
・明示信託:不動産を信託財産とした明示信託の場合、書面の必要あり(詐欺防止法による規定)
 ・遺言信託
 ・生前信託
 ・公益信託
 ・浪費者信託
 ・Totten信託
・黙示信託:裁判所が財産に信託が設定されたと見做す場合
 ・擬制信託
 ・復帰信託

信託の終了
・永久拘束禁止則:財産が長期拘束を受けないようにするため、信託には有効期間がある
・ただし、公益信託は永久拘束禁止則の適用対象外となる

遺産

遺産は、ただの財産ではなく、租税主体(納税者)

アメリカでは、誰かが死亡した場合、故人が所有していた財産は、まず全て遺産財団に所属させる(遺産財団が遺産税を課される)
次に、遺産財団から相続人に財産が分配される(相続人は相続税を課される)
※日本には戸籍制度があるため家族関係が明確化されているが、アメリカでは曖昧なため、遺産財団という仕組みがある
※遺産税は連邦税だが、相続税は州税

遺産財団の管理
検認裁判所の監督下で、以下の代表者により行われる
・遺言執行人:遺言により指名された者
・遺産管財人:遺言執行人が不在な場合、検認裁判所により任命される者(弁護士)

遺産の分配
遺産は原則的に遺言に従い分配されるが、有効な遺言が存在しなければ、遺産は各州の「無遺言相続法」に従って分配される
・家系で分配 per stirpes:一般的
・頭割で分配 per capita:世代に関係なく均等分配

信託元本と収益の配分

信託の受益者の種類
・信託収益受益者:信託財産から得られる収益を受領する者 ※遺産アパートの家賃
・残余権者:信託終了時に信託元本を受領する者 ※遺産アパートそのもの

信託契約により受益の配分が特定できる場合は、その規定に従って分配するが、特定できない場合は、「統一元本収益配分法(UPIA)」に従って配分される
(例えば、遺産の売却益は、残余権者が受領できる)

信託および遺産の所得税

税法上の信託の種類
・単純信託:当期所得の全額を受益者に分配する信託
・複合信託:単純信託以外の信託(寄付/所得の留保/信託元本の分配ができる)

信託および遺産から発生する所得の取り扱い
・受益者に分配した分に対しては、受益者の所得になるので、受益者に対して課税される(ScheduleE)
・受益者に未分配な所得が残っている場合、信託および遺産に対して課税される

所得税の申告義務
信託および遺産は、総所得が$600以上ある場合、Form1041を用いて申告する義務がある(提出期限は、課税年度終了後の4ヶ月目の15日)
・信託の課税年度は1/1-12/31(節税に利用されやすいため、個人と同様)
・遺産の課税年度は任意

予定納税
個人と同様

課税所得の計算
Form1041上で計算する

総所得
− 控除 ※寄付金に控除制限はない
− 分配控除 ※分配可能純収益(DNI)の範囲内で控除可能
− 基礎控除 ※できることが少ないほど多額の控除が受けられる
ーーー
課税所得

故人の医療費と葬儀費用は、故人のForm1040の所得税から控除する
なぜなら、遺産税よりも所得税の方が税率が高く課税対象が広い(膨大な額の遺産を残さないと課税されない)ので、所得税から控除した方が節税効果が高い

分配可能純利益(DNI)
信託および遺産が儲けた額
DNI以上の額を分配した場合(儲けだけでなく元本を取り崩して分配した場合)は、
・受益者:受け取った分配のうち、DNI分は課税され、元本取り崩し分は非課税
・信託および遺産:行った分配のうち、DNI分は控除でき、元本取り崩し分は控除不可

Chapter 13:連邦贈与税と連邦遺産税 Gift and Estate Taxation

Chapter12までで所得税の話は終了
贈与税と遺産税は、所得税とは全く異なる税金

連邦贈与税と連邦遺産税

資産の所有権が移転するタイミング
・生前の贈与:連邦贈与税が課せられる
・故人の死亡:連邦遺産税が課せられる

連邦贈与税・連邦遺産税は、「資産を移転する権利」に対する課税であるため、譲渡側に課税される(受領側には課税されない)
一方で、州相続税は、日本の贈与税・相続税と同様に、資産を受領する権利に対する課税であるため、受領側に課せられる

連邦贈与税と連邦贈与税は、「統一移転税制」に統一された(1976年)
そのため、両税の税額は累積的に計算されるため、税額に大きな差は生じない仕組みになっている
・今期に支払う金額=「(死亡時点までの贈与および相続の累計額)×税率」−「過去に支払った税額」

統一移転税制では、一定額までの贈与または遺産については非課税となる(統一譲渡税額控除)

贈与税の計算

総贈与額 ※現金、財産のFMV
−控除項目
ーーー
当期の課税贈与額
+過年度の課税贈与額
ーーー
生涯に亘る課税贈与額
×税率
ーーー
総贈与税額(統一譲渡税額)
−過年度に支払った贈与税額
−統一譲渡税額控除
ーーー
当期に支払うべき贈与税額

現在権の贈与と将来権の贈与
・現在権:資産に関する権利が、贈与時点で発生する ※信託収益受益者の設定
・将来権:資産に関する権利が、将来のある時点で発生する ※残余権者の設定
総贈与額には現在権も将来権も含まれる
一方で、控除項目のうち年次控除と贈与分割には、現在権の贈与のみが控除対象となる

控除項目
・年次控除 ※受贈者1人あたり1年間に$15,000までの現在権贈与は控除可能
・配偶者控除 ※婚約指輪には贈与税がかかるが、結婚指輪にはかからない
・贈与分割 ※両配偶者が半分ずつ第三者に贈与したとして扱う
・教育および医療費のための控除 ※直接支払うことが条件
・政治献金
・慈善団体への寄付

※予備知識:所得税の扱い
贈与税と混乱しないように要注意
・政治献金:受け取った側は非課税だが、支払った側は控除不可
・慈善団体への寄付:受け取った側は非課税だが、支払った側はAGIの60%まで控除可能

※予備知識:日米の贈与税の相違点
・アメリカ:1年間に1人あたり$15,000以上贈らなければ控除可能
・日本:1年間に110万以上受け取らなければ非課税

遺産税の計算

総遺産額
−控除項目
ーーー
課税遺産額
+過年度の課税贈与額
ーーー
総課税対象額(生前贈与と遺産の総額)
×税率
ーーー
統一譲渡税額
−生前に支払った贈与税額
−統一譲渡税額控除
ーーー
遺産税額

総遺産額に含まれるもの
・死亡時点に所有していた全財産FMV
・共有や合有していた財産の持分FMV
・生命保険金のうち、遺産財団に支払われるもの/受取人が変更可能なもの(金融商品の扱いになる) ※生命保険金は原則的に非課税であることに注意

遺産の評価
・原則として故人の死亡日におけるFMVで評価する
・評価に時間がかかる場合、遺言執行人は代替評価法(死亡日の6ヶ月後または処分時のFMVで評価)を選択できる

控除項目
・葬儀費用 ※遺産財団の所得税(Form1041)からは控除できない
・管理費用
・債務(未払税金など)
・災害損失
・遺贈
・配偶者控除

贈与税申告書と遺産税申告書

・贈与税申告書(Form709)は、翌年の4/15までに納税する義務がある
・遺産税申告書(Form706)は、総遺産額が一定額以上の場合、故人の死亡後9ヶ月以内に提出する義務がある

Chapter 14:その他の論点

学ぶこと
・非課税組織に対する所得税の免除
・複数の課税管轄区域で所得のある納税者に対する課税ルール

非課税組織

IRC501条c-3で指定されている組織
・Public Charity:509条にも規定されており、優遇税制がある
 ・教会:情報申告の義務はない
 ・教育機関
 ・病院や医療研究機関
 ・公的に支援を受けている機関
・Private Foundation:
 ・その他

非課税組織は、年次情報申告(Form990)を提出する必要がある

非課税組織による非関連事業所得

非課税組織は、関連事業を行う場合には非課税だが、非関連事業を行う場合には課税される

州税

課税管轄区域 tax jurisdiction:国や州など、異なる課税ルールを持つ地域エリア

州税の種類
・州所得税 state income tax
・売上税 sales tax
・使用税 use tax
・資産税 property tax

※予備知識:日本の消費税とアメリカの売上税/使用税の違い
・アメリカの売上税は連邦税部分がない(日本の消費税は国税分+地方税分)
・アメリカの売上税では、再販目的で仕入れる者(販売業者)は仕入元に売上税を支払う必要がなく(ただし、州税務局から再販許可証Resaler’s Permitを取得する必要あり)、消費者のみが売上税を支払う(販売業者は販売価格の一部として売上税を預かり、納税する)

ネクサス
州に課税権が生じること
・ネクサスを形成する場合
 ・州内で事業取引を行う
 ・州内に資産を所有する
 ・州内に事業所を所有する
・ネクサスを形成しない場合
 ・州内で販促行為を行う

所得の州間割当・州間配賦
多州籍企業の活動に対して、複数州でネクサスがあり課税対象となる場合、課税上所得統一分配法(UDITPA)に従って、全額割当allocation・按分配賦apportionmentを行う

・非事業所得の全額割当
 ・受取利息や受取配当金:主たる所在州
 ・不動産から得られる賃料や使用料:資産が存在する州
 ・有形動産から得られる賃料や使用料:資産の主たる使用州または主たる事業所在州
 ・不動産から得られる資本損益(売却益など):資産が存在する州
 ・有形動産から得られる資本損益:売却時に資産が存在する州または主たる事業所在州
 ・無形動産から得られる資本損益:主たる事業所在州
 ・特許や著作権による収入:資産の主たる使用州または主たる事業所在州

・事業所得の按分配賦
事業所得の配賦額=事業所得×(売上要素+給与要素+資産要素)/3
 ・売上要素:総売上における州内顧客への売上比率
 ・給与要素:総給与における州内従業員への給与比率
 ・資産要素:総資産における州内使用資産比率

ユニタリ税
同じグループ内の別会社が複数州で営業している状況の場合、一定条件に合致する場合は、グループ全体をひとつの会社と見做して、グループの全所得に対してUDITPAの按分を適用する
・過半数を保有する関係にある
・工場ラインが統合されている
・スタッフの往来がある
※節税目的で会社を分割し、有利な税率を享受させるのを防ぐため

国際課税

個人に対する課税ルール
・米国市民 citizen:米国籍のある個人、全世界所得課税(外国を源泉とする所得に対しても米国から課税される)
 ※外国に支払った所得税分は、項目別控除または税額控除で控除できる(不足分は米国に支払う)
・外国人 alien:米国籍のない個人
 ・米国居住外国人 resident:全世界所得課税
 ・米国非居住外国人 non-resident:米国を源泉とする所得のみが課税対象となる

法人に対する課税ルール
・内国法人 domestic:連邦法や州法に基づいて設立された会社
 ・TCJA(2017年税制改革法=トランプ税制)以前は、全世界所得課税だった
 ・TCJAによりルールが180°転換された(IRC245条A、IRC965条):米国内に企業を戻すため
・外国法人 foreign:次の所得に対して課税される
 ・ECI:米国での取引または事業に関連する所得
  ・なお、租税条約を締結している場合、米国内にPE(恒久的施設、支店や工場など)がある場合にのみ課税される
 ・FDAP:定期的な所得(配当や利息などの非事業所得)、30%が源泉徴収される

IRC245条A:テリトリアル課税(海外配当金不算入制度)
全世界所得課税の下では、アメリカへの配当にかかる税率は高いため、海外子会社はアメリカ本社に配当したがらなかった(外国税額控除はあるが、そもそもアメリカの所得税が高いため差額を徴税されてしまう)
2018/1/1以降の配当について、アメリカ本社に配当してもらうため、外国で税金を支払えば、アメリカ側では課税しない(配当利益全額を益金算入しない)ようにした
なお、テリトリアル課税制度に移行するにあたって不公平にならないように、今まで配当せずに留保していた所得の全額について1回のみ課税(その代わりに低税率で課税する)し、その後にテリトリアル課税を利用できるようにした
→IRC965条:テリトリアル課税制度への移行に伴う移行税(強制みなし配当課税制度)

サブパートF所得に対する課税
ケネディ政権時代(1962年)、外国子会社を利用して低税率国(タックスヘイヴン)に所得を移転して課税を逃れる行為を防ぐために、非支配外国法人(CFC)に対して規制が設けられた
以下のサブパートF所得(外国子会社が外国をベースにして獲得した特定所得)については、分配の有無に関わらず、米国で課税される
・受取配当金、受取利息、ロイヤリティ、レント、年金、人的役務提供報酬、など
・外国子会社が、米国親会社のために、設立国以外(米国など)で動産を製造販売して獲得した利益
・外国子会社が、米国親会社のために、設立国以外(米国など)でサービスを提供して獲得した利益

移転価格税制(TP)
1986年に設立
米国親会社が、恣意的に低い移転価格を設定して外国子会社に財やサービスを提供し、所得を移転して課税を逃れる行為を防ぐために、規制を設けた
米国親会社では、移転価格ではなく適正価格で取引したと見做して課税される
そのため、米国親会社の経理部門では、適正価格未満で取引してしまわないように、CPAが適正価格を見積もる仕事をしている

IRC951条A:グローバル無形資産低課税所得(GILTI)
トランプ税制
無形資産の形成や無形資産を使って所得を生み出す行為(創造的な研究開発など)は、アメリカで行ってほしい
そのため、外国子会社(CFC)の事業資産から発生する所得のうち一部(固定資産額の10%を超える所得=無形資産の寄与により生み出されたと見做せる所得)には、アメリカの税率で課税することにした
なお、アメリカで行った場合には、税務的なメリットが得られる
→IRC250条:外国源泉の無形資産関連所得に関する所得控除(FDRII)

IRC59条A:税源浸食防止税(BEAT)
2018/1/1以降に開始する事業年度で適用
国内にキャッシュを戻し、税収を上げるため
米国外関連者への税源浸食的支払(利息やロイヤリティ)があると、国外にキャッシュが出ていき、アメリカの税収を下げる(控除額が増える)ため、足し戻して課税することにした

Chapter 15:納税申告書の代書作成者に関する責任

CPAの心構え的な話
CPAはクライアントから納税申告書の作成を依頼され、代書作成することで報酬を得ることができる
財務省通牒230号などにより代書作成業務は規制されている

納税申告書の代書作成者

連邦法上は、IRSに登録必須ではない

代書作成者に適用されるルール
・SSTSs(AICPA税務サービス基準)
・財務省通牒230号
・IRC(内国歳入法)

AICPA税務サービス基準

①税務申告のポジション:作成した代書が正確であると主張できる必要あり
②納税申告に関する質問への回答:正しく納税申告するために納税者に合理的な範囲で質問する
③申告書作成上の手続的側面:納税者から提供された情報について検証する義務はない
④見積もりの利用:見積もりデータの正確性の責任はCPAではなく納税者にある
⑤過去の行政手続または裁判所の決定からの逸脱
⑥エラーの認知:納税申告について誤りやリスクを発見した場合は教える(ただし、税務当局に通知してはいけない)
⑦顧客への助言の様式と内容:助言は口頭でもOK

財務省通牒230号

A:実務者の権限 会計士CPA/弁護士Attorny/税理士EAなどが税務申告を担当できる
B:実務者の義務と制約
C:実務者に対する制裁 脱税や虚偽広告などにより、問責censure→停職suspend→資格剥奪disbar
D:懲戒手続 法律違反により、懲戒reprimandedや制裁措置sanctions
E:公式記録 税理士名簿の公開

代書作成者への罰課金

・故意に税額を過小計上した場合、IRCから罰課金を課される(過失による計算ミスによる過小計上は許される)
・一定の企業は、税務申告における不確かな税務ポジション(税務申告上でどう扱えばいいか疑問点のある部分)をSchedule UTPで開示する必要がある
・顧客の税務申告情報を開示してしまった場合は、罰課金では済まず、刑事罰を受けることになる

内国歳入庁からの通知

・納税申告書の修正通知
・納税申告書の提出遅延にかかるペナルティ通知
・税額未払通知
・税務調査通知

納税を公平に行うため、以下の仕組みがある
・正しく申告・納税を行わない納税者に対するペナルティ
・未納税額に対する利子

※米国の司法制度
①合衆国最高裁判所
②合衆国控訴裁判所:地方裁判所からの上訴事件を取り扱う(日本における第2審=地方裁判所)、1948年以前は巡回裁判所Circuit Courtの名称だった
 ・合衆国連邦巡回区控訴裁判所(CAFC):合衆控訴裁判所の一種で、特許や関税などの特定事件を管轄する(日本における知的財産高等裁判所)
③合衆国地方裁判所:第1審裁判所
 ・倒産裁判所
 ・国際通商裁判所
 ・合衆国連邦請求裁判所
・司法府に属さない裁判所
 ・租税裁判所:

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