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溝の中に落ちた仔猫 2

寝たか寝てないかわからなかったのですが、不思議と朝の5時頃目が覚めました。あたりもすっかり明るくなっていたので昨日のマンションのあたりに行きましたが、仔猫の声は聞こえません。
どうかそこに居てほしい。そっと溝に近づいて、猫の声を携帯で流すと、反応がありました。
よかった。
声がちょっと小さくなっていたので心配でしたが、取り敢えず居場所が確保できたので一安心。昨日の近所の方も朝の7時過ぎに来てくださり、さて、どうしようかとなりました。
3階の高さにある奥行きのある深めの側溝、無理矢理追い立てたとして、万が一興奮した猫が飛び出して方向性を見失ったら、落ちて大怪我をする高さです。もちろん人も危ない。なのでちょっと思い切った手段に出ることにしました。

来たのは近所の消防署。
朝で色んな人が挨拶や出入りする中、受付の方に事情を話すと現場を確認してくれる事になりました。近くて歩ける距離だったのですが、消防車を出すのは規則だそうで、ピカピカとライトを光らす消防車を連れて現場に戻ってきました。
そして、3人の若い隊員が降りてきて、リーダーのような方がまず、フェンスをひょっと乗り越えて現場を見回しました。そして、まるで部活で厳しいコーチから怒られてるような大きな声で、
「飼い猫で自宅敷地内ならば、コンクリートを破壊して救助などされる方もいるのでぇ、そういった方法もありますけどぉ、覚悟はありますか?」と言われ、飼い猫か野良猫かを聞かれました。「野良猫ですけど」というと、「それは壊すなんてのは、他人の敷地だし非現実的だねぇ」という結果に。(命を目の前に飼い猫か野良猫かの区別はあるのか?とは思いましたが、一応順序があるのでしょうね)
ただ、「私たちは捕獲のプロじゃないので逃がすこともありますから。」と言っていたので、不安になってきました。そんな事を言われたら、野良猫だから逃げて仕方ないと思われて捕獲されるようで、失敗しそうです。
次に隊員の方は溝に棒を入れ、子猫を確認の為に内視鏡を入れました。追い立てられる子猫の悲痛な鳴き声が響き渡ります。
「もう、居るのはわかってるし、捕まえないならこれ以上はいいのではないですか?」と思わず言ってしまいました。
結局、溝に踏み台のようなスロープを入れ、猫が大きくなって出るまで餌を運んで自然に出るようにしたら?という結果に落ち着き、「追い込み作戦をするなら呼んでください(人命優先ですが)」と消防隊の方は帰っていきました。
朝からとんだ騒ぎを巻き起こしてしまいました。
でも、このために来てくれた事には感謝です。

結局、私達は穴に入れるスロープを作り、溝に入れ、猫がそのスロープに気付き、出てきてくれたところを一か八かで捕獲機で捕まえるということになりました。それからしばらくして、管理会社に許可が取れたので、捕獲機を側溝の上の僅かな幅に2台設置し、子猫が踏み台の近くまで来てくれるよう、溝の端に隠れている子猫を誘導する作戦に出ました。
仔猫は溝に落としたエサを匂いながら、頑張って溝の真ん中あたりまでは来る事ができました。でも、途中で人間の顔を見たり、異様な気配を感じると怖がって奥に行ってしまいます。かなり粘ったのですが、私たちもだんだん疲れてきて、これは長期戦だなと一旦引き上げることにしました。

とぼとぼ、肩を落として帰り道を歩いていると、知らないおばさまが声をかけてきました。
「仔猫を捕まえてるんですか?」
「そうなんです。」
「ひょっとして、しましまの?!」
「そうです。」
「じゃあ、あのこだわ!実はね、一昨日この先のお宅の車の中で猫の鳴き声がしたの。この辺最近は子猫がいなくなってしまったから驚いて。そのお宅に聞いたら、車乗ってる時に猫の鳴き声がしたっていっててね。」
「えー!!猫居たのに運転したんですか?」
「そうなの、で、JAFを呼んで中を見てもらったら、子猫がいたの!このくらいのスペースなら仔猫は動き回れますよだって。でも、開けたら驚いて逃げてしまって、それきりどこかへ行って、私もとても心配してたのよ!」と。
車の中のどこにいたのか分かりませんが、冬になると猫がエンジンルームに潜り込んで大惨事になるという恐ろしい場所ではなく、運良く違うスペースにいたのでしょうか。しかし、どこに居るにしても、猫が入ったまま運転は危ないです。
そんな話を聞くと、きっとお母さんを探して、泣いて歩いて、隠れて相当怖い思いをしてきたのでしょう。
必ず保護しようと思ったのでした。

家に帰ってほっと一息つくと、捕獲場所に貼り紙を貼るのを忘れたことに気づきました。
戻って貼りに行くと、さっきより大きな声が響き渡っていました。辺りを見回すと、捕獲機がガサガサっと揺れています。
え?まさか?
そう、そのまさかでした。子猫が捕獲機の中に入っていました!
私達が帰った後、誘導したかった場所まで一人で行って、スロープを上り、細い通路に置いていた捕獲器に無事入ってくれていました。

良かったよー!!にしても小ちゃいなぁ!

みんなで喜びの舞です。長期戦になるかと思ったけど、奇跡的に捕獲することができました!下で食べたご飯の匂いが上で沢山したから引きつけられたのかな?

早速仔猫を病院へ連れて行き、ノミダニと駆虫のスポットと、ワクチンの処置をしてもらいました。

お家に帰ってきて、少し寛ぐ仔猫。まだ人には警戒していましたが、部屋を離れると泣き出して、そばに居るとウツラウツラとします。
寂しくて不安だったんだね。きっとすぐ慣れてくれる事だと思います。小さな目が可愛い事。

夜になって、昨日の方が見えて、子猫を引き取りにきました。里親募集する時は家まで行ったりしますが、ご近所さんの友人である事や事情を聞いて信頼できると思ったのでお渡しする事に。

久々の騒ぎでしたが、この仔猫ちゃんがご近所さんのお庭にいた事が1番のラッキーだったと思います。
いつもは疲れたと言ってる所が、不思議と眠さも体の疲れも、感じないものですね。
終わったら、私は爆睡でしたが。

TNRはどこかでやって無いところがあると、必ず増えてしまいますね。どの自治体のどの地域にいたとしても、数をコントロールするためには、手術しかないです。解決に向かうための知識と行政の補助、住人の関心と、助け合いが必要です。一人ですべての地域を網羅なんてできませんから、完全解決なんて難しいのかもしれません。
でも、継続してできる事をやるしかないのですね。

人は人間社会の都市に住むと、共生している生き物の存在を忘れがちで、居ては困ると思う方がいるのが悲しいですね。
また、今回の件で、一軒家でも隣の方の様子を知らないというお宅もあるんだなぁと感じました。
周りに知り合いが居なくとも、猫を通して話せば意外といい人だったりと、繋がりが生まれたりするもなので、やはり傍に生きる生き物を見守りながら、地域とコミュニケーションを取る事は、悪く無いのかなと思ったのでした。

仔猫が新しいお家に行った後も、連絡を下さったので、それもまた小さな喜びです。

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