緑に染まる2
最期に緑山さんにお会いしたのは3年前でした。その頃の緑山さんはエネルギッシュな人で、山で暮らす知恵を色々教えていただきました。あれから3年経ち、久しぶりにお会いした緑山さんは信じられないくらい憔悴していました。何があったか聞くと
「緑を見過ぎたんだ。いい絵具を作るにはどうしても山から良質な緑を採取して精製しなければならないからね。俺の目はじきに見えなくなるだろう」
「そんな…どうにかならないのですか?」
「どうだろうな。どのみち俺は山に喰われてしまう。それまでに1つでも多く良質な絵具を作るよ」
「山に食べられる?」
緑山さんは頷き右腕の袖をまくり上げ、私に腕を見せてくれました。緑山さんの腕は木質化し、枝が伸び葉っぱが生えていました。私は絶句しました。
「俺はこの山の美しさに魅了され過ぎたよ」
緑山さんはポツリと呟きました。そして、私に小箱を渡しました。開けると絵具が3本入っていました。絵具は「山絵具」でした。私は緑山さんを見ました。緑山さんは満足そうに微笑んでいます。私は深々と頭を下げながら、なんとか緑山さんを助けたいと強く思いました。何か方法があるはずです。
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