未完の書ー 千鶴さんの種明かしー

私は当初からこの未完の本が何が何でも欲しいということに違和感がありました。当然ですよね。未完のモノをコレクションしている風変わりな人はいるかもしれませんが、聞いたことがありません。

それで考えました。この本にどんな魅力があるのか。まず一つはこの本の作者が高名な人であること。でも、この本の作者がわかる痕跡は見当たりません。私も作者は不明とサイトに書きました。

二つ目はこの本に何か秘密がある。もっと言えば大金が手に入るような何かです。私はこちらの説が有力だと思いました。そこで、豊丘炭鉱図書館で本について調べてみました。豊丘炭鉱図書館はご存じですか?そうですよね。知らないですよね。この図書館は少し特殊で古今東西の暗号や秘密に関する資料が充実しています。少し骨が折れましたが調べるとわかりました。この本は旧日本軍が本土決戦に向けて蓄えていた金品や資材の隠し場所が書かれているようです。いるようだというのは場所はこの本だけではわからなくて、何冊か似た本を集めるとその場所を指し示すカラクリでした。恐らくあの人はもうすでに何冊かお持ちなのだと思います。

私はこの本をどうするか迷いました。旧日本軍が隠したものは本土決戦に備えて武器弾薬だけでなく、毒ガスや生物兵器も含まれているようでした。使いようによっては国家転覆に使われる恐れが十分あります。

それで、私は知り合いの贋作士に本物そっくりの偽物を作ってもらいました。贋作士には9割本物そっくり1割嘘を混ぜてもらいました。詐欺師は9割嘘の中に1割真実を混ぜて嘘を真実と信じ込ませます。その逆を私はやりました。1割の嘘があの人に疑念を生み出し偽物と信じ込ませることに成功しました。あとは優弥さんが見た通りです。

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