本日は天気雷雨のち風強し2

私は金沢市役所の地下の一室に幽閉されている。私が麗しの乙女だったら誰かが助けに来てくれるのだろうが、残念ながら私は冴えない大学4年生だ。誰も気にかけてくれるはずもなかった。

ドアが開いた。目が血走った男が1人入って来た。

「君が大野陽太君か。手荒な真似をしてすまなかったね。僕は金沢市役所 市民生活課の丸澤圭一郎と言います」

「違いますって。私は石坂勉三です」

男は「は?」と驚いた顔をした。後ろを振り返り私を拉致した男に「どういうことです?」と尋ねた。拉致した男は「本人です。これが証拠です」と言い、私の免許証を見せた。私は驚き免許証が入った鞄を探した。無い。いつの間にすられたのかわからなかった。

「返してください」

私が怒って言うと丸澤圭一郎と名乗る男は拉致した男から免許証を取り上げ「ごめんねぇ。ごめん」と言って返してくれた。なんだこの妙な低姿勢は。

「実はだね。ここ数日、金沢でヘンテコなことが続けて起きているのはニュースなんかで観て知ってると思うけど…」

「は?我が家にはテレビが無いので、何のことを言ってるのかさっぱりわかりませんね。あ、あれですか。最近の学食のAランチのフライが1つ減ったことですか。それを私に言われても困りますよ。学長か学食のおばちゃんに言ってください」

「い、いやそうじゃないいんだ。テレビが…そうか。じゃあわからないね。ごめんごめん。実はここ最近、金沢でいるはずの無い天狗や龍を目撃した情報が多数寄せられてね。ま、最初は幻覚か何かだろうと言ってたんだけど…その、本当に起こっていることなんだ」

はぁ…これはまた面倒なことに私を巻き込もうとしているな。そして、どうせ断っても無理やり巻き込まれるんだ。こうなったら取引してやる。

「見返りは?」

「え、まだ何も言ってないけど引き受けてくれるのかい?」

「見返り次第ですね。私は本当なら今頃大企業の面接に行っているはずなんだ。それをあなたたちはぶち壊した。それ相応の見返りと損害賠償があってしかるべきだ」

私を拉致した男が「ふん」と鼻で笑ったので、私は男をキッと睨んだ。

「わかった。わかったよ。取り敢えず僕の話を聞いてくれ」

丸澤圭一郎が懇願してきたので私は彼の話を聞くことにした。ようやくここにきて私が風上に立つことができた瞬間だった。




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