本日は天気晴朗なり5

休日の静まり返った庁舎に足音が響いた。足音は陸上選手が走るようなスマートで小気味よい音では決して無く、ドタドタとへっぽこで間抜けな音である。へっぽこな足音の主はご存知丸澤圭一郎である。

丸澤圭一郎は大将首を獲った足軽の気持ちだった。先程、大野陽太より電話があり、天気悪化の原因が石浦神社裏にある石がズレているだとわかり、一目散に駆けだした。俺はツイている。石浦神社は金沢市役所から近い。走れば10分位で着く。まったく、どこの誰だよ石を動かした馬鹿野郎は。

庁舎を出て石浦神社は兼六園へ向かって真っ直ぐ走ればいい。GO、GO、GO…丸澤圭一郎は自分がレンジャー部隊所属の兵隊になった気持ちで走った。金沢駅行きのバスとすれ違い、市内循環バスとすれ違い、黒獅子が火の輪くぐりをしているのを無視し(無視だ無視!)丸澤圭一郎は走った。

15分後…丸澤圭一郎は酸欠で心臓が爆発しそうだった。こ、こんなにキツカッタッケ?鳥居をくぐり神社の境内に入る。神社の裏…裏だな石があるのは。神社の裏に回る。確かに石があった。石は一抱えくらいの漬物石みたいな楕円形で石の下には空洞がちょろりと見えた。

「これか!」

丸澤圭一郎は叫んだ。こんなもののために俺はあらゆる方面に平謝りし、休日返上で乙女のように電話を待っていたのだ。実にバカバカしい。丸澤圭一郎は石を抱え「これで終わりだ!」とスーパーヒーローのような叫びと共に全力を振り絞って石を動かそうとした。

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