動物の図鑑-カリガ版-
〈576ページ「フクロウ」〉
僕の先生はフクロウ。比喩ではなく本物のフクロウ。
日中は学校へ行かず部屋で息をひそめて生きているけど夜になると外に出る。僕の住んでいる所は田舎だから夜になると明かりも無く真っ暗で闇夜に浮かぶ星空と月明かりが光源だ。月明かりに照らされた畦道を歩くとどこからともなくホーホーと鳴く声が聞こえる。畦道の向こう側はフクロウの住む森なのだ。僕はその声に導かれるように森へ向かう。怖くはないよ慣れたものだから。真っ暗な森へ入るとフクロウ先生が迎えてくれる。
「やあ、こんばんは。今日1日どうだった?」
「どうもしないよ。ただ生きた。でも、最近は先生に会えるからそれが楽しみなんだ」
「そうかい」と先生は鳴く。僕はいずれ大人になるだろう。立派な大人にはなれないかもしれない。でも、正しい人間になりたいと思う。生きているのが闇の中でも生きる価値がある。それがこの森でフクロウ先生から学んだことだ。
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