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金沢妖手帖

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金沢は決して奥の奥を見せない。ほんの少しだけ覗かせるだけである。
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2017年2月の記事一覧

金沢百鬼夜行‐下‐

ひとしきり筆を走らせた後、男のペンはパタリと止まった。腕に止まっていた天使はいつの間にか消えている。

「またダメだ」

男はうなだれた。ここ最近、天使が腕に腰かける時間が短くなったのだと言う。理由はわからない。

「きっと俺が天使の力を借りて有名になりたいなどと変な野心を持ってしまったためなんだ」と消え入る声で呟き頭を掻きむしった。

「西島さん」

夕子さんは優しく男にささやいた。「恐らく天使

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