読書感想文(30)さくらももこ『たいのおかしら』

はじめに

この本を読んだきっかけはサークルの先輩のこのnoteです。

最近他人のオススメをたくさん読みたいと強く思います。ある人がとても好きな作品というのは、それだけ何か力があるということなのだと思います。私が今まで読んだ中で一番好きな作品ランキングでトップ争いに入る『ジェーン・エア』も友人のオススメです。と、また『ジェーン・エア』について書き始めてしまいました。一応この作品も読書感想文を書いているので興味がある方はこちらからどうぞ。

前置きが長くなってしまいました。とにかく最近他人のオススメをたくさん読みたいので、「これは是非読んでみてほしい!」という作品がある方は是非教えて下さい。

感想

やっと感想に入ります。この作品を読んだ感想は、たのしかったです。ただなんというか、楽しいというより、不思議な感覚もありました。ふわふわしているというか、ほわほわしているというか……。なんていうか、やさしさで包まれているような……?私のボキャブラリーでは表せないので、是非読んでみてください。

そして読みながらまず思ったことは、なるほどこの作品を読んで今の先輩があるんだろうなぁということです。わかったようなことを言っていますが、自分でもよくわかっていません。ただなんとなく、この作品の、或いは作者と、根底的なところで通じている何かがあるような感じがしました。私自身、読んだ作品に多大な影響を受けている自覚があります(読書感想文を書くようになって特に)。そこでふと思ったことが、将来子どもができた時にどんな本を読むのだろう、ということです。残虐な小説を読んだからといって残虐な性格になるとまでは思いませんが、何か基準を設けた時(例えば周りと馴染みやすい性格など)、より良い読書というのはあるんじゃないかと思いました。だからといって子どもの読書を制限したりは絶対にしたくないのですが、家に置いておく本っていうのは多少選んでもいいのかもしれないなと思いました。こういうのもある意味文化資本といえるのかもしれないな、と思いつつ、今そんなに考え過ぎることでとないかなとも思いました。

話が戻りますが、もう一つ似たような事を思いました。100ページくらい読んだ時、なんとなく俵万智っぽさを感じました。なぜなのかはわかりません。不思議なあたたかさというか、なんとな〜く雰囲気が似ているような気がしました。しかし作者の人物像を想像してみると、まるで違っていました。二人ともお会いしたことはありませんが、なんとなく、全然違うような気がしました。それでもなんとなく似ているんだよなぁ、なんでだろう。そんな事を思いながら読み進めていると、なんと「俵万智」が出てきました。『お年玉記念日』って、語呂が悪すぎて読めんがな、と思いつつ、偶然過ぎてびっくりしました。でもなんてことない例えに『サラダ記念日』が出てくるなら、もしかしたら作者も『サラダ記念日』を読んだのかもしれないなぁ、なんて思いました。

さて、内容に関する感想を書こうと思うのですが、たくさんの話があるのでどれについて書こうか迷います。全部に共通しているのはやっぱりあの不思議な感覚です。なんていうか、読んでいてしっくりくるというか、安心するというか……。

中でも印象に残ったのは、まず「小杉のばばあ」です。思うところは色々あって、やっぱり人って色んな面があるから偏見に影響され過ぎるのは良くないなとか、そんな一面を周りにほとんど知られず死んでしまった切なさとか。文章は7ページ弱しかないのですが、その短い中にぴったりハマっていることが短歌に似ているなぁと思ったりもしました。ああこの文章がぴったり収まっている感じが俵万智の短歌に似ているのかなぁと今思いました。まあ『サラダ記念品』以外の歌集は古典以外読んだことがないので、俵万智が関係あるかどうかはわかりません。

あとこの作品を読んで思ったのは、作者の素直さです。あっけらかんとしているというか。例えば「お金を拾う」なんかは世間的には一応良くないことのはずです。でもそれを素直に「ラッキー」と思って、そして他人に向けて発信できるところがいいなと思います。善悪はともかく正直さが信じられるというか。あと自分に無い素直さなので憧れもあるかもしれません。去年の秋頃、バイトに向かう途中で千円札が落ちていたのですが、ちょっと迷った挙句、横の壁にそっと置いておきました。警察に届ける手間は惜しむとしても、迷っている時点で本質的には拾いたいと思ったということです。その時、自分の善悪の基準、ざっくり言って「それを好きな人に見せられるか」という基準で、私は拾うのをやめました。でもまだ本質的に私は拾わない選択をできていませんでした。お金を拾うか拾わないかで大袈裟な、と思われるかもしれません。でもこの一件は小さな事だとしても、その積み重ねが人間を作っていくのだと思います。それを、素直に「ほしい!」と認められている作者に好感を持ちました。

同じように世間的に躊躇うような自分の話を素直に認めて発信しているものは多く、いいなぁと思いました。そして失敗談も、ユーモアが溢れています。こんな風に自分の恥ずかしい(?)話を誰かの笑いに変えられるのって、すごく素敵だなぁと思います。私は将来の選択肢として教師になることも考えていますが、生徒と接する時にこれができるといいだろうなぁと思います。「模試で0点取ったことあるんだぜ」とかは使えそうです。授業をサボった話はさすがにできないかなぁ。その他の人間関係でも面白い話はネタになるので、そう思えば失敗も悪くないなぁと思ったり。

おわりに

今回初めてさくらももこの作品を読んでみて、なんとなく惹かれました。何にと言われると難しいのですが、文章なのかユーモアなのか、それともあの不思議な感じなのか。しばらく考えた結果、「この感性にもっと影響されたい」というのがしっくりきました。じゃあどんな感性だと言われるとわからないのですが笑。ただ一つ言えることはさくらももこの作品をもっと読みたいなと思ったということです。実はもう今日の帰りに寄り道をして2冊買ってきました。また何か新しい発見がある気がして、今からワクワクしています。

そういえば今回は丁度30冊目だったようです。noteを2月の途中から始めたので、大体月に5冊ペースでしょうか。欲を言えばもっと読みたいですが、まあまあ良い感じです。年内に50冊はいきたいなぁとぼんやり思っています。

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