読書感想文(36)シェイクスピア著、松岡和子訳『十二夜』

はじめに

この作品を読んだきっかけは授業で扱うからです。いつも読んでいる新潮文庫のシリーズでは出ていないようだったのでちくま文庫の訳を読みました。これは全集シリーズなので、これからはこのシリーズでもっと読んでいってもいいなと思います。

この作品は全く予備知識が無かったのですが、背表紙の紹介文によると、「男→女、女→女(男装)、女(男装)→男」という綺麗な三角関係のお話とのことで、読む前からおもしろそうだなーと思いました。

感想

まずこの作品で一番印象に残ったのはストーリーです。先述の通り、綺麗な三角関係。これがどうなるのか気になりながら読みました。ネタバレはしませんので気になる人は是非お読みください。ただこの作品のようにアッとなるような終わり方というか、急展開による終わり方というか、終わり方のスピードというかリズムというか、そういったものが『ハムレット 』に似ているなーと少し思いました。後半で終わりに向けての準備がされていって、ドドドッと終わるというか。あとがきによるとほぼ同時期ということなので、そういう手法なのかもしれません。

タイトルについてはクリスマスから十二夜目のお祭りのことを指すそうです。しかしそのお祭りに関する話は全く作中に出てこず、でも雰囲気は十二夜に合っているからみんな納得している、そうです。十二夜には宮廷に劇団が呼ばれて芝居をしたそうですが、この作品も十二夜に宮廷で行われた劇なのでしょうか。それにしてはちょっと下品な言葉遊びも多いんじゃないかな、と思ったのですが、当時の常識がよくわからないのでなんとも言えません。でも宮中で下ネタ連発するのかなぁ、貴族ってそういうイメージ無いけれど……。

十二夜というのはお祭りで、この作品はその雰囲気に合っていると書きました。それはみんな酔っ払ってちょっと砕けたようなイメージだそうです。この作品でいじめられる執事は、祭りの参加者からすれば「お堅いこと言ってんなよー」といった感じのちょっとお邪魔な存在、その存在を劇の中で笑い者にしてしまっているんだとか。なるほどそう考えると確かに面白いのかもしれないなと思いました。

そうそう、この作品を読みながら思ったのが、観ている人が意識されているなーということでした。「こんなの劇場で見せられたら興醒めだな」みたいなメタい台詞があったり。文庫で読むとどうしても小説を読むような気持ちになってしまうので、劇らしいところを見つけると想像が膨らんで楽しくなります。

あとちょっと作品から離れての感想で言うと、いいなーと思う台詞が結構ありました。

・あなたのような悪魔なら、私の魂を地獄へ運んでも構わない
・しかし、仮に悪魔だとしても、あなたは美しい

書きながらちょっとあれー?と思いました。将来悪い人に騙されないように気をつけたいと思います。あとはこんなベタなやりとりもありました。

男「どうやらお前、まだ幼いくせに、その目は好きな人の顔に釘付けになったことがあるらしい。図星だろう、どうだ?」
女(男装)「はい、お陰様で、多少は」
男「どんな女だ?」
女「あなたのような顔立ちで」
男「そんな女にお前はもったいない。歳は?」
女「あなた様くらいの歳です」

これは作中の男視点だと男同士の会話なのでまさか自分とは思わないのですが、観ている方からするとベタベタです。「好きな人ってどんな人?」と訊かれて「あなたみたいな人」と答えるような感じです。んー、流石に現実では厳しい気がします。もしそんな事を言う人がいたら信じない方が賢明でしょう。

最後に、「解説」に書かれていた一節が印象に残りました(もはや十二夜の感想ではないですが、この本を読んで思ったことということで)。

恋と祭りは似ている。どちらも合理性などかなぐり捨てて夢中になってしまう。恋はすべての人を理性から解き放つお祭り騒ぎだ。

ここが響いてくるのはまだちょっと子供なのかなーと思ったりもします。いや、逆に合理性を求めてしまっているから非合理性を求めたいのかもしれません。「理性を捨てて恋がしたい」と、恥ずかしげもなく書き残しておこうと思います。いつかこのnoteを読み返した自分にとって黒歴史となっていたら嬉しいです。

おわりに

この感想を書きながら、ちょっとまだこの作品を味わいきれていないなーと感じました。面白かったといえば面白かったのですが、これがこの作品の面白さだ!みたいな気持ちにはなりませんでした。またいつか読み返したら面白いかなーと思います。劇でも観てみたいです。

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