読書感想文(23)C・ブロンテ作、大久保康雄『ジェーン・エア 下巻』

はじめに

前回の続きです。先週色々とバタバタしたので読み終えるのが少し遅くなりました。他に「はじめに」に書くことが思いつかないのですが、ちょっと短すぎるなぁと思ったので書き足すとすれば、イチオシ作品なので是非読んでみてほしいです。

感想

下巻は上巻より一層胸を打たれます。希望、絶望、逡巡、決断、それぞれの感情についていこうとするとかなり心を振り回されます。しかし最後には自分を強く持って進んでいく主人公に勇気づけられます。こんなに短くまとめてしまっていいのかと思うほど凄まじいストーリーなのですが、ネタバレを控えるために詳しくは書きません。是非読んでみてください。

この作品は上巻で一度家族という問題について方が付きます。しかし下巻で新たに家族に関する話が出てきます。そして家族愛と恋愛の話が対照的に感じられます。家族愛と恋愛で異なるのは血縁関係があることや愛する方法です。一方同じことは恐らく心の性質が同一であることではないかと思います。現代の多様な価値観で考えるとそうとも限らないとは言えますが、少なくともこの作品においては一貫しているように思います。

私の興味のせいもありますが、後半は恋愛についてかなり強い印象があります。例えば次のような内面描写があります。

彼とともにいると、うっとうしい遠慮もなく、浮き立つ気持ちを抑制するものもなかった。それは、わたしが彼にぴったり適合していることがわかり、完全に安らかな気持でいられたからである。わたしの言うこと、わたしのすることは、すべて彼を慰めるか元気づけるかするらしかった。なんという喜ばしい意識!それはわたしの心に生命の光明をもたらした。彼という存在のなかにこそ、わたしは生き、わたしのなかにこそ彼は生きるのだ。

これに私はとても共感しました。丁度昨日読んだ別の本で「私が面白いと思う作品は、確かに私がそこに居ると実感できる」と書かれており、なるほどと思いました。私の場合は現在の自分だけでなく理想の自分を見出すことも多いように思います。そしてぼんやりしていた考えが文章という整理された形で示されているので、すんなり自分のものとする事ができます。

この部分と同じように恋愛観について私が共感したものに坂口安吾の「桜の森の満開の下」や「ジロリの女」があります。しかしこれらと「ジェーン・エア」はどこか違うような気がしました。その差異について考えてみた所、恐らく相手の気持ちなのだろうと思いました。坂口安吾の二作では、相手の自分に対する尊敬や好意の有無に関わらず、ただ相手が好きだという事象から献身します。一方、「ジェーン・エア」は相手が自分に対して尊敬や好意を持っていることに大きな意味があるように思います。よって尊敬や好意を持つまでの過程も大切にされます。では坂口安吾の作品において、自分から相手への好意がいかに生じるのかというと、肉体美が大きな割合を占めるように思われます。坂口安吾は恋愛を描く時に肉欲を除外するのは偽物だというようなことを書いていたと思いますが、まさに「ジェーン・エア」はこれを除外しています。どちらが良いかと考えた時に私は「ジェーン・エア」のような精神的な、プラトニックな要素に魅力を感じますが、一方で現実の恋愛を考える上では肉欲を無視するわけにはいかないのだろうとも思います。

「ジェーン・エア」の魅力は主人公が自分の正しいと信じた道を進み続けるところだと思います。それは時に周りに疎まれ、時に好きな人を傷つけます。それに迷いながらも、しかし自分の信じた道を進むのです。そうした結果、必ず救われるなんて事は現実的ではないと思います。しかしたとえ一生救われないとしても、自分の信念を曲げることが本当に良い事なのか、と問いかけられているような気がします。この作品は「否」という結論を出しました。勿論そうでない人も多くいるでしょう。ただ私の場合はそこにも共感し、自分の道を外れるくらいなら救われない方がマシだと思いました。それは周りの声に耳を傾けないという意味ではありません。たくさんの知らないことや考え方を知り、しかし流されず、自分で考えて判断して生きていきたいです。それで周りと合わないのであれば、それは周りと本質的に合わないというだけのことです。その時、自分の正統性を自分で信じるために、自信が必要です。私は自信をある程度自分の中で確保しつつ、しかし大部分は他者に依存していたためあまり自信がありませんでした。しかしそもそも自分の道を進むための自信であれば、他者よりも自分自身による評価の方が重視すべきです。そのための方法として、知識を身につけることとよく考えることがあると思います。それらを基に下した判断は、自分と合わない人のものより正しいと信じることができるのではないかと思います。あまり他者との優劣は考えたくないのですが、少なくとも自分の事においては自分の判断の方が他者より優れている、という程度であれば許されるでしょうか。私は既にこの方法に従って自信を膨らましつつあります。今までに経験の無い事なので慎重に進めていきたいと思います。

おわりに

この作品を読み始めた頃、丁度進路について考えていました。そしてこの作品に背中を押されました。これも一つの運なのかな、と思います。今読んで良かったという気持ちと、またいつか読みたいという気持ちがあります。少なくとも将来何かで悩んだ時、或いは大きな決断を迫られた時、私はこの作品を思い出すだろうと思います。

そして最後に、もう一度だけ、

是非読んでみてください!!!!

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