読書感想文(3)シェイクスピア作、福田恆存訳『アントニーとクレオパトラ』

この本を読もうと思ったきっかけ

『アントニーとクレオパトラ』はあんまり有名ではないのではないかと思う。しかし著者はものすごく有名で、誰かというとシェイクスピアである。少し前からシェイクスピアの作品を読むようになった。そのきっかけは確か「自分は国文学科なのに有名な近代の作家の作品をほとんど読んでいないなぁ」と思い、有名な作者を探した結果シェイクスピアに至ったのだったと思う。最初に読んだのは『ハムレット』(福田恆存訳、新潮社)であった。とりあえず有名な四大悲劇を読もうと思ったのは覚えているが、何故「ハムレット」が選ばれたのかは覚えていない。ただ今まで読んだシェイクスピアの作品で一番面白かったので、結果的には初めて読んだのがこれでよかったと思っている。ともかく意外なほど面白かったので色々読んでみようということでシェイクスピアを読み始めた。これまでに読んだシェイクスピアの作品は「ハムレット」「ロミオとジュリエット」「リア王」「オセロー」「マクベス」「ジュリアス・シーザー」、そして今回読んだ「アントニーとクレオパトラ」である。何故「アントニーとクレオパトラ」を読んだのか、知っている方はもう検討がつくと思うが、「ジュリアス・シーザー」を読んだからである。「アントニーとクレオパトラ」のタイトルにも入っているアントニーは、「ジュリアス・シーザー」においてジュリアス・シーザーの仇を討った人物であり、「アントニーとクレオパトラ」は「ジュリアス・シーザー」の歴史的に後日談といえる。そのことをあとがきで知ったので、これは読まなければ、と思って読んだ次第である。

感想

正直にいうと、あまり楽しめなかった。ただ恐らく作品が悪いというわけではなく、自分の理解力の問題なのだろうと思う。というのも、登場人物のセリフが結局何を意味しているのかわからないケースがかなり多かったからである。比喩表現や逆説的な表現がその具体例に当たる。あとはイングリッシュ・ジョークに慣れていないこともあるだろう。また、戦局が結局どういう状態なのかもほとんど把握できなかった。これは地理の知識もあると思うが、恐らく演劇を読むことの難しさなのだろうとも思う。今回読んだ『アントニーとクレオパトラ』(福田恆存訳、新潮社)は台本のような形式であった。恐らく原本も同じであり、シェイクスピア演劇を本にするのはこれが普通なのだろうと思う。しかし演劇に慣れておらず小説に慣れている自分が本で演劇を読むとどうしても小説のような読み方をしてしまうのだと思う。メディア論として非常に面白い問題だと思われるが、できればそんなことよりもまず楽しめるようになりたい。

というわけでちょっと残念な結果とはなったが、次のセリフは是非とも覚えておきたい。

我も人も、今宵の運命は酔いつぶれて寝るにありだ。(エノバーバス)

これは登場人物たちが占いをしてもらっている場面のジョークである。飲み会の際に使える実用的なフレーズだと思う。シェイクスピアはこのような決め台詞が多くて楽しい。

その他

シェイクスピアを読み始めたことをきっかけに、今学期は英文学史の授業を受けてみた。試験勉強をしなかったので単位があるかは危ういが、毎回内容が濃い授業であり、とてもたのしかった。シェイクスピアの作品は他にも有名なものを読み残しているが、シェイクスピアを読むとその分専門の本を読む時間は削られるのでなかなか多くは読めない。しかし何作か読んだという経験がいつか自分に「久しぶりにシェイクスピアなんか読もうかな」と思わせるのではないかと思っている。こんな形で若いうちに浅くとも色々なものに触れておけば、将来心に残ったものが自分の中に積み重なり、より深いものとなるのではないかと思っている。

時間が無くなってきたので今日はこの辺で終わり。明日はこんな事にならないように余裕を持って書きたいと思う。

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