ロンドン・ナショナル・ギャラリー展に行った感想

現在国立国際美術館で開催中の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」に行ってきました。ロンドン・ナショナル・ギャラリーが他の所で展示をするのは初めてだそうです。そんな事は行ってから知ったことで、友人が行く(行った)という話を聞いて「おもしろそー」と思ったので行ってきました。

今回の展示のメインは印象派ら辺だそうで、丁度今大学の授業でアメリカのモダンアート以後を扱っているので、その前身とも言えるところだなーとか思いながら見て回りました。あ、ちなみにただの一般人なので間違ったこともめっちゃ書くと思います。もし詳しい人がいたら是非コメントで教えてもらえると嬉しいです。

まあそんな事はともかく、入ってすぐに感動したのが作品No.1 パオロ・ウッチェロ〈聖ゲオルギウスと竜〉(1470頃)です。何がすごいかってシンプルに3Dでした。解説には「槍や芝生が不自然なまでに空間を表現している」みたいな事が書かれていましたが、本当に浮き出て見えてすごいと思いました。なぜこんなに浮き出て見えるのかしばらく立ち止まって考えましたが、わかりませんでした。
ここで空間表現というと、授業で習った事が思い出されます。それはアメリカのモダンアートにおいてクレメント・グリーンバーグ主導の下、絵画の純粋化が進んで現実と異なる空間表現が突き詰められていくようになったという事です。逆に言えばそれ以前は空間表現は現実の空間と同じものを求めていたということであり、そしてその空間表現は15世紀に既にここまできていたのだと感動しました。
空間表現で他に感動したのは例えばウィレム・クラースゾーン・ヘーダ〈ロブスターのある静物〉(1650-59)です。これは本当にお皿やナイフがテーブルから落ちてきそうな感じがしました。
あともう一つ、大きな絵で見る場所によって立体的に見える場所が変わるものがあったのですが、どの作品かわかりません。横に大きな絵で、丁度正面が立体的に見えました。左の方に立っていると、左の方に描かれている犬が立体的に見える、といった感じです。
こんな風に見ることができるのって実物を見てこそだなぁと思いました。今ネットで検索して絵を見ても、あれほどの感動はありません。実物を見るっていうのはこういうのも良いところだなぁと思いました。
あ、ちなみに今は作品リストを見ながら書いています。作者や作品名は全然覚えられていません。図録は買うか迷ったけど買いませんでした。

次に気になったのはディエゴ・ベラスケス〈マルタとマリアの家のキリスト〉(1618頃)です(やっと聞いたことある名前!)。これはなんというか、配置がものすごく意味ありげで見入ってしまいました。思わず「うーん」と唸ってしまった時はまるで識者のように見えてしまったんじゃないかと思って少し焦りました。
気になったのは窓の向こうが明るい・整っているのに対してこちら側は暗い・整っていない感じがしたことです。窓の向こうは聖書の一場面だそうです。対してこちら側は台所で、庶民の風俗画的な感じです。
明るい・暗いはそのままだと思いますが、整っている・整っていないは何によるものなのか観察してみました。まず窓枠を見ると、窓の中心線に向かって奥行きが設定されています。しかしこちら側のテーブルを見ると平行線は別の方向です。これが恐らく違和感の原因の一つです。そしてテーブルの上の食材も整っていません。魚は2匹ずつ別方向を向いていて、壺の柄(線)も平行ではありません。ニンニクも散らばっているというか、まあ整ってはいません。卵はまあ綺麗かな?
そして料理をする女の表情、かなしそうです🥺
窓の向こうの聖書の話は、「私ばっかりキリストのもてなしのために働いてる!妹ずるい!」みたいな感じだそうです(多分)。そういう、働く不満みたいな繋がりはあるような気がしますが、んー、具体的なメッセージとかは私にはわかりません。労働の辛さを訴えた絵なのでしょうか。多分違います。
こういう配置とか平行線を意識して見れるようになったのは授業のおかげだなーと思います。実は国宝源氏物語絵巻なんかも平行線で読み解けたりします。
あと形式的に気になったのはサルヴァトール・ローザ〈道を尋ねる旅人のいる風景〉(1641頃)やカミーユ・ピサロ〈シデナムの並木道〉(1871)、エドガー・ドガ〈バレエの踊り子〉(1890-1900)などです。特に〈道を尋ねる旅人のいる風景〉はいいなーと思いました。

あと本展覧会のメインともいえるフィンセント・ファン・ゴッホ〈ひまわり〉について。まず面白かったのは背景色を色々変えていることでした。最近私はカラーコーディネートに興味を持ち始めたので、「お!」ってなりました。そしてひまわりの黄色を際立たせるためには2枚目の青(紺?)などが良いように思われますが、一番良いなーと思ったのは実物が展示されていた4枚目の背景が黄色のひまわりでした。なんでなのかはわかりません。けどこう、明るい日差しが差している感じがしていいなーと思いました。日差しがどうとか思ったのは多分解説に「光を黄色で表現する」みたいなことが書いてあったからです。でもいいなーと思いました。なんだろう、こう、薄い黄色の壁の家で、窓際にテーブルがあって、その上に向日葵が生けてある、窓枠は白、外は青空、そこから段々日が落ちてきて光が黄、橙と変わっていくイメージをしました。壁も台も花瓶も花も、全部黄色なのに違うのが面白いなーとも思いました。色に対する感性は人より鈍い自覚がありますが、こういったものに触れて少しずつ感性を養っていきたいです。ちなみに言葉でいうと「白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」という歌がありますね。
そして次は形の面から。なんとなく変だなーと思っていたら、花が色んな方向を向いていることでした。これによってこう、ばらけるというか。他の3枚に比べて花も多く、けれど咲き乱れているという感じはせず、なんなんだろうこれはって感じです。多分この構図で背景が紺色だったら結構暗いイメージになったのではないかと思いますが、黄色なのでそんな感じもしません。なんなんだろうこれは。そしてさらに壁と台の境目の線、これが平行でないことに気付きました。わざとなのか、たまたまなのか。
解説によると、ゴッホは元気いっぱいで南フランスにひまわりを描きに行ったみたいな事が書かれていましたが、そんな感じがしませんでした。まあこれは私が絵画を見慣れていないせいなのかもしれません。今後に期待です。

クロード・モネ〈睡蓮の池〉(1899)について忘れていました。どこかで見たことがあるのはゴッホのひまわりとこの作品の二つだけでした。解説によると黄色と藤色の斑点で水面の光を表現しているとのことで、なるほどすごいなーと思いました(これも実物を見ないとわからない、と思いましたが、最近は高画質でネットで見れる所も増えていますね)。印象派は光の表現を頑張った、と授業で習ったような気がします。この作品も橋に目立つ光の表現が印象的です。

今回、図録を買おうかな〜と迷いましたが、やめました。なぜなら今回はロンドンナショナルギャラリー展だからです。買うなら作者や時代に特化した展覧会の方が勉強になるかなーと思いました。グッズもザッと見ましたが、欲しい!と思うものがなかったのでやめておきました。美術に関する小物っていいなーと思いましたが、まだ自分の持ち物にできるほど詳しくないなと思ってやめました。今回ミュージアムショップで得た収穫は二つ。一つ目は意外と複製は安い物もあるので、将来好きな作品を家に飾りたいなと思いました。友達を呼ぶ時に毎回変えたりとかも楽しそうです(これは茶道からの発想)。もう一つは『代表作でわかる印象派BOX』という本を見つけた事です。フルカラーなのに2000円で、初心者向けっぽかったので買うか迷いました。今じゃなくていいなと思いましたが、多分近いうちに買います。
ちなみに印象派という言葉を初めて知ったのは文学関係で、枕草子のスペイン語訳についての話を聞いた時でした。この時印象派について全く知りませんでしたが、芸術という共通点から通底する思想を読み取っていた所に文学研究の可能性を感じました。なんでわざわざこんな事書いているのかというと、なんでも繋がるもんだなぁと思ったからです。やっぱり色々な事に興味を持つと面白い事がたくさんあるなぁと思います。

最後に、全体としての感想を。まず思ったのが、聖書読まなきゃなーということです。でも解説無しで読むのはしんどいし、何か解説書で読もうと思います。絵画って聖書引用が多いので、もっと楽しむために聖書を知りたいなと思いました。あとは神話もです。今回の展覧会の作品にも入っていたボッティチェリはヴィーナスの誕生が有名ですし。そういうところで、古典を読むのって大事だなーと思ったりもします。
もう一つ思ったのは、もっと色んな展覧会行っとけばよかったーーということです。行くか迷っていたミュシャ展とか、行けばよかったです。フェルメール展もやってたなぁとか。まあ後悔しても仕方ないので、これからたくさん行きたいです。今一番気になっているのはアーティゾン美術館の「琳派と印象派 東⻄都市文化が生んだ美術」です。日本文化の影響って結構昔から海外にあるらしくて、特に鎖国が終わってから急激に進んだみたいな話を聞いたことがあります。この前行ったデミタスカップ展も日本の影響を受けた柄が結構あって面白かったです。
でも東京なんですよねー。こんなご時世だし行きづらいけど行きたいなーって感じです。来月までだけど、平日なら行けるかな?と思ったりします。日本以外の文化にも目を向けると、やっぱり東京が一番色々あるんだろうなーと思います。博物館も多いし。でも京都も色々あって楽しいんだなー、時と場所を選べば人も少ないし。将来休日に京都に行けるところに住みたいなーと思っていましたが、東京もありだなーと思うこの頃です。

そんなこんなで話が逸れてきたのでそろそろ終わります。まだ行ってない人は是非行ってみてください。おもしろかったです。

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