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【一級建築士製図試験】設計課題(用途)についての学び方-下


GW中の5月3日・4日、イチケンさん主催の #イチケンZOOM過去問勉強GW がありまして。
私も、4日の最後の1時間を頂いて、製図試験において、設計課題、特に「用途」についてどうやって学んだらいいか?というお題で、お話をしましたので、、下の3回に分けてまとめておきます。この記事は「下」になります。

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上でⅠを、中でⅡとⅢの途中まで、下で具体的に「図書館の使い勝手」について書いてます。

3. 図書館の使い勝手とは

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いわゆる、5W1Hです。
具体的にまとめてみたのが、下記。

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色分けは、イチケンさんの課題文マーキングカラーです。
・A部門=図書館 ピンク
・B部門=小ホール 緑

この表は、あくまで想定です。
これまでと書いてきたように、試験分析のプロからの情報や、書籍実例見学をして、10月の試験当日までに用途、空間の特性、使い勝手をある程度想定しておこう!という流れです。

そして、この5W1Hの一つひとつが、動線を分けたり、近接・隣接させたり、空間を仕切ったりすることにつながっていきます。
というのも、
例えば、上記図の図書館部門と小ホールでは利用開始時間が異なりますよね?
部門への出入りにしてもバラバラ来るのか、一度に大量に来るかの違いの他に、小ホールの鍵の貸し借りの場所はどこなのかとか、照明や空調を個別調整できるようにするとか、バックヤードだって、図書館館長室への動線と小ホールを使う講師の人の控室の動線が一緒でいいか否かとか・・・
収容人数による室の大きさや廊下の幅の広さ、たまり空間のゆとり、それからEVの有無、階段の近さ、はたまた必要なトイレの数などにも影響してきます。
こういった建築的対策、必要ですよね?

そうゆう違い、建築的対策の違いがあるかどうかを、少なくとも事前にある程度明確にしておけば、課題文を読んでいて戸惑うことも少なくなってくるかと。

なお、どのように使うのか?の部分は、ちょっと細かく書きすぎましたが、次で説明します。

4. 主要諸室の計画上の留意点

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こちらは、イチケンさんからのリクエストで、コンパクト建築設計資料集成p243にある「主要書室の計画上の留意点」の表を色分けしたものです。

色塗りは、イチケンさんの課題文マーキングカラーとそろえてます。(つーか、書籍からのスキャンが下手くそすぎw

GWの際は、時間の関係で全部は紹介できませんでしたが、ここではちょっとしっかり書いていこうと思います。平成24年の課題文片手に読んで頂ければ。

■入口、エントランスホール

例えば、先の表の一番上段、黄色=共用部門で塗った(1)入口、エントランスホール
コンパクト建築設計資料集成p243の先の表から引用いたします。

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この本の出版年が2005年ということをお忘れなく。(繰り返しますが、情報が古いです。特にIT技術や省エネ技術について。)
図書館資料の貸し借りはシステム化されてきてますし、新築の図書館はほぼ100%、BDS付きではないかと思います。調べてないですけどw

で、
平成24年の課題出題時、出入口はメインを道路側から、サブを公園側からの2ヶ所にしなさいという「特殊条件」がつきました。それと、ブックポストブックディテクションシステムについても出題がありました。

この表を読み込んでいたら、出入口に関しては、お?原則1ヶ所じゃないのねー特殊条件来たねーセキュリティややこしそうねー?という反応でしょうか?
ブックポスト?うんうん、わかったー!借りてた本、休館日に返却できるように「入口の目につきやすいところ」に計画ねー!ですし。
BDSも、うんうん、わかる!わかる!BDSは、閲覧室=図書館部門代表と他部門の境界線上に置くのが基本だけども、設置場所の指定もないなら、出入口2ヶ所あるしセキュリティあるしで、いっそのこと出入口付近に設けとくと他の計画がラクかもねー?他の条件とかぶらなければオッケーそうだねー?ってとこまで対応できます。

これ、課題文を読んだ瞬間に思い浮かぶことです。
どうでしょうか。
この「主要書室の計画上の留意点」の表をよく読んでいれば、課題文に付加される「特殊条件」との違いに気づくのも早いですよね?

しかも、極めつけは、エントランスホールで、閲覧室利用者と集会部門利用者の動線を分離する」の一文。

1. 本を貸し借り・読みにくる人=不特定の少人数が、不規則に来館して不規則に帰っていく
2. 集会部門目当てにくる人=不特定多数が、定時に一挙に来館して定時に一挙に帰館する(か、一部図書部門に散っていく)
この2つは、人数や時間帯等の使われ方が異なるので、動線を分けろと。

もう、この一文で図書館の骨格を表現しているというか・・・
え?
もうこれで空間構成の答えじゃーん!ってなりませんか???

てな具合で、
主出入口のところで、2つの部門の動線は混ざらないようにパッキリ分けといてーっていう一文を読んでいるか否か、課題文読んだ時にこの一文がスッと出てきてイメージできるか否かで、結果が全然違ってきますよね?
逆に言えば、図書部門と集会部門が混然としていると、「んんん?どうしてこうなった?本来、この2つの動線は分けた方が使い勝手がよいのに、混ざっているのは意図がなにかあるのかな?」となります。そんな風に図面の意図を汲み取ってくれる試験元であればよいですが・・・
下手すると条件違反空間構成違反になりかねない。

明確な境界線がなく、屋根も空間もゆるくつながっている岐阜メディアコスモスも、図書部門は2階、その他集会系施設が1階と、きれいに分離されています。
これって偶然ではなくて、やはり使い勝手を考えると図書部門をその他の集会施設を一緒くたにはできない。一つの大きな空間に、壁を造らずゆるゆると仕切っていろんな要素を詰め込むにしても、図書館用途の大原則は守ってるよという姿勢が見えます。(見学に行きたい!!!)

こんな風に、用途の基礎の勉強が足りないと、建物の骨格、すなわち空間構成を考える初歩の初歩から差が出てきてしまうんです。
ある意味コワイ。汗
たかがコンパクト建築設計資料修正のペラ1枚の情報ですが、ここは丁寧にさらっていきたいところです。

■図書館司書の方の動き

下記、イチケンさんの課題文マーキングカラーにそろえて塗り分けてます。
黄色=共用部門
=管理部門
ピンク=A部門=図書部門
同じくコンパクト建築設計資料集成p243の表から引用いたします。

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(3)カウンター・デスク
みなさんも、図書館行ったことおありかと思うのでこの辺りの利用者の動線はなんとなく想像つくと思いますが、基本的には、図書館のカウンターは利用者が対面のサービスが受けられる場所です。
なので、エントランスホールに面して、入口をくぐったらすぐ見えるところにあることが多いですね。
施設内の総合案内も兼ねてるし、カウンターの内側からも利用者の出入りがなんとなく見えるので防犯上よいですし。

イチケンさんとお話して、この表の(3)カウンター・デスクの外側を、黄色=共用部門に塗っています。
その意味とは、図書館利用客は、入口から入って来て貸出・返却をしたり、レファレンスコーナーに質問しに行ったりと、(3)カウンター・デスクには立ち寄るだけで、そのカウンターの内部には入らないから。
そして、その(3)カウンター・デスクの内側=青色=管理部門には、図書館司書の方が働いてらっしゃって、バックヤードである(6)事務・作業室=業務スペースとしょっちゅう行き来してるわけですね。
そうゆうことで、表の色を塗り分けています。

(6)事務・作業室業務スペース
図書館の司書の方が、新しい書籍をシステムに登録したり、分類して目録を作ったり、背表紙の分類番号やBDS用の非接触タグを付けたりカバーしたり、破れた本の修理とか・・・他にも、図書館法第3条に規定されたもろもろの図書館業務をやってる空間です。
平成24年の課題では、事務室と作業室は別々に出題されました。これも「特殊条件」になりますが、まぁ、課題全体としてはさほど重要ではないので一体と考えてOKでしょう!

(4)書庫
図書館司書の方は、開架書架だけでなく、レファレンス業務で閉架書庫(=司書の人しか入れない、貸出し禁の書籍が多い)にある書籍をとりに、一日中行ったり来たりされてます。閉架書庫はたいてい別階にあるので、階段をダッシュで上り下りされるとか・・・涙
図書館司書の方にヒアリングした時は、いつもカウンターの裏側で走り回ってるんですよーと笑いながらおっしゃってました・・・涙、涙
書籍は重たいし、レファレンス業務はアタマを使うし、知能・体力ともにいるたいへんなお仕事です・・・すごい。汗

あえて建物を運営する側の空間についてピックアップしましたが、これ、読んでいて、図書館司書の方の動き、見えますでしょうか?
これで、(3)カウンター(4)(6)のバックヤード系は、図書館司書の方が頻繁に行き来するので、近接させとくのが望ましい、と書かれている意味がわかるかと。
ということは、
管理系の動線とはいえ、司書さんの負担を減らすためにも、できる限り動線を短く計画すべし!なんだなーということがおわかりになるかと。(もちろん、このことが、課題文において優先順位のどの辺か?というのは意識すべきですけども。)

実際、平成24年の課題では、地下に閉架書庫を計画しなさい、という司令が出ました。
さぁ、あなたなら、上記を読んでみてどう計画しますか?
書籍の上げ下げは管理階段?EV使います?小荷物昇降機の方がいいかな?とかまで考えられますよね。
もし、地下1階に閉架書庫、地上2階に図書部門を計画したなら、司書の方は確実に地下1階と2階を走って!?往復することになるでしょう・・・
EV待ってる時間もったいないですから!と笑顔が戻ってきますからね・・・
この図書部門と閉架書庫の位置関係にも、気をつかいたいところです。

ちなみに、
私の場合は、試験当日、この司書さんのお仕事のたいへんさに配慮しすぎました。
地下1階に閉架書庫、地上1階に図書館部門を計画したものの、カウンター裏側が異様に広いという、優先順位がアレな配置計画になりましたです。汗
本来は、利用者の空間=この課題では閲覧室を広々させるために、管理部門は狭くてもOK、多少使い勝手が悪くてもOKなのが設計の鉄則なので、私の1階平面図見ると完全に「およよ?どうした?」なんです。苦笑
もうちょいやりようがあったとは思いますが、当日はそれで精一杯。たんなる技量不足です(トホホ

でも、もしウラ指導主催の実例見学会で、図書館司書の方にヒアリングさせてもらってなかったら、カウンターの裏側作業室の位置や閉架書架の位置をどこにすればいいかとか、イマイチピンと来なかったと思います。
なので、この司書さんへのヒアリングの機会を頂いてありがたかったし、おかげで合格できたと思っているくらいなので。
みなさんにも、こういった施設を動かす側、建物管理者とは違う施設の専門家の日々の話、どんな風に施設を運営しているか?を伺うことをおすすめする次第です。

■レファレンス

近年、対面カウンターとは別に、自動貸出機械があったり、返却コーナーや、ネット上でできる予約本の受取りコーナーが設けられていたりで、カウンターを介さずに貸出・返却できたりしますけど、いずれにしてもカウンター周りの利用者動線は混雑しがちなので、広めにしといてねと。
そうゆうことだそうですが、
図書館の受付カウンターでは、貸出・返却機能の他に、レファレンス機能という図書館独特の機能があるんですよね。
改めて、レファレンス機能ってなんじゃ?て感じかと思うので、同じくコンパクト建築設計資料集成p243「図書館のサービス・業務内容と諸室」の表から引用です。

図書館のサービス:レファレンス
サービス・業務内容:図書館員が図書館の資料と検索ツールを活用して、利用者の求める資料や情報の提供および質問に回答するサービス、参考調査、情報サービスとも言いう
関連書室および機器等:相談デスク、参考図書室

こんな感じで、司書の方が、いろいろと調べてくださるんですよね。
私も、へっぽこ修士論文書くときにお世話になりました。

先の「主要書室の計画上の留意点」の表によると、図書館全体の面積に応じて、このカウンターの規模が大きくなったり、「貸出・返却機能」と「レファレンス機能」として別々に設けられたりしますよと。図書館自体が小規模だとしても、レファレンスカウンターは、貸出・返却機能と分けて開架書架群の近くに設けることが「望ましい」となるそうで。
都内の再開発ビルに入っているいわゆる「テナント型」の図書館で、カウンター一ヶ所で、貸出・返却とレファレンスの両方をこなしている実例もあるにはあるのですけども、それにはたぶん自動貸出機などでカウンター機能の軽減が必要ですね。

■まとめ

ということで。
図書館の中で、利用者目線だけでは少し理解しづらい、特徴的な場所・空間の使われ方を例として挙げてみました。
改めまして、図書館に関してはコンパクト建築設計資料集成のP242、P243に、見事にぎゅっと情報が詰まってまして。
そのまま参考になるし、あぁ、図書館の空間構成てこうゆう風になってるんだなーっていう、一級建築士的な視点に立てるといいなと思って紹介しました。

以上のようなことは、他の課題というか、他の用途の建物でも同じです。
その建物の特異な使い方、空間のあり方があるので、課題公表されたら最初に整理して把握しましょうと。
そして、課題文を読んでエスキスする時に、書籍だったり、実例見学だったり、施設運営の専門家に聞いたり、実例図面で見たことを思い出しつつ対応していく感じになるんですけど・・・
できそうでしょうか???

図書館を事例に長きに渡って書いてきましたが、
基本的な機能・条件をアタマに入れつつ、最寄りの図書館へでかけて、人びとの動きを観察(?)してみてほしいです。(もちろん、厳重な感染症対策をした上でですよー)
そうすると、書籍などの文字・図面情報が実感としてイメージできるし、課題文が求めている空間構成がどんなものかが想像しやすいので。
そうなればこっちのもので、投げられたボールをきちんと打ち返す=自分の設計意図をうまく図面と記述に反映できるかなーと思うので。

ぜひ、7月の課題公表時までになにをなすべきか、公表されたらなにをすべきか、今の時期にじっくりと作戦を練っておくと、課題公表以降の動きが違ってくると思います。
少しでも参考になれば。。。

■本日のトップ画像

はい。
武蔵野プレイスを北側の公園から見たところです。
JR中央線の武蔵境駅が北側にあるので、アクセス量は圧倒的に駅のある北側から。武蔵境プレイスに関するほとんどの写真は、こちら側から撮ったもので、むしろ南側から撮った写真・・・記憶にないです。笑
なので、北側が公園(=武蔵野市都市計画公園)で、その隣地境界線からのエントランスがとっても主出入口ぽいんですけど、一応、南側の道路境界側にも出入口あります。広さといい、雰囲気といい、めちゃくちゃサブエントランスぽい扱いですけどね。笑
製図試験的には、主出入口は必ず道路境界線からが大原則で、隣地境界線側に安易に主出入口を設けるとランク4に接触する可能性がありますので、くれぐれもご注意くださいませ。

この複合施設、実家が近所なので母上がよく通っております。本の虫である彼女は、武蔵野市の蔵書は少ないわねーとボヤいてましたが、なんやかんやお気に入りのようです。
私が受験期に並行して工事、ちょうど竣工しまして、地下1階の閲覧席で勉強しておりました。夕飯どきに子どもたちが帰ったあと、20時ごろから22時までの閲覧席は社会人の勉強部屋となっておりまして、行くと法令集とか資格学校の教科書広げてる同志の方がいましたですとも。笑

こちらも、機会があれば寄ってみてください。
児童閲覧室のインテリア、とってもかわいいです。イチオシ。

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