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アメリカ縦断ぼっち旅 16日目 マクラウド 招かれた宿


早くに目が覚めてしまった。
まだ日が出て間もない時間。

差し込む朝日がとてもキラキラしていて、つい浴びたくなってしまった。

静かに宿を出て町を散歩する。

9月後半にもなると空気がひんやり。
町はまだ眠りの中。
シャスタ山を拝んでみよう。
古い廃線路が見えてきた。

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レイクシスキュー からとはまた違う表情。
きれいだなー、と寒さも忘れて見入ってしまう。
大きく息を吸う。
涼やかでキリッとした空気が体を満たす。
他より酸素が濃いんじゃないかと思うくらい、細胞の一つ一つに染み渡る感じ。


完全に目が覚めた。
お腹、空いてきた。

宿へ戻る道の途中、昨日ロビーで見かけた顔。
やっぱりみんな同じことを考えるよね。



宿に戻ってしばらくすると、おいしそうな匂いがしてきた。

ほぼ、一番乗りで食堂に入る。
オーナーさん手作りの品がずらりと並ぶ。
好きなものを自分で取り分ける、B&Bではおなじみのスタイルだ。
でも、その品数の豊富さと、こだわりは他では見たことがない。
味はもちろん美味しい!食べる前からわかる愛情たっぷり感よ。
ついつい食べすぎてしまう。

次々とほかのお客さんが来る。
各々好きな席に着く。
広くはない食堂なので、自然と会話が始まるが、喋りたくない人は喋らなくていいし、気を使う空気も無い。
なんとも心地良い。


ついつい食べ過ぎてしまった。


さて、今晩の夜行列車で南へ移動しようかと思っていたけど、まだチケット予約していない。
これからの行き先や、行き方を調べたりしていると、声をかけられる。

どうやら翌朝スウェットロッジ というものがあるらしい。

???

ざっくり簡潔に書くと、ネイティブ・アメリカンが執り行う浄化サウナ小屋。
魂を浄化する、とても神聖で大切な儀式らしい。
最近では執り行う方も減り、なかなか体験できないそうだ。

なんだか絶妙なタイミングでこの宿に来たみたいだ。
これは、スウェットロッジ に参加するためにこの宿に呼ばれた??

すぐにオーナーさんに延泊できるかを確認。この日は金曜日だったけど、ちょうど今泊まってる部屋一晩だけ空いているとのこと。
ますます、疑いようがなくなってきた。
これは、GOサインだ。

スウェットロッジ に参加させてもらうことにして、延泊の手続きを済ませる。



さて今日これからどうしようかな。

昨日質問攻めにされた宿泊客の男性に声をかけられる。

なんと、私が行きたいところへどこでも車で連れて行ってくれると言う。
喜んで乗っかります!
 
とはいえ、シャスタの観光地をほとんど知らない。
そこで、彼が行った中でおすすめの場所を教えてもらい、時間的に良さそうなのが温泉だった。

お風呂セットを用意して車に乗り込む。
あぁ、なんて車は快適なんだ。
国際免許は持ってきたけど、反対車線、ルールもちょっと違うから怖くてまだ運転できずにいる。
でも、広過ぎるアメリカ旅行には車は必要だとこの2週間で痛感している。
次の滞在地で運転チャレンジしようかな…。


フリーウェイに乗ってすぐ、みずみずしい森が消え、岩山が過ぎ、景色はガラッと変わる。
辺り一面牧草地や低木、少し荒涼とした広大な大地が広がる。


着いた先はスチュワートミネラルスプリングス。
おしゃれなセレブの隠れ家的スパ、と行った雰囲気だ。

アメリカで温泉に入れるなんて思ってなかった。
日本人としてはこんなに嬉しいことはない。
大浴場ではなく、小さな個室にバスタブがあって、温泉を蛇口でひねって満たす、というスタイル。
共同のサウナ、シャワー室、外のウッドデッキを下ると、渓流を岩で囲ってプールにした冷水浴場。

飛び込みで入ったので、30分ほど待合室で待つ。
アロマが焚かれ、ヒーリングミュージックが流れる。テーブルにはオラクルカードが置いてある。

水着持ってなかったので、速乾の下着に、貸してくれた体を覆うようの布を、そこそこ大きかったので、パレオ風に巻いて首の後ろで結び、ワンピースにしてみた。

体を隠したくなるのは日本人ぐらいのようで、他のお客さん達は布巻いてる人ほとんどいないし、いても、大事なところ見えそうな感じでラフに巻いてる人だったり。

温泉はデトックスの成分が強いから、長時間入ると肌が痛くなる人もいるらしい。
おすすめの入り方を店の人が説明してくれる。
なんと説明書に日本語版があるのか!
それだけ日本人がたくさん来てるんだね。


温泉→サウナ→川にドボン、を何度か繰り返し、温泉成分が気になる人は最後にシャワーを浴びる。
この渓流は浄化の作用があるとかなんとかで、穢れを落としてくれるらしい。


時間が来て個室へ。

温泉はヌルっとした肌触り。
久々のバスタブに、体中から、あぁぁぁ〜…
思い切りいろんなものが漏れ出してくる。

時間を見て、サウナへ。
ドライサウナだから、割と長居できる感じ。


汗が滲んだところで、川に下る。
足を入れると、あまりの冷たさに電流が走る。
日本でもサウナの後の水風呂は浸かることができないビビりな私。
しかもここはお魚が泳ぐ天然の渓流。冷たさが違う。
頭もざぶんと入るのがおすすめらしく、次々にお客さんが勢いよく全身を埋めて行く。

…徐々に慣らそうかな。

1回目は股下まで頑張った。
魚達が気持ちよさそうに泳いでいる。
そのすぐ横で震える私。

たまらずお風呂へ戻る。

2回目は腰までいけた。

3回目は意を決して肩までいけた!

一瞬ざぶんと頭から川に潜る。
なんて爽快!!
でも長くはできないので早々に上がる。

連れてきてくれた男性が川に来た。
なんのためらいもなく頭までざぶんと入り気持ちよさそうにしている。
羨ましい…。


4回ほどループを繰り返しだだろうか。
上がる頃に、同じ宿のお客さんが来ていた。
あられもない自分の姿に、なんだか照れ臭くなる。


あんまり長く入っては良くない、と言われていたけど、割としっかり温泉に浸かった。
めちゃくちゃスッキリした。
一皮向けたような身軽さ、爽快さ。

私も彼も、お腹空いたね、と意気投合。
まだ外は明るい時間だけど、すっかり温泉に満足してしまって、おつかいを済ませて直ぐ帰路に着いた。


宿に到着、すっかり脱力。

私たち以外他のお客さんはいない。

居心地の良いロビーのソファでのんびりだらだら。
あー、至福の時間よ。


オーナーが忙しそうにしている。

ふと私たちを見つけて、こっそりおもてなしをしてくれた。
いつもはこういうことしないんだけど…、と話していた。
ありがとうございます!

なぜか旅先では、出会う人出会う人に良くしてもらうことがとても多い。
家に招待してくれたり、ご飯ご馳走してくれたり、物をくれたり、車に乗せてくれたり…。どの人もたいてい、いつもそういうことをしていない(らしい)人ばかり。

もしかしたら、私が危なっかしくてほっておけない雰囲気を醸し出しているのだろうか。



夕飯時が過ぎ、続々とお客さんが帰ってくる。

各々好きな場所に行って、好きなものを買って、楽しそうに話している。

少しずつ夜も更けて、オーナーさんがロビーに登場。人が集まりワイワイガヤガヤ。

やっぱり最後はオーナーさんのありがたいお話に皆が真剣に耳を傾け、意見交換会のようになる。

オーナーさんは、シャスタ山に呼ばれてこの地に来た、という。
話を聞けば聞くほど、ここは修道院で、オーナーさんは修道女と言うよりは巫女(宗教関係ない)として献身している、というのが腑に落ちる。
だから、他の宿とは違う空気感なんだな。


夜がとっぷり更けた。

皆それぞれの思いを胸に、部屋へ帰って行く。

私は、すごいところに来てしまったのかもしれない。

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