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「海外で暮らす」の意味(その2) | エディンバラで暮らす旅

前回までのあらすじ

20世紀後半にクライストチャーチとバンクーバーでそれぞれ1年ずつ暮らしたパチは、「いつか海外に拠点を移して暮らしたい」と考えるようになって帰国した。
「特別なスキルがない自分が、それなりにいい暮らしをしようとすれば、なんらかの方法が必要だ。」そう考えたパチは、具体的な方法として、特許翻訳家となり日本から仕事を受けながら海外暮らしをしようと考えた。
だが、36歳で初めて会社員となり平均以上の収入を得ることができるようになると、「海外に生活拠点を移す」という考えが、どんどん口先だけの言葉となっていくような気がしていた…。

…と、ちょっとおもしろがって書きましたが、ようするに日本での生活が思っていたよりもちゃんとしたものになっていく一方で、海外で暮らすということが遠ざかってしまったわけです。
そして、日本での生活に特段の大きな不満があるわけではない現在のおれは、本気で海外生活を送りたいと思っているのか? それとも昔の考えを引きづっているだけなのか、あるいは耳触りの良い夢を感じる言葉を利用しているだけなのか? そんなことを見極めようというのが今回の2カ月半弱の「エディンバラで暮らす旅」のメインテーマです。

「夢や希望」には2種類ある

おれにとっては、「夢や希望」というものには2つのタイプがあります。
1つ目は、「こうしたい」「こうなりたい」と、なんの見込みもなければそれに向かってなんらかのアクションも取らないまま口に出したり思ったりする夢。希望。願望。
1つ目は、「それを実現させるためには、あるいは実現する可能性を高めるためには、どうすればよさそうか?」ということを考えて、なんらかのアクションを取るタイプの夢や希望。

おれは1つ目のタイプの夢や希望の取り扱いが下手くそで、「それが欲しいならなにかをしなければ。もし、なにもしないのであれば、それを夢や希望として自分の中に持っているのは自分を苦しめることにつながるのでは?」という考え方てしまいがちです。思考の癖ですね。
それが自分の夢で、実現する可能性を高める方法があるのなら、なぜやらないのか? と考えてしまうし、「なんだよ。口だけかよおれ!」と、「それをやらない自分」に対してムカついてしまいがちなのです。

この「思考の癖」が良いものだとは思っていません。でも、おれの中に結構根強くあるものなので、すぐに消し去ることはできないでしょう。
なので、「生活の中心をいつか海外拠点に移したい」というこの夢や希望に関しても、自分が実際にどう思っているのかを、自分自身ではっきりと理解したいのです。

現在の日本円の力

前回書いたように、おれは海外暮らしに関しては、悔しいけれどかなり金に縛られた考えをしています。
昔のように、「貧乏がどうした!」「未来が見えない? だからなに?」というスタンスで海外暮らしをしたいと思えなくなってしまっているし、貧乏暮らしをしない収入を現地通過で確保できる気がまるでしない。

今回の海外暮らしで身に染みてわかったのは、ありとあらゆるものの価格が、この20数年でがっつり値上がりしいるということ。場所や国が昔住んでいたところではないとはいえ、いわゆる「西側諸国」の生活費は2倍から3倍近く上がっているんじゃないでしょうか。そして、その物価の中で生活できるように、労働に対して支払われる給料も同様に2倍から3倍近くアップしているようです。
一方で日本はどうでしょう。ちゃんと調べていないけれど、感覚的には20-30%、よく見積もってもせいぜい1.5倍程度しかアップしていない気がします。つまり、日本円で稼いでいる限り、結構な稼ぎであっても海外で生活するのは難しいということ。

前回の『海外で暮らす」の意味(その1) | エディンバラで暮らす旅』で書いたように、当時は状況がまったく逆で、日本円で平均的に稼げれば海外では結構いい暮らしができるという状況でした。
しかしこの20年で、状況は180度変わりました。
最近は日本人の若者が海外に出稼ぎに行くという話もメディアなどでも伝えられているし、海外の物価がどれほど高くなっているかという話もいろんなところで見聞きしていました。それに、ときどき行く海外旅行でも感じていたことです。

しかし今回、日常生活品の買い出しをして、毎日自宅で食事をしてときおりパブに行ったり外食したりデリバリーを頼んだりという生活をしていると、生活費が倍以上の地で暮らすということがどれだけ大きな負担(財布だけではなく精神的にも)となるかが意識に染み込んできます。
それは、普段の意地っ張りなおれなら敢えて口にする「まあそうは言っても、きっとどうにかなるんじゃない?」という言葉を、飲み込ませるのに十分な力があります。

エジンバラの冬の名物(?)「The Edinburgh Wheel」

あれ、2回目もほとんどが金の話になっちゃったな…。
多分、次回でひとまずこのシリーズはたぶん終わると思います。

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