見出し画像

「介護現場とデータをつなぐ」ペースノート開発秘話 


ペースノートで介護システムの開発責任者をしております、野尻です。

2019年から大阪の社会福祉法人で働き始めてから4年が経ちました。
2022年にショートステイ版の予約管理システムをリリースし、おかげさまで導入いただいた多くの施設様から、「部屋の管理が楽になった」「稼働率が上がった」などのお声をいただいております。

このたび、2023年5月に老健版ペースノートをリリースするにあたり、ペースノートのここまでの歩みをご紹介できればと思います。

ペースノートが考えるDX

さて、介護事業所でDXというと、請求ソフトや見守りセンサーを入れて、「いま職員がやっていることを楽にする」という考え方であることが大半です。結果として職員の残業時間の削減や、職員の負担の軽減を図ることが狙いになっているように思います。

ペースノートが重要であると考えるDXはむしろ「データ化」です。
介護業界では厚労省の「LIFE」が、データを活用した介護の質の改善を目指している例が該当すると思いますが、他業界では売り上げを増やすために多くの企業がデータを活用しています

例えば以下の温泉旅館の事例では、宿泊客のリピート率の向上のために、顧客情報や要望の履歴をデータ化し、職員間で共有できるようにしています。

そのため、お客様の車が到着した時点で、車種とナンバープレートからお名前が分かり、どの職員が対応してもお客様の食事の好き嫌いを訪ねる必要がないなど、顧客対応の品質の向上に成功。結果としてリピーター増につなげています。


「データ化」によって、特に集客が重要となるショートステイや老健、デイサービスなどの分野で、介護事業所の収益性(=稼働率)を上げることができるのではないか。
それによって、ペースノートが考えている、「利用したい人に必要な情報が適切に届くことで、希望するときにいつでも介護サービスを受けられる社会」を実現できるのではないか。

ペースノートでは、新型コロナウイルスで稼働の落ちたショートステイで検証から始めました。

重要な「データ」は何か

まず、ショートステイ4施設で1年分の予約データを分析しました。
結果として、稼働率を上げる手段としては以下の3つが見られました。

①ロングショートを増やす
②新規利用者を可能な限り多くとる
③リピーターを増やす

①ロングショートを増やす

ロングショートは取った瞬間に稼働率があがりますが、入所などでショートの利用が終了した際に稼働率が急落します。

②新規利用者を可能な限り多くとる

新規利用者は営業が大変で、一気に獲得できたとすると契約業務で手一杯。結果的に利用者の満足度も下がってしまいます。

③リピーターを増やす

リピーターを増やすと、一人の方が利用を中止しても大きく稼働が下がりません。また、職員の受け入れ準備もしやすいため、サービスも安定する結果が見られました。

そのため、リピーターの数が稼働率を上げるうえで一番重要であるという結果が得られたわけですが、すでに介護業界でも多くの施設さんがリピーターを重視していらっしゃると思います。

ではどうすればリピーターを増やすことができるのか、ペースノートではリピーターを大事にされている再春館製薬所の事例を参考にしました。

特に研究を重ねたのがコミュニケーションの部分です。

利用して1年未満のお客と会話する時間は平均で10分35秒。1年以上の顧客でも平均7分33秒だ。

売上の9割がリピート客!再春館製薬所の独特な戦略
https://business.ntt-east.co.jp/bizdrive/column/dr00029-007.html

これを受けてペースノートでは、ショートステイの利用者を分類して、いつ、誰に、どのようなコミュニケーションをすることが、リピーターの満足度向上に効果的なのかを徹底的に分析しました。
その成果は、利用者管理機能としてペースノートに詰めこまれていますので、ぜひ弊社ホームページも併せてご覧ください。


開発の失敗と、現場理解の深化

しかしペースノートも、以上のような構想が固まってから、順風満帆に製品化ができたわけではありませんでした。

例えば予約の登録画面です。旅館の事例と「データ」重視の観点から、宿泊サイトのような空きベッド検索、予約登録の方式を採用しました。

一号機の画面の例。予約登録時にその部屋の前後の予約が見えない。

しかし、これには介護現場で予約管理をする相談員からも、「前後の予約など、必要なものが見えない」「これでは使えない」と厳しいフィードバックの嵐。こうして開発期間半年を要したペースノート一号機は、導入説明会で炎上して終わることとなりました。

実はこの時、私は東京に住んでおり、大阪の現場とリモートでコミュニケーションしながら開発を進めていました。私も当時介護現場経験がなく、相談員が何を見ながらどうやって予約の管理をしているのか、うやむやな部分を抱えたまま画面を決めていたわけです。

このままでは現場に使ってもらう製品を作ることはできない、という焦りから大阪への移住を決意。社会福祉法人に身をおいて、働き始めることになりました。
その後日々現場に通い詰めて、相談員の現状の入力作業をなるべく変えず、むしろ楽にするにはどうすればよいのか、日々改善を重ねた結果、構想から3年後の2022の春、ショートステイ版ペースノートが完成したのでした。

ショートステイ版ペースノートの画面

老健版ペースノートの開発へ

ペースノートではショートステイ版の製品化を進めながら、介護老人保健施設(老健)の入所データの分析も進めてきました。

その結果、ショートステイも含めた老健の利用傾向、さらには施設と居宅介護支援事業所・病院との関係性が見えてきました。
例えば施設周辺に回復期リハ病棟がどれだけあり、老健としてどの程度入所者を獲得できる余地があるのか、まだ営業できていない病院はあるのか。ペースノートでは様々なデータを施設の内外から収集し、全国の老健へ提供していきます。

老健版で提供する病院リスト


ショートステイで培った「顧客管理データ」を超えて、「施設周辺の市場データ」を活用した施設運営へ。ペースノートは老健版のリリースを通じてさらに進化し続けていきたいと思っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?