見出し画像

2020.9.17

移転の準備もかなり進み、現店舗での営業は9/23をもって終了いたします。再オープンの時期はまだ確定ではないですが、11月の半ば頃を予定しています。

気が付けば9/1でVilla della Paceは4周年を迎えることができました。新しいお店がスタートする前に、これまでの4年間+αを少し振り返ってみようと思います。

そもそも東京出身の僕が地方でお店を始めようと思ったきっかけは、2人のシェフとの出会いです。

2014年に当時勤めていたお店の食材の視察で訪れた淡路島、その時食事を頂いたフレンチレストランのシャルティエの成瀬孝一シェフと、2015年に初めて訪れた和歌山県のvilla aidaの小林寛治シェフ。2人の料理の背景にはその土地の風景がしっかりと浮かび、シェフたちの生き方がすごく羨ましく思えました。

地方に憧れを持つようになったものの、初めからいきなり地方で開業しようとは思っていませんでした。30歳で独立したいという目標はもともとあったので、まずは東京でお店を始めてからいずれ地方に移転するつもりで考えていました。

まずは東京の荻窪や幡ヶ谷あたりの不動産屋を回り物件を探していましたが、希望の一階路面店となると物件自体が極端に少なく、あったとしても現実的な家賃ではありませんでした。銀行へ相談に行っても自分の貯金では借りられるお金もかなり限られ、かなり厳しい現実を思い知らされました。

仮にお店を始められたとしても、借入の返済期間や何年後かに地方に移転することを考えると、追加でまた借入をすることを考えてもそもそも最初に東京でお店をやる意味はあるのかと考え直し、それなら初めから地方で開業した方が良いんじゃないかと思うようになりました。

移住先は地方なら能登半島、石川県七尾市というのはすんなり決まりました。食材の取引先も多く視察で足を運んだこともあり、同世代の生産者や知人が既に一番多い場所でした。また七尾市は創業支援の制度も充実しており、市・商工会議所・信用金庫・公庫が一体となり融資や補助金、移住相談などの窓口を一つでやり取りすることができ、東京に拠点を置きながら開業の準備を進めるにはかなりやり取りがしやすかったです。2015年の11月に七尾市役所に足を運び、プロジェクトが具体的にスタートしました。まずは物件探しということで、その時に不動産屋さんを紹介していただき、それからは東京と七尾で連絡を取り合い物件を探しました。2016年の2月ごろに今の店舗の物件情報が入り、再び七尾に足を運んで契約をしました。

設計は東京でお世話になっていた知人に金沢の設計事務所を紹介して頂き、実際に飲食店を経営している方だったので、初めてお店を始める僕は安心して一緒にお店作りを進められました。

E.N.N.さんの改修工事の記事→http://enn.co.jp/news/869/

資金計画としては今思うとかなり甘く、自己資金は¥100万、借入は¥1,000万であとは国と市の補助金合わせて¥400万頼みという状況でした。居抜きで入れることが前提でしたし、運転資金は十分に見ようと思っていたので内外装・厨房機器どちらも十分にお金をかけることは出来ませんでした。ただこの予算の中でもお店を始めることができ、少なからず評価をしてくださる方もいるレストランが作れたのは最初の創業時に関わってくれたすべての方達のおかげだと感謝しています。

9月のオープンを目指して7月の頭に七尾に移住することを決め、最後に勤めていた代々木上原のビストロは5月一杯で卒業することが決まりました。創業支援のサポートがあったので東京で働きながら開業準備を進めることができ、6月末には七尾に移住、無事に9/1にVilla della Paceをオープンすることができました。

オープンしてからは順調にいったかというとそんなことはなく、客足が伸びず苦悩した時期もありました。地方でお店をやる楽しさも難しさもどちらも味わいました。オープンしてからの経緯は以前の記事にまとめています。https://note.com/pace_nanao/n/ne26aa4d85ac6

最近若い世代の料理人は必ずしも独立願望がなかったり、雇われでも自身の料理の世界観を表現している方もたくさんいると思います。ただ自分の場合は海外での修行経験や星付きレストランで働いたこともなく、ましてや自分でコース料理を考えて作ったことも数えるほどしかありませんでした。それでもなんとかお店を4年間続けることができ、今は移転に向けて準備をしていますが自分でも素晴らしいレストランができると思っています。(もちろん最初の創業の時とは比べものにならないほど投資もしますが、まだ最終的な金額が決まっていない部分もあるのでまたオープン後に詳しく書こうと思っています。)
開業してから悔しい思いもたくさんしましたが僕は独立して良かったと心から思っています。今までの料理人生の中でも直近の4年間が一番成長できた期間だと実感していますし、誰かに守られているわけでもなく、言い訳できない環境に身を置いたことがその要因だと思います。

・自分の場合は開業するまでの経験値は明らかに足りていなかった。
・少ない開業資金かつ運転資金を多く見ていたために、経営的に持ちこたえられると同時に自己投資をして成長する期間が作れた。
・その間に銀行への返済実績と地域内での認知度や人の繋がりができたことが、同じ地域で新たに大きな投資をする準備となった。

という感じです。
まだ新しいお店が始まっていないのに言うのもどうかと思いますが、若い料理人がキャリアを考えていく上での参考となれば幸いです。

お店を続けながら自分の料理や目指すレストランの形が変わっていったことは以前書きましたが、具体的にどのようにそれを実現しようとしてきたのか、移転までの準備も含めて次は書いていきたいと思います。

2020.9.18


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?