ポイントカードを作らない理由
コーヒーやらなんやら買いに行くお店では、大抵ポイントカードを持っているか聞かれます。
「大丈夫です」
ぼくは、なるべくやんわり断ります。
ポイントカードって、作ったほうがお得なんですよね。
わかっているんです、本当は。
たまにしか行かないお店ならまだしも、週に1~2回は行っているわけですし。
店員さんもきっと、ぼくの顔を覚えているでしょう。
それでもぼくは、やんわりした雰囲気できっぱり断ります。
馴染みのお店はあまりないですが、以前毎日にように通っていたコンビニの店員さんは、ぼくが吸うタバコの銘柄を覚えていました。
うれしいような、恥ずかしいような。
きっと、うれしさが勝っていたような気がします。
きっと、仕事ができる人だったのでしょう。
きっと、ぼく以外にもたくさん覚えていたのでしょう。
ある日、いつものようにぼくがレジに向かうと、すでにタバコを用意してくれていました。
でも、その日はタバコを買う気がなかったのです。
その日がいらないだけで、結局は吸うのだからストックしておけばいいだけの話なのですが、その日は買う気がなかったのです。
ぼくはタバコを買いました。
断るより買ってしまったほうが、お互い幸せだと思ったからです。
結局、後日そのタバコは吸いました。
ぼくはタバコを買いに行く手間を1回分、得しました。
店員さんは、タバコを出した甲斐がありました。
お互いよかったはずなのに、誰も何も悪くないのに、それが最後に通った日でした。
そんなことがあるから、ぼくはポイントカードを作れないんです。
週に1~2回行くお店には、おばちゃんの店員さんがいます。
最低でも週に1回は顔を見ており、2回見るときもあります。
ぼくはおばちゃんの顔を知っているし、おばちゃんもきっとぼくの顔を覚えているでしょう。
何度も何度も聞かれました。
ポイントカードの有無を。
そのたび、ぼくは断りました。
作ったほうがお互いお得なのかもしれませんが、お互い幸せになるためにぼくはポイントカードを作らないのです。
顔は知っているけれど名は知らぬおばちゃんは、名を知らないぼくにもうポイントカードの有無を聞きません。
そのほうが、お互い幸せなのですから。
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