千崎叶野

神話は、平凡な人生に対するロマンティックな抵抗。いつだって京都大学のみらくるえんじぇう…

千崎叶野

神話は、平凡な人生に対するロマンティックな抵抗。いつだって京都大学のみらくるえんじぇうだよ。

最近の記事

欠片が埋まらない

事実を述べて伝えられることは、どれだけ小さいのだろう。小さな身体全体が心臓のようにどきどきと揺れ動いたことも、鉛になってしまったかのように重くのしかかる生存それ自体も、言葉にしてしまってはとても陳腐だ。こと何かに対する愛情なんてものは言葉にしてしまってはあの尊さも儚さも切なさも、何もかもを失ってしまう。 言葉で何ひとつ感情を伝えないことにしよう。あの結果わたしは酷く屈曲して鬱になり数年を無駄にした。ひとは「無駄ではないよ」「成長しているから大丈夫」とはいうけど、そんなこ

    • アイドルの結婚

      推しが結婚した。結構古参なファンだったと思う。7年くらい推してて、わたしの人生の中ではいちばん長いジャンルになった。7年前は「推し活」なんて言葉がまだ流行る前で、地雷系もゆるふわマイメロ女子も推し活をしていなかった。グッズと言えば雑誌の見開きと、缶バッチと、ブロマイドぐらい。今みたいにぬいぐるみはない時代からの推しだった。 「推し」という言葉はあんまり好きじゃない。本気な思いも浮気な思いも、全部一緒くたにして「推し」と言うなんて、ボキャブラリーが貧相でしかないだろう。「推

      • 改装

        いきなりほとんどの記事、SNS、連絡先が消えて驚いた方もいらっしゃるかもしれません。千崎叶野です。 精神的に不安定なところをお見せすることもあったので今回もそれかと思われたかもしれませんが、実は今回はいい話です。 春からの進路が決まり、きちんと芸術にも学問にも真面目に取り組むために、一旦過去を清算して今年一年を頑張ろうと思いました。お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、2023年末には「小説家になろう」サイトを閉じ、1月末には「livedoor」のブログを閉じ

        • 千年ものときを

          泣いて過ごす夜がもう二度と来ないように、と痛切に願ったはずなのに、何度試しても何年生きても繰り返してしまうのは悪夢のようなループものの作品に迷い込んだ気分だ。鬱という言葉が流行りだしてから口に出すことは自分を軽く見せてしまうような気がして避けている。だから今日も「悲しい夜」をじっと堪える。 今日は満月の一日前。満月よりも、この方がいい、だって満ちる猶予があるじゃない。そう言ったひとが穏やかな満月の夜を過ごさないとしても、わたしはその余裕のある笑顔を覚えている。 『千年

        欠片が埋まらない

          向日葵を贈らせてね

          便りがないのはいい便り、なんて言葉は嘘だ。こんなにも発達した情報社会で便りのひとつ、噂のひとつ流せない状況がどんなものかほんとうは皆判っている。それでも置いておかれたわたし達は少しでも心安らかに生活するためにそんな言葉を使うのだ。 本心から信じられたらいいのにと願いながら。 初めて出会った時、わたしはあの子を知らんぷりしようとした。昔からの悪い癖で、惹かれてしまったものに惹かれたと素直になるのはどうも恥ずかしいらしい。惹かれていることを認めて、わたしはあの子のそばに

          向日葵を贈らせてね