「もう恋なんてしない」のか?


「強がり」の歌

先日ゆる哲学ラジオを聞いていたら、曲の歌詞を引用しながら哲学者の話と絡めていてかなり面白かった。
ラジオ内の考察をなぞりながら、私の考えも交えて書き散らしておく。

「『もう恋なんてしない』なんて言わない」

曲の中でこう歌われている。

もし君に1つだけ 強がりを言えるのなら
もう 恋なんてしないなんて 言わないよ 絶対

歌詞より抜粋

まずは何が強がりなのか確認する。

  • もう恋なんてしない!
    次の恋なんてしたくないくらい未練有りマス!
    どちらかと言えば未練タラタラなセリフだろう。強がりじゃなさそう。

  • もう恋なんてしないなんて絶対に言わない!
    →昔のことなんて忘れてこれからも恋してやる!

    →今の傷心を隠したセリフのように思える。強がりっぽい。

つまり、「もう恋なんてしないなんて言わない」ことが強がりなんだ!という解釈を、私もラジオを聞くまではしていた
しかし、これ以外の部分も聞けば聞くほど強がりのように思えてきた。

ほら朝食も作れたもんね!←強がりっぽい

ほら朝食も作れたもんね だけどあまりおいしくない
君が作ったのなら文句も 思いきり言えたのに

歌詞より抜粋

強がりなんじゃないか?って視点を持ってみると、このあたりは分かりやすく強がっているように見える。
冷静に考えて、「ほら朝食も作れたもんね」なんて、大の大人がなんでもない文脈で言うわけがない。たぶん。
「あなたは私がいないと朝ごはんも作れないんだから!」って言われていたであろう情景がありありと浮かんでくるし、そのセリフに対してほら!と言っているように感じられる。

そう考えると、直後に登場する文句のくだりも「君が作ったんだったらなぁ~文句も思いっきり言えたのになぁ~」と、強がりに見えてくるし、むしろそう解釈した方が自然に感じる。
文字通りのを解釈して、モラハラ気質だしそりゃフラれるわ!と思っていたが、これだけひねた強がりを言う人間がまっすぐな文句を言えるのか、と考えると少し懐疑的な気もする。

センチメンタルだろう

2本並んだ歯ブラシも1本捨ててしまおう
君の趣味で買った服も もったいないけど捨ててしまおう
“男らしくいさぎよく”と ごみ箱かかえる僕は
他の誰から見ても一番 センチメンタルだろう

歌詞より抜粋

あれもこれも強がりってのは無理があるのでは?と、自分ならおそらくこのあたりを引き合いに出して反論しそうな気がした。
実際ここで、過去の想い出を清算し、次に進むために向き直っているようにも見える。
ただ、その解釈の仕方は歌詞の直後でしっかりと否定されている。
センチメンタルだからだ。
強がって「男らしく潔く」あろうとしたものの、やはりそうはいかなかったのだ

強がりは”1つだけ”じゃないの?

お気づきかとは思うが、要するにこれもまた強がりなのである。
「いや~別に強がってるわけじゃないんだけど~『1つだけ』ね?『1つだけ』言わせてもらうなら~」
この部分をラジオで聞いて、ああ、なるほど終始強がりを言っている曲なのだと腑に落ちた感じがした。

「見つけてみせるから」のメロディ

二人で出せなかった 答えは
今度出会える君の知らない誰かと
見つけてみせるから

歌詞より抜粋

2番の最後に出てくるこの部分、次の恋に向けての意気込みなんじゃないか?と思われるかもしれない。私は思った
曲全体が強がりで構成されているって話の後なので、「これも強がりだから」で終わってもいい気はする。

この強がりだらけの曲の中で、一番の強がりは何かと考えた時、やはりそれはわざわざ強がりだと明言されている「もう恋なんてしないなんて言わない」であろうと思う。
そう考えると、同じメロディで高らかに歌い上げる「君の知らない誰かと見つけてみせるから」も、重みのある渾身の強がりであるように感じられた。

最後の「もう恋なんてしないなんて言わない」

本当に 本当に 君が大好きだったから
もう恋なんてしないなんて 言わないよ絶対

歌詞より抜粋

今までの話を考えると、ラストワンフレーズのこの部分も強がりだとしてもいい気もする。

しかし、「本当に本当に君が大好きだったから」に関して言うと、全く強がっていない。
この強がりではないセリフの後に、しかも「~から」と因果関係のような形で続けている「もう恋なんてしないなんて言わない」は、果たして強がりなんだろうか?

ただ、先ほどの「見つけてみせるから」と同様、メロディは完全に強がりのそれである。
さらに言えば、1番の歌詞でわざわざ1つだけと強調されている強がりと、全く同じ文言である。
やはり強がりなのではなかろうか?

私としては、やはり強がりであると解釈した。
この曲中の「もう恋なんてしないなんて言わない」は、登場人物「僕」の心の中にある一番の強がりであり、本心ではない嘘という文脈で使われていた。
そうなると「もう恋なんてしないなんて言わない」は嘘なので、「もう恋なんてしない」を意味する、と考えることも出来るだろう。

つまりラスサビは、本当に本当に君が大好きだったから、「もう恋なんてしない」、と歌い上げているように聞こえる。
曲のタイトルを歌詞の最後の最後で回収していると考えると気持ちが良い。

まとめ

この曲のおおざっぱな解釈として、二つ取れると考えている。
これだけ色々書いておいてアレだが、正直どっちの解釈でもいいと思う。

  • もう恋なんてしたくないくらい、フラれた相手に未練タラタラで終始強がりを言っている曲。

  • もう恋なんてしたくない気持ちから始まるものの、曲の中で心を入れ替えて前に進む曲。

モラハラ気質!許せない!みたいな部分に関しては、恐らく全部強がりなんだろうな、と私は解釈した。
今までなかった視点で歌詞が読めて楽しかったし、この曲がより好きになったことは間違いない。

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