PrejectRCL ZET REQUIEM:NOVELIZED EX-偽りの後継者たち 小説本文パート
PROJECT RCL ZET REQUIEM:NOVELIZED
特別編:偽りの後継者たち
●文:Hi-GO!
●執筆補佐:めたるす/ゾンリー/らいおね
●挿絵:Hi-GO!/補欠/ててん
※今回は先行版という形で、日頃から『PROJECT RCL』をご支持頂き、お待たせしている皆様へのお詫びと感謝の気持ちを込め、ゲームの体験版のように内容を抜粋し、現在制作中の全6章の内、2章までを圧縮して再編集しております。
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※冊子版限定で『キャラクターデザイン資料』や『用語解説』、
『作品解説』等のコンテンツが付属します。
※本作の制作経緯については別途記事をご用意いたしましたので、気になる方はご一読お願いいたします。
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【PROJECT RCL ZET REQUIEM:NOVELIZED EX-偽りの後継者たち】
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FILE:Ⅰ
――――人知れず海面にそびえ立つ紅い天空の城。
『ヴァルハラ』と呼ばれる深紅の花を模した要塞。
8枚ある花弁の中央にそびえ立つ塔の内部、カテドラルに次々と集まる者達を前に、今まさに王の演説が始まろうとしていた。
空間の中央にして最上段となる祭壇には紅き守護騎士6人が並び立ち、奥の扉が開くと、そこには金色の髪に紅き衣を纏った王である青年……『ロゼ』とその幹部が鎮座している。
「我が信奉者たる『レゾナント』達よ、ゼロ・リバースの中枢たるヴァルハラへよく集まってくれた」
青年が立ち上がり演説を始めると、この場に集まったレゾナントと呼ばれる者たちは一糸乱れず頭を垂れる。凍てつくような沈黙が流れる中、青年は言葉を続けた。
「世界はかつて、蒼き英雄と、紅き英雄の活躍によって数々の災厄を免れてきた……そして諸君らも知るとおり、蒼き英雄により新たなる国家が誕生し、今日までの歴史を歩んできた」
「しかし、愚かにも世界は紅き英雄の存在を歴史の闇に葬り、亡き者としてきた……蒼き英雄と勝るとも劣らないその功績にも関わらずだ。結果、それが世界の秩序のバランスを崩壊させたともいえる」
「ゼロ・リバースは彼の存在を忘れはしない。腐敗したアルカディアの崩壊も、起きて久しいバイル事変も、復活を遂げし『かの英雄』に依るものであるのだから……」
一瞬、場が静まり返った。皆、直近で起こったことにそれぞれ思いを馳せていたのである。
「だが、戦いの果てに『紅き英雄』は再び去り、世界は復興などとのたまい、堕落への道を歩みはじめ、彼の存在を忘れつつある……また愚かな歴史が繰り返されようとしているのだ……」
「そしてまた『イレギュラー』が発生し続ければヒトビトは抗う術を持たない……英雄亡き今、いたずらに破壊と殺戮に巻き込まれるだけだ……が、それを阻止せんと我らはここに集った。違うか……?」
「そうだ!」「その通り!」と賛同の声が次々こだました。
「今こそ世界は強き『力』によって統一される必要がある。その力の象徴こそが『紅き英雄』であり、その存在によって『秩序と平和』がもたらされるのだ」
「だから我はここにいる。確かに我は映し身にして、かつての『彼』とは異なる在り方をしているだろう……しかし、これこそ諸君らが望んだ果ての『結果』であるのだ……!」
「そう、我は皆が望みに応え、この世界に『再生』した……! セイブ・ザ・リバース!!! 全ては『イレギュラーの排除』と『新たなる秩序』のために……!」
両手を空中に差し出したまま青年は動きを止めると、拍手と共に「セイブ・ザ・リバース!」の掛け声が巻き起こった。そして、声が落ち着くと彼は付け加えた。
「さて、改めて確認しよう。諸君らには戦うための『力』を授けた。是非有効に活用してほしい。この聖遺物から産み出された力に相応しい働きを期待する……」
そしてカテドラルの中は「ロゼット・オン」という叫び声と共に次々と光に包まれていった。
◆SCENE2
バイル事変以前から一部の集団が移住し始めていたエリア・ゼロは新たなる生活拠点として台頭し、先の事件で活躍した科学者のシエルは代表格の1人として研究と同時に私設自警団となる『ガーディアン』を設立。界隈の治安維持にも務めていた。
今や『イレギュラー』という言葉は、ネオ・アルカディアに仇なす存在から、エリア・ゼロをはじめとした生活圏を脅かす存在……機能不全を起こし野生化したレプリロイドや工業用メカニロイド、ネオ・アルカディアの残党といったものを指すようになっていた。
あくまで国家が破綻した後の自治区であり、インフラや法の整備も追い付かず、日々をしのぐことで精一杯なエリア・ゼロにおいて、自警団の配備は急務とされた。
それは、世界が未だ問題を抱え、力によってその解決をはかる因果から解放されていない証拠でもあった……。
◆SCENE3
エリア・ゼロの開拓に合わせ、私設自警団『ガーディアン』が設立されたことに伴い、レジスタンスは解体され、かつてのメンバーは旧レジスタンスベースの維持と管理を委託されていた。
そうしてエリア・ゼロの一角に停まっている飛空挺『ガーディアンベース』内部の研究室で、今日も科学者のシエルは新技術の研究に打ち込んでいた。
ガーディアンベースというのは、自警団の活動のために用意された巨大な空飛ぶ船のことだ。船内部には司令室兼ブリッジに始まり、各メンバーの私室に治療室や貨物室、そしてこのシエルの私設研究室に至るまで、あらゆる設備が揃っている。すべて船単独でのミッション遂行をサポートするためのものだ。
また、ベースで各地を飛び回る最中に偶然発見された『サクラ』という植物の街道への植栽と通常よりも早い栽培にも成功した。そして今、開花真っ盛りの頃合いで暖かい陽気であった。
エリア・ゼロ自体の復興度合いだが、当初は風車をはじめとする木造の建築物が景観の大半を占めていたのに対し、ここ数年の発展を経て、人工素材を取り入れた施設の建造にも着手し始めている。今では民家レベルでも本格的な設備や機材が利用可能なまでに復旧が進んでいた。
戦乱の後の荒れ果てた世の情勢を危惧したシエルは、かつての災厄で猛威を振るったマザーエルフの座標を定期的に確認し、彼女の力が悪用されぬよう、安全確認も兼ねて保護観察をしていたが、その反応が最近消失してしまった。
そのため、チームを組んで行方の調査を開始しようとした矢先、更に旧レジスタンスベースとの連絡が途絶えたとの連絡が入ったのだった……
◆SCENE4
「ウェクト博士、色々とありがとう。そろそろ実証実験を開始するわ」
「承知した。ではリバースメタルを……」
そう言ってウェクトはまるで『サクラ』の花のような色と形をしたリバースメタルをシエルに差し出す。これからリバース・システムの検証、すなわち戦闘に特化した形態への『変身』を行うことになる。
「ありがとう」
シエルはリバースメタルを受け取った右手を前に突き出し、左手を添えて構えた。
〈適合者確認……〉
〈リバース・システム起動開始……〉
〈トランスフィールド展開……〉
〈システム・スタンバイ〉
リバースメタルから次々と女性の声でシステム音声が放たれる。
「よし……! いきます! リバースッ……オンッ!!」
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