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猫の言葉でケンカする

猫が口げんかするのを見たことがある。
新婚旅行で、瀬戸内の島に行った時だ。

「ニャー!」「シャー!」って感じじゃなくて、「ナオナオナオナオ」「ンナンナンナン」と、完全に一言物申す、といった雰囲気。

夫と並んで猫のケンカを見学しながら、「絶対なんか言ってるよね」「なんて言ってるのかね」とネコの言葉を想像する。

すっかりあの時のネコ達が気に入った我々は、旅行が終わった後も、時々ネコの口げんかのマネをして遊んでいた。

さすがにそんな奇行を行うのは私たちくらいだろうと思い、外でこの話をすることはなかったんだけど、先日「猫の言葉でケンカするといいみたいだよ」と同僚たちが話をしているのを聞いた。

作業をしながら、わたしの頭の中では、猫の口げんかのマネをする我々夫婦の姿が再生される。

へえ、意外とみんなやってんだ。確かにね、怒ってるのバカらしくなっていいよね。
ネコの言葉だから、何言ってるかわかんないしね。

同僚たちの話は続く。

「確かに、許さないニャーとか言ってると、怒ってんのバカらしくなりますもんねー」

え、ニャンだって?「許さないニャー」?
ちょっと待てよ、ネコの言葉ってそっち?

あぶねー。この時ほど、自分の無口さに感謝したことはない。
わたしがお喋り好きなタイプだったら、我々夫婦の奇行を同僚たちにバラしてしまうところだった。

ネコの言葉っていうからさあ、マジのネコだと思うじゃん。
「許さないニャー」じゃなくて、「ンナンナンナン」の方だと思うじゃん。
いやいや、ニャッ得いかないニャー。

でも、落ち着いて考えてみれば、成人した男女が本気のネコの言葉でケンカする、というのは、愉快すぎるような気もしてきた。
今回は、ウチら夫婦がネコに寄せすぎただけだってことですね。

ニャンのオチもないんですけど、ケンカの時は、ネコ語を話すといいよ、というお話でした。

今日はここまで。おやすみニャさい。


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