体喪失ベストテン

食材が尽きる寸前なので二週間ぶりに外に出た。ずっと7畳に引きこもっていたので、置かれた空間がパーンと拡張されて妙な感じだった。ゲームで次のステージに進んだみたいだ。世界は別にあの狭さではなかった。6月のくせに(悪口)急に空気が生ぬるい。夏のふりをしている(悪口)。空気が生ぬるいと自分の体とそれ以外との境界が曖昧になる。自分の所在が頼りなくなる。よくある。


体喪失① - 外気温と体温が近いとき

体喪失② - 風呂の湯の温度と体温が近いとき

体喪失③ - シャバーサナ


真っ暗な部屋でねそべり、動かないでじっと居続けると、体のない感覚に落ちる。そして本当に喪失する寸前でインストラクターが

「ではゆっくりと、指先を動かしてみましょう」

その、寸前で我々はなんとか手先足先を動かすことにより体を奪還し、"ああ、あったあった"と口にする。危ないところだった。とか言う声がヨガ教室内にどよめく。"ぎりぎりのところでみんなの体を奪還する、その合図を出すタイミングは難しい"と彼女が得意げに言う。



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