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かつて負った″恐れ"が今大人のわたしたちに与える影響とは





前回こころの傷は実は防衛反応の1つだった、という内容でお届けいたしました。

自己防衛のために、脳が変形するという事実に驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。けれど、大人のわたしたちも、傷つき変わってしまった脳を良い状態に導いていくことができることを、前回の投稿の最後に書かせていただきました。希望があるとわかると、本当に安心しますよね。


扁桃体の傷つき


さて今日は、その傷ついた部位、脳の一部の話をもうちょっと続けたいなと思っています。

みなさんは、扁桃体という言葉を聞いたことはありますか?

この脳の扁桃体というのは、脳の中のかなり深部に位置しており、アーモンドのような形をした小さい部位のことを指します。

この扁桃体という部位なのですが、わたしたちの〝気持ち〟を生み出す感情とかなり関係の深い部位になっています。

強い恐怖、つまりトラウマを負ったとき、この扁桃体という部位が変形してしまうのだそうです。

もっと詳しくお伝えするなら、強い恐れの情動を感じたとき、また何度も繰り返しそのような状況下におかれた人の扁桃体は肥大してしまうのです。

トラウマのお薬となるもの


その理由の1つに、幼少期のストレスとなるような体験が関係しています。

このストレスとなるような体験に関しては、身体的な虐待や心理的な虐待、ネグレクト、性的虐待など、「虐待」という言葉が付くようなものだけにはとどまりません。大人のわたしたちからしたら大したことのないように見える、本当に小さな出来事、些細な出来事でも、子ども自身が(子どもの頃のあなたが)恐いと感じることであればトラウマになり得ると言われているのです。

マルトリートメント=不適切な養育と呼ばれるもの全て、トラウマとして残っていく可能性があるということなのです。

例えば、自分のお父さんとお母さんが大きな声で怒鳴り合いのケンカをしてるのをよく見かけてきた人や、兄弟間での比較に苦しんだ方、100点取ったら、かけっこで一等賞取ったら、など条件付きの愛情を注がれて来た方など、これらは全てマルトリートメントにあたると言われています。

また、お友達に仲間外れにされる体験や歯科治療、注射、点滴など、医療行為がトラウマになる場合もあります。

わたしも歯医者さんや注射がとても苦手で、こわくて「行きたくない!」と泣いてよく言っていたそうです。

子どもには、これらの恐かった体験に対して、大人による共感として「恐かったよね。」「嫌だったよね。」という言葉と態度による寄り添いの合図や、実際に治療をしたことによって「あぁ、治って本当に良かった!」という安心に戻っていくような体験が必要です。それらがこころの傷としてのトラウマの〝お薬〟になるのです。

言い換えれば、ただ恐い体験で終わってしまった場合、それが虐待や事件、事故など大きな出来事ではなかったとしても、トラウマとして残る可能性があるということなのです。


大人のわたしたちから見たら、本当に些細なことで、全く危険でも恐いことでもないようなことも、子どもにとっては大きな危険、大きな不安を感じる出来事ととなる可能性があるということなのですよね。

だから、大人(養育者)による「恐かったよね。」という寄り添いの言葉が必要です。

お父さん、お母さんが子どもの目の前でケンカをしてしまった後に、「恐い思いをさせてごめんね。」「ケンカをする姿を見せてごめんね。」「もう仲直りしたから大丈夫だよ。」と言葉による説明や謝罪があること。

たったそれだけで、子どもの「恐かった体験」は「安心の体験」に書き変わります。記憶のされ方が、変わるということなのです!

残念なことに、今生きづらさを抱える大人の私たちが子どもだった頃は、家父長制が主な家族のシステムで、親が子どもに謝るなんてなかなかなされない時代でもありました。

つまり、生きづらさを抱えるわたしたちの脳は、恐怖の中にずっと留まってしまっている可能性があるということなのです。

しかも、マルトリートを含むトラウマになり得る出来事というのは、子どもの脳の変形を引き起こすだけではなく、かつて子どもだった大人のわたしたちのストレス反応さえも呼び起こし続けます。

更に、扁桃体は感情を司る大切な部位でもあります。感情の中でも特に恐怖と深い関係性のある部位なので、今大人のわたしたちがたくさんのことを不安に感じたり、苛立ちが非常に強くなったりすることのきっかけにもなっているのです。
何が。「幼少期のトラウマが!」です。


トラウマ記憶を安心に導く

子どもには、見るもの全てをワクワクキラキラした視点で捉える「センス・オブ・ワンダー」という素晴らしい力が宿っていますが、大人の養育、助けがないと生き延びていくいくことが難しいという側面も実際あります。


わたしたち大人は、子どもたちを恐怖から安心へと導いていく力が備わっています。


かつて子どもだったわたしたち生きづらさを抱える大人たち。わたしたちも過去の体験を安心へと書き換えていくことで、恐怖への反応を和らげていくことが可能です。

今後、そういったテーマでもまた書き進めていきたいと思います。


お読みくださり、ありがとうございました。


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