bi-PARADISE_記録上映会

【bi-の感染力、媒介としての価値】LONGSTAY Program 2019|bi-PARADISE 後夜祭

ロングステイ・プログラム2019では本年4月のアーティスト公募から始まり、7〜8月のリサーチ滞在、10月からは本格的な滞在をおこなってきました。今回招へいしたアーティスト・グループ「bi-」のメンバー3人全員が揃う最後の機会として、「bi-PARADISE 後夜祭」と題したイベントを開催しました。

PARADISE AIR LONGSTAY Program 2019
bi-PARADISE 後夜祭

日程:2019年11月16日(土)
bi- トーク:17:30-19:00 懇親会:19:00-21:00
会場: PARADISE AIR
登壇:bi-(エンリコ・フロリディア、アンゲリキ・ゾルザカキ、ジェローム・ドゥ・ヴィエンヌ)、森純平(PARADISE AIRディレクター)、加藤康司(PARADISE AIRスタッフ/bi- PARADISE レジデント)
ビデオレター:星野 太(ゲストリサーチャー)、別府充貴(bi- PARADISE レジデント)

LONGSTAY Program 2019 中間発表として

<森:導入>
LONGSTAYの3ヶ月が終わったような気持ちになるが・・実はエンリコが帰国するまでまだ1ヶ月ある。途中ではあるが、bi-PARADISEが終わった(&ジェローム帰国の)タイミングで後夜祭を開催。

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今年度のLONGSTAY Program テーマ:Unknown Pleasures
アリシア・ロガルスカとジュピター・ブラウンを招へいした、1年前のLONGSTAY2018を紹介。2013年から行なってきたプログラムで、テーマ設定や受け入れ方も毎年見直している。

主なできごと
4月:公募〜公開最終審査→3人組のアーティスト・グループ「bi-」を招へいすることを決定
PARADISE AIR内でAIRをするという提案、何が起こるかわからないなかで選ばれた。bi-の3人と最初のSkypeミーティングでわかったことは「チームとしての意見が出るわけではなく、3者3様に受け答えする(3人の意見が出揃ってから議論が始まる)ので議論に時間がかかる・・」最初のSkypeミーティングでわかったことは「チームとしての意見が出るわけではなく、3者3様に受け答えする(3人の意見が出揃ってから議論が始まる)ので議論に時間がかかる・・」その時期には過去のLONGSTAY Programの招へいアーティストが再び訪れていた。
この時期には過去のLONGSTAY Programの招へいアーティストが再訪する機会が重なっていた。ヴァスコ・ムラオ(2015年)、プリン・パニチュパン(2016年)、アリシア・ロガルスカ(2018年)がそれぞれ松戸に戻ってきた。
7月:エンリコがリサーチ滞在のため松戸へ
bi-の3人のうち一人が1ヶ月間の滞在を行なった。
期間中、地元中高生向けのWSにゲスト参加(Let's!体験)。
bi- PARADISE開催のための公開会議を地元の純喫茶「若松」で開催。地域の人にも意見をもらいながら、松戸で何が起きるか?を想像してみた。
この時期、PARADISE AIRの屋上では水漏れ問題が発生・・
→普段AIRに使っているのは3部屋だが、bi-PARADISEで滞在人数が増えるために準備を進めた。
10月:bi-の3人がついに来日!
台風直撃の影響を受け・・みんな到着が遅れ、松戸市長への来日の挨拶にエンリコは行けませんでした。
松戸まちづくり会議(地域の町会の連合会)による歓迎会を開催。その場でベッド2台無償で貸していただけることに。松戸まちづくり会議メンバーで、介護用品のレンタル行を営む方から。
今回のプロジェクトでは、bi-はゲストではなくホスト。いつもPARADISE AIRスタッフがしている掃除等々もbi-がやっていた。(このあたりからいつもと構図が異なってきた)

bi-PARADISEの様子

bi-PARADISEでは1週間ずつ2タームに分け、滞在者をつのり共同生活を送った。募集はオンラインで行い、日本だけでなく世界各地からレジデントが集まった。

◉Week 1:2019年10月21日(月)~27日(日)
夕食をみんなで食べること(だけ)がルール。夕方になるとみんなで料理をして食卓を囲む。それ以外の時間、滞在メンバーはそれぞれの興味でなにかをやっている。例えば
 ・勝手に友達を招待
 ・歴代天皇の名前を巻物にする作品作り
 ・滞在最後にみんなで松戸ツアー
 ・MATSUDO PAPERのモデル協力
 ・飲みに遊びに来る地元の人もいた
→みんな勝手に動くので、すべての出来事を把握出来てるひとはいない(PARADISE AIRスタッフもbi-メンバーも)

Week 2:10月28日(月)~11月3日(日)
引き続き、同じルールで共同生活。メンバーは入れ替わっている。
 ・地元の人がきて、差し入れくれたり(やしまさん)
 ・レジデントの美容師さんによるヘアサロン開店
ちょっと来にくいと感じる人もこれるようにイベントも開催
 ・冊子「毎日のよりよいサボり」づくりのワークショップ
 ・東京藝大でのレクチャー

bi-ではない人から見たbi- PARADISE①

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<星野ビデオレター>
◉テーマについて
AIRでは成果(WSするとか、作品作るとか)を求めがちで、わかりやすさを求めるたくなるが・・万人に共有できる価値ではなく、人がうちに秘めることのできる喜びや、それを生むことにも価値があると思っていた。
bi-は人を集め、生活する、という活動なので外から見て価値はわかりやすくはない。後夜祭でも、bi-との関わりの中で、自分が経験した喜びを共有してもらいたい

<加藤コメント:滞在者から>
PARADISE AIRのスタッフではあるが、本業のアーティストとしてbi-PARADISE/Week 1に参加。

驚いたこと:3人は思いのほか頑張っている
bi-のコンセプトはダラダラする(Loitering)なのに・・一生懸命なホストだと思った。自由/ダラダラは努力している人がいて成り立つのかもしれない。来日直後に比べてエンリコの顔がすごく疲れていた、働きをリスペクトしてる。

おなじつくり手として:bi-にとての観客はだれ?
bi- PARADISEの活動はたしかに街の人に全て開かれていたわけではない。一方で、滞在している人たち(自分たち)は観客であった、滞在しながらずーとパフォーマンスを見ている感じ。
しかしながら、街の人もまた観客である、と思う。そこは特殊な構造を持ったプロジェクトだと思う。

印象的な瞬間:ゲーテ・インスティテュートでのイベント
みんなで料理して雑談するパフォーマンスを行なった。bi-PARADISEの状態とあんまり変わらないので驚き。
一生懸命ダラダラする、みんな(参加者)に楽しんでもらう、どこでもそれをができる耐性
→彼らの作品形態は結構高度な技術が必要なのかもと感じた

<別府充貴さんビデオレター>
Week 1に参加した。金沢で撮影したビデオを送ってくれました。
金沢の芸宿(別府さんが運営しているアーティスト・ラン・スペース)にbi-が訪れ、今回のプロジェクト等のレクチャーをしてもらった。参加者にも好評で、松戸での活動を介して金沢にまでつながった体験だった。次はbi-を介して世界中につながっていけたらいいなと思う。bi-をこれからも続けてほしい。

PARADISE AIRから見たbi-

<森コメント>
スタッフは前夜祭トークイベントをしたことでより不安になり、緊急打ち合わせをしました・・トークを聞いても結局何が起きるかわからなかったから。
「松戸以外の場所に出ていくこと(例えば金沢に行くなど)」をどうPARADISE AIRが応援できるか?も考えていた。
→星野:PARADISE AIRから滲み出すことには価値がある。bi-の感染力、媒介としての価値。

<長谷川コメント>
星野さんはゲストリサーチャー(キュレーターではなく)としての立場でいろいろと考えていたと思う。
星野さんが確信をもって言っていたこととしては、
 松戸・PARADISE AIRに関わっている人からすると:bi-は街に深く入り込み知っていくようには見えないかもしれないが
 松戸の外の人からすると:松戸があるから/松戸から知ることができた。人やアイデアが金沢まで動いてきたという感覚。
→それは単純にすごいことなのでは?

<森コメント>
普段PARADISE AIRが一時期に3組までしか受け入れられないのは、コーディネートできないから。だけどbi-が(ホスト側に回って)やるから大人数を受け入れられたのは良い経験だった。
bi-PARADISEの団らんの場はラウンジだった=街に出なくなった(いつもは地元の飲み屋など、街に出て食事をしている)
しかしながら、把握しきれない素敵なことは確実に起きていて、街に接点はできていた。それぞれの種まきのように見えている。

<長谷川コメント>
PARADISE AIRの特徴はスタッフがそれぞれの興味で仕事をしている=コレクティブなこと、を長期間やっていることだと思う。
bi-がきたことで、今までスタッフが感覚でできてたことを見つめ直すことになったのではないか。あるスタッフからは自分たちの仕事を整理してからbi-と相対したほうがいいのでは、という意見が出たり。
(レジデンスとしてのルールやレギュレーションは守ってもらわないと・・とかあるし)

bi-から見た松戸

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<bi-コメント>
松戸の印象は?
キキ(アンジェリキ):印象を一言、は難しいが。来るまでは「なんで松戸を推すの?」感が強かった。東京の郊外よね、的な。来てみてからは、確かに東京は周縁ではあるが、街としてのアイデンティティも強いということに気づけた。
来ないとわからないこと=小さい商店が元気に営業していること
夕食のために、スーパーではなく、なんとかして(英語の通じない)豆腐屋で豆腐を買う、という経験は美しかった。

ジェローム:自分たちのしていることは、他の誰もがやっていること。AIRとして人が集まることで、すこしだけ密度があるのかもしれないが。
今日もタバコ屋さんの人が5分くらい、頑張って、コミュニケーションしてくれて。そういうことは心に残る。

エンリコ:疲れて風邪引いちゃったのでがんばって話しますね・・
見えない仕事はたっっっくさんある。社会で起こることはすべて人の手で作られたもの。何かが起こるならば誰かが手を動かしている、というそもそもの構造がある。
bi-はそれ(見えない仕事)を楽しむために考えて、実行している。

bi-ではない人から見たbi- PARADISE②

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<イベント参加者コメント>
(編注:リサーチ期間の公開会議以降、イベント等にかかさず来てくださった方)
AIRに興味があり参加してみたが・・・主催者もよくわからないこと、をしようとしている驚きがあった。
アート自身が結果を作らねばならない(仕事化)ことに疑問を呈していること=bi-PARADISEの結果どうこう、ではないことに価値を見出していることに惹かれていた。
生活で起こる些細なことにこ美しさを見出していたり、動作やコミュニケーションを丁寧に時間をかけているところは見習いたいと思っている。
一緒に時間を過ごす事(ただし出来事は割とルーズ、あんま計画してない、しれっと食事が出てきたり)が新鮮だった

コメントに対してbi-より
ジェローム:効率的であることや結果を出さないといけない、という社会の風潮にたいして疑問を呈すること、はそのとおり。
PARADISE AIRへの応募書類にも「成果がもし出たとしても、それはずっと後になるかも」と書いていた。
何が起きるかを注意深く見る、ということしかできない。断片を見れば、確実に何かが起こり始めている(美容師さんが髪を切ったり、誰かが友達を連れてきたり、豆腐を買うことが印象に残ったり)

<森コメント>
PARADISE AIR的には応募時の企画を捨ててもらってOK、松戸で自由に過ごしてよ。という態度。だけどアーティストの本音で言えばそれは一番きつかったりする。

<参加者コメント>
(編注:PARADISE AIRのイベントによく来てくださる地元の方)
夜、河川敷でBBQをしていたらbi-に出会った。いきなり声をかけられてちょっと怖かった・・(笑)
彼らのイベントに誘ってもらって仲良くはなったが、まだナゾな人たち。PARADISE AIRも自分にとってはナゾなので、ナゾ×ナゾという感じ。
でも楽しい。それが色んな人に伝わると嬉しい。

<参加者コメント>
(編注:いつもサポートして下さる地元の方。たまにご飯を差し入れてくれる)
食事を囲んで仲良くしているのが印象的。自分がPARADISE AIRスタッフの胃袋掴んでるのと一緒。餌付けの入れ子構造ができてた。

夕食というツールについてbi-より
ジェローム:食べるのも料理も好き。滞在者(応募してくれる人)は料理好きが多いかも。参加する人が楽しんでやってくれているから、bi-も乗っかっている。
料理・食事は「何もしない」のコンセプトの中でもなにかできる場所。毎日何時にここで食事してる、と言うと人を誘いやすい。今回もうまく回ったと感じている。

<参加者コメント>
(編注:PARADISE AIRが入居するビルの運営会社の方)
ビルオーナーとして。会社には報告が必要なので・・ここで起こったことは何なのか考えていた。
シンギュラリティを迎える未来を想像してみる。AIのおかげで人間は働かなくていい、がもはやSFではなくてリアリティがある未来になっている。
→その未来に提示されうる取り組みなのかもと思った。
働かなくても生活する人類、のイメージ。未来のライフスタイル?かも?

コメントに対してbi-より
キキ:ベルリンでAIをテーマにした展示のキュレーターから連絡があり。ワークショップをしてくれというオファーがあった。AIの枠組みで何をしていいか、まだ考えついていないけれど。まさに、と思った。


bi- 最後に

ジェローム:このトークができたこと、ありがたいと思った。みんなが話してくれたことは自分が関心を持っていることだった。
不安や疑問を抱くことは活動の中でも重要。わからないながらもウェルカムな態度をありがとう。PARADISE AIRというレジデンス施設内でできたことは学びもあり、参考になった。

キキ:Koji(Week 1レジデント)の意見をもらえてよかった、見てくれているということはありがたいし、批評は大事。
自分たち自身も不安やリスクは抱えている。その中で活動して、うまく運んで喜びにつながることもある→そのことを共有できたことに価値があったと思う。それぞれ普段の仕事にとっても活かせる経験ができた。

エンリコ:(風邪なので)このあとは休みます〜


(写真:加藤甫)

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