【しをよむ119】井上ひさし「なのだソング」——ひたすら猫の話をさせてください。

一週間に一編、詩を読んで感想など書いてみようと思います。

井上ひさし「なのだソング」

(田中和雄編『ポケット詩集』(童話社)より)

とにかく言わせてください。
猫! ねこ! ネコ!

猫が好きなので読みながらにまにましてしまいます。
韻を踏むというよりダジャレというほうがぴったりの
ユーモラスでテンポがいい語り口。

たくましくて媚びない、いやでも計算ずくで甘えてくるかもしれない、気ままな野良猫の姿です。
東京事変の「黒猫道」とも共通する、しなやかで強くて、孤高を貫くけれども可愛さが滲み出る猫。
車の下とか茂みの中からこっそりこちらを窺っている猫。

外を歩くとき、犬は散歩の時間が決まっていて「おなじみ」の顔になるのに対して、
猫は飼い猫も野良猫も自由気ままに行動していて、会えるとその日はずっと幸せです。
窓から外を眺める猫とふと目があって、「このお家、猫飼ってらしたんだ……!」と、ご近所歴数年目にして気づくこともあったり。
ちなみにその猫とは以来会えていません。よその猫はいつでも一期一会なのです……。

野良猫暮らしは危険もいっぱいで、最近では地域猫や飼い主探しなど、
猫たちが安心してぬくぬく暮らせるための活動が盛んです。
一昔前、「お店から魚を盗むドラ猫」がいたころを描く作品だと「綿の国星」が好きです。
可愛いのはもちろん、飼い猫、野良猫、そして人間の価値観や思い、プライドが繊細にそれでいて強く表現されているのです。

我らネコは誇り高く、まっすぐに、人間の情けなんて受けないのだ!
と猫背をピンと張って塀の上を歩むこの詩の猫ですが、
後半になると「ちゃっかりぬけぬけ生きるのだ」「いけしゃあしゃあと生きるのだ」と、
これまた猫らしい世渡り上手さを見せてくれます。

猫はどうあっても素晴らしく可愛い存在なのでもう、ずるいです。
実は実家でも猫を2匹飼っています。
長毛スコティッシュフォールドのお兄ちゃんと、保護猫出身の黒猫の弟。

兄猫はこの詩に語られるのとは真逆の、完全に箱入りな子です。
土を踏んだことも雨に打たれたこともなく、「人間が僕に譲るのは当然」と言いたげに床にしっぽと前脚後脚を投げ出してゴロゴロしてます。
太宰治の『お伽草子』内の「浦島さん」に、乙姫様の足の裏の描写がありますが、兄猫の肉球はまさにそんな感じです。
自分が可愛がられていることを微塵も疑わない生き方、大好きです。

弟猫のほうは走るし跳ぶしのヤンチャな子ですが、こちらも自分が可愛がられていることを微塵も疑っていません。
寒いと人間にくっついてくる甘え上手な子です。
さらにはお兄ちゃんの毛並みをモフモフしようと飛びかかっては怒られています。

対照的な2匹がお互いの良さを引き立てあっていてとても可愛いです。
書いているうちに帰省したくなってきました。

とにかく、元気な子も大人しい子も、長毛も短毛もスフィンクスみたいな無毛も、
すべての猫よ、自由で健やかで幸せでありますように。

余談ですが、最近「肉球の香り」ハンドクリームを買いました。
いろんなところで自慢しているので、ここにも書かせてください。
URL は4色セット(ピンク、オレンジ、あずき色、黒)ですが、
それぞれ単色も売られています。
指先から猫に近付きたい方はぜひ。

お読みいただき、ありがとうございました。
来週は高橋睦郎「鳩」を読みます。

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