【しをよむ100】入沢康夫「未確認飛行物体」——薬罐のかわいさに目覚めましょう。

一週間に一編、詩を読んで感想など書いてみようと思います。

入沢康夫「未確認飛行物体」

(石原千秋監修、新潮文庫編集部編
『新潮ことばの扉 教科書で出会った名詩一〇〇』より)

ついに100回め、アンソロジー一冊を読み切りました。
なんということはないですが、おめでたい気がします。

さて、『新潮ことばの扉 教科書で出会った名詩一〇〇』の最後を飾る
「未確認飛行物体」。
こういうのに弱いです。すごく好きです……。

冒頭でいきなり
「薬罐だつて、
 空を飛ばないとはかぎらない。」
ですよ。

一から十まで薬罐が健気でかわいいです。途中で差し込まれる
(でももちろん、そんなに早かないんだ)
にやられます。

何を言っているかというと、夜な夜な台所を抜け出しては砂漠まで飛んでいき、
お花に水やりをして帰ってくる薬罐の話です。
やっぱり何を言っているんだと思われる方は、ぜひこの詩を読んでください。

私が想像するに、この薬罐は日本の台所にごくありふれた、
おしりが丸くてちょっと表面に焦げがついてる、アルマイトかステンレス製の銀色の子ですね。
「せっせ、せっせ」とか「うんしょ、よいしょ」とか、一生懸命な擬態語が似合います。
SF小説「いさましいちびのトースター」を彷彿とさせるような。
トースターもそういえば火星に行っていましたね。
ちなみに「いさましいちびのトースター」の中では「互換性のある部品のありがたさです!」という一節が好きです。

薬罐は砂漠の真ん中に咲く花のことを鉱石時代に知ったのでしょうか。
それからずっと気にかけていたとすると、この子(鉱石)がお水を運んで注ぐのに適した形状になれたことにほっこりします。

なにより愛おしいのがこの詩のタイトルが「未確認飛行物体」であることですね。
確認されちゃってます。薬罐です。

余談ですが、私のPCで「みかくにんひこうぶったい」とタイプすると
UFOの絵文字「🛸」が出てきます。🛸🛸🛸
環境によってご覧いただけなかったらすみません。

さらに余談ですが、私の育った地域だとカップ焼きそばといえば U.F.O でした。
「薬罐」と「未確認飛行物体」の連想の合わせ技で食べたくなってきました。焼きそば……。

晴れた日の道端にときどきパシャっと落ちている水たまりは
飛んでいく薬罐がうっかりこぼしてしまったものなのかも……と想像すると、
それはまた楽しみが広がります。

お読みいただき、ありがとうございました。

詩を読んで好きに想像を広げたり感想や連想を語っていくのが楽しかったので、
来週以降も Season 2 として続けていくつもりです。
新しい詩集も準備済み。
次回もぜひお越しください。

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