【しをよむ099】島田陽子「うち 知ってんねん」——不器用なきみに、共感はしないよ。

一週間に一編、詩を読んで感想など書いてみようと思います。

島田陽子「うち 知ってんねん」

石原千秋監修、新潮文庫編集部編
『新潮ことばの扉 教科書で出会った名詩一〇〇』より)

大阪弁で書かれた詩。
イントネーションのイメージはありますが、生粋の話者さんに読んでもらったらどんな風になるのだろう、とちょっと興味があります。

この作品からイメージするのは「となりのトトロ」〜「ちびまる子ちゃん」くらいの、古い木造の小学校です。
掃除当番、給食のにおい、ランドセルは赤か黒。

作中に登場する「男子」に一言伝えるとすれば、
「好きな子にちょっかいをかけるのはやめておいたほうがいいよ……」ですかね。
相手が「うち 知ってんねん」と言ってるとしても、
じわじわ好感度下がっていきますからね……!
そう言ったとしても「別にあんなやつ好きじゃねーし!」と返されてしまいそうですが。

もし私が小学生だったときに同じようなことをされていたら、
「うち 知ってんねん」とは言えなかったと思います。
「好きな子につい意地悪してしまう」という現象を知っていたとしても、
我が身には置き換えられないというか、純粋に目の前の事象に腹立たしくなるというか……。

「となりのトトロ」のサツキちゃんだって、
「やーい、おまえんち、おーばけやーしきー!」の直後は「男の子きらい」ってそっぽ向いてましたからね。
わかります。
そしておばあちゃんのおはぎときゅうりとトマトととうもろこしは好きなのも、とてもよくわかります。

仲良くなったあとでの軽口やからかいはお互いに和気藹々と楽しめるものですが、
その加減やタイミングは、身をもって学んでいくしかないようです。
ということで、詩の語り手の「女子」には
「あの子に嫌なことされたら本気で怒ってやりなさい」と伝えたいです。
この子からは「せやかて、うちが怒るとよけい調子に乗るねん」と返されてしまいそうな予感がしますが。

お読みいただき、ありがとうございました。
来週は入沢康夫「未確認飛行物体」を読みます。

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