【しをよむ081】川崎洋「たんぽぽ」——たんぽぽと十回唱えるとなんだか愉快です。

一週間に一編、詩を読んで感想など書いてみようと思います。

川崎洋「たんぽぽ」

石原千秋監修、新潮文庫編集部編
『新潮ことばの扉 教科書で出会った名詩一〇〇』より)

本当は昨日「しをよむ」を更新するはずでしたが、
自作の詩を書いたことですっかり読んだ気になってしまっていました。
ということで、今回は月曜日の「しをよむ」です。

野原をのびやかに飛びこえるたんぽぽ。
おなじ茎から生えて、おなじお日さまの光を浴びて、
晴れた日に綿毛をまるくふかふかにひろげて、
いっせいに風に吹かれて飛び立つ。

ついさっきまでは一本のたんぽぽにくっついている小さな綿毛だったのに、
今ではもう種のひと粒ひと粒がそれぞれ自分が一本の「たんぽぽ」になろうと夢見ている。

みんながすくすくと芽生えて伸びていけるように、
ひと粒ひと粒の名前を呼びかけて見送る。
たぽんぽ、ぽぽんた、ぽんたぽ、ぽたぽん……。
声に出してみるとよりかわいくなるのでおすすめです。

余談ですが、ぽぽんたってたんぽぽというよりたぬきの名前みたいです。
そして私はぽんたぽが好きです。絶妙な言いにくさが癖になります。

来年の春にたんぽぽを見つけたら、「この子はあの春見送ったたぽんぽの末裔かな……」と空想してみるのも楽しそうです。

そういえば先日は、家のベランダの網戸にたんぽぽの綿毛が引っかかっていました。
あの子はきっとぽんぽたという名前でしょう。
ちょっと高く飛びすぎたぽんこつな子でしたが、どこかでしっかり根づいていますように。

お読みいただき、ありがとうございました。
来週は村野四郎「さんたんたる鮟鱇」を読みます。

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