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「ブラスバンド」本当の意味とは

今年の甲子園(第103回)は、智弁和歌山高校が21年ぶり3回目の優勝を果たした。奈良の智弁学園との兄弟校対決と話題になったが、野球応援に花であるブラスバンドの姿がなかったのは寂しい。開幕当初は学校関係者2000人まで入場OKだった。しかし甲子園球場がある兵庫県に緊急事態宣言が発令され、野球部員と指導者や家族、教職員に限定されてしまった。

ところで、この「ブラバン」という言葉はすっかり定着しているが、厳密にはこの表現は誤っている。中学や高校では、金管楽器や木管楽器などを使った部活動のことを「ブラスバンド部」と称することもあるが、ブラス(brass)とは直訳すると「真鍮(しんちゅう)」の意味だ。銅と亜鉛を混ぜ合わせた合金のことで、黄銅(おうどう)とも。五円玉が良い例だ。


つまり、ブラスバンド部とはこの「真鍮」をつかった楽器のバンドである。木管や打楽器などを含む「吹奏楽団」とは異なった意味合いを持っている。純然たるブラスバンドを強調するためにあえて「金管バンド」とすることもある。

もちろん、甲子園で応援しているのは金管だけではない。

しかし、こう呼ばれる背景としては、そもそも屋外の球場場で使用を抑えざるを得ないのが木管楽器であるということが背景にありそうだ。たとえばオーボエやファゴット、バスクラリネットなどの木管、コントラバスなどの弦楽器は基本的には屋外で演奏できない。これは炎天下で強烈な日差しにさらされたり、急な雨で濡れると楽器が金管より影響を受けやすいためだ。

話は逸れるが、日本高等学校野球連盟が使用が禁止されている楽器もある。鐘や笛、和太鼓(鼓・締太鼓)のほか、鉦(しょう)や、銅羅(どら)、鈴(りん)など、鳴り物の仏具もNG。吹奏楽ではフライパンを叩く楽曲もあるが、これらも禁止だ。次の学校との入れ替えを考慮して、吹奏楽部は楽器ケースの持ち込みが禁止されているなど、いろいろ厳しい制限がある。

応援の打楽器では通常使う大太鼓やシンバル(実は真鍮製)、カウベル、スネアドラムといった楽器は許されている。

ただし、クラリネットも、タオルを被せながら演奏している団体を見たことがある。最近ではプラ製のクラリネットも演奏されているし、実質的に金管類に入るフルート類は普通に演奏されるケースが多い。

話は戻ると、ブラバンという言葉は定着しているが、プロの団体で言えば、東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)というように「ブラスバンド」とは表記は避けている。金管楽器・木管楽器・弦楽器・打楽器が合わさったハーモニーであるから、当然といえば当然だろう。甲子園でもブラバン以外の人も演奏しているのだから、正しい表現を使いたいたいが、慣れ親しんだ呼称を帰るのはそう簡単にはいかなそうだ。

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