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P3Rをプレイした人にこそ知ってほしい、原作『ペルソナ3』の魅力

※筆者の言う「原作」とはPS2版P3およびP3Fの事を指し、『ペルソナ3ポータブル』は含みません。


前置き


『ペルソナ3リロード』は、神ゲーだ。

長い事地縛霊をやっていた厄介オタクが浄化される程に、P3Rは理想的なリメイク作だった。

より洗練されたビジュアル、美麗な2D&3Dグラフィック、ユーザビリティに配慮されたゲームデザイン、解釈一致の追加シナリオ、新要素もりもりのダンジョン、中毒性のあるバトルと音楽、不変の作品テーマ。
「こんなリメイクだったらいいな」と想像してきたものがそのままお出しされたような、非常に満足度の高いリメイク作だった。

作品カラーが青色ってUI的にも最強だと思う

筆者は古参のような面構えをしているが、実はP3ファン歴はそんなに長くない。
P3Pからペルソナに入り、あっという間にドハマりして劇場版と舞台版の円盤を買い揃え、P3DやPQをプレイし、漫画版や各種資料集や過去のペルマガもせっせと買い集め、ついにはPS2を買ってペルソナ3フェスにまで手を出した、歴だけ見れば新参と古参の中間のような人間だ。

最推しはもちろん主人公。彼に会うためにP3Pを始めたのだ。

この顔なら宿題を無くしても許されると思ってる
キタローのボケ台詞大好き
ここの制服似合い過ぎ

最推しは主人公だが、仲間達も全員大好きだ。
エピソードアイギスのせいでその愛が揺らぐ事になるが、それはまた別の話。

フフ…
俺の心はキミのためにある
コロちゅわ〜ん❤❤❤

特別課外活動部だけではなく、コミュや街の人々もP3には欠かせない存在だ。
リロードの追加要素の一つ、コミュキャラから送られてくるメールも、解釈一致の最高メッセージだった。

見事に釣られたよ
おばあちゃんっ子に刺さる
何がアレって、これがコミュランク10に上がる時の文面だという事
Y子に感情移入してしまった瞬間。N島に会いたいよな。

コミュがランクアップする日に、新規の文面でメールが送られてくる。スルーしてしまっても後日また催促のメールは来るが、その場合は汎用メッセージになってしまうので、この要素に気付かなかった人は毎日メールチェックしてみるといい。

戦闘も楽しい!(いやホントに)


『ペルソナ3リロード』は、神ゲーだ。
原作ゲームからして神ゲーだったが、リロードされてもっと美しくなり、遊びやすくなった。P3にとって余計な要素が含まれていない事もあり、筆者の中ではP3RとP3Rを作った人達の評価が鰻登りとなっている。

だが、それでも。それでもだ。

P3Rは、原作ゲームの『P3』そのものではない。P3のリメイクであってリマスターではないのだから当たり前だ。
開発エンジンやゲームハードが違うのだから、原作の表現を完全再現はできない。コストの理由からリロードでオミットされた要素も多くある。残念ではあるが、それらは仕方のない事だと受け止めている。

原作には原作の良さがあり、リロードにはリロードの良さがある。
だからこそ私は、PS2版をプレイした事がない人に向けて、「原作にはこういう要素があるよ」という記事を書いていこうと思う。
本記事を読んで原作が気になった人は、ぜひプレイしてもらいたい。17年近く昔のゲームだが、リロードでP3が深く刺さった人ならばきっとプレイして損はしないと思う。

PS2版ってそもそもなんぞや?そんなソフトがあったの?という人はまずこちらの記事をどうぞ。


原作P3のここがすごい!PS2版でしか拝めないP3の世界

※先に断っておくが、私がプレイしたのは『ペルソナ3フェス』であり、本家本元の『ペルソナ3(いわゆるP3無印)』は未プレイである。本来ならば無印をプレイした上で書くべきだろうが、フェスが無印のアッパー版であるという事で容赦してもらいたい。

武器種マルチ

PS2版限定の要素と言えばまずこれ。原作の主人公は片手剣固定ではなく、両手剣・弓・槍・拳武器・鈍器も扱えるのだ。
しかもバトルモーションや勝利モーションも武器種によって異なり、モーション自体も仲間達とは別物となっている贅沢な仕様。タルタロス探索中のアタックも射程やタイミングが変わってくるので、自分に合ったものを選べる。

しかしポータブルで女性主人公に合わせて片手剣固定にされてしまい、リロードでも武器種マルチは叶わなかった。本来の多才な主人公を拝めるのはPS2版だけである。

ミックスレイド

PS2版のミックスレイドは18種もあり、特定の2種類のペルソナを両方所持し、その内の片方を装着すれば発動できる。SP消費のため、勝利の雄叫びを持っていればハルマゲドンも連射可能の壊れ仕様だ。
ポータブルでアイテム化し、リロードでは全7種に減った上テウルギア化して連射不可能と、元がバランスブレイカーすぎたためか後発作品では大幅に弱体化を食らっている。(ただし火力だけ見ればリロードの方が圧倒的に上。)


グラフィックとエフェクト

リロードが出た事により人形劇はPS2版の特権ではなくなったが、それでも推したいのが原作のグラフィック。
リロードのCGも美しいが、PS2版にはPS2版の良さがあるのだ。

校舎内を歩き回っているだけで太陽光を感じられる
水泳部。このキラめきが青春だ
アクセショップのビー・ブルー・ヴィー。P3Rでヒーリングショップになった

窓から差し込む太陽光や、プールの水面や宝石の光の表現。これが本当に良い。
リアルすぎずローポリすぎない絶妙なグラフィックと、こだわりの感じられるエフェクト。上に張ったリロードのスクショと見比べれば分かるが、セルライクのP3Rには無いものだ。

この太陽光とWant To Be Closeが僕をP3の世界に引き戻す

独特なグラフィックとエフェクトはP4にも受け継がれたが、P3PとP5では失われてしまった。
この精巧なミニチュアのような美しい世界を自由に動き回れるのがPS2版の特権である。いつかリマスター版を出してください。

荒垣が薬を使っていた事が判明するシーン。
日陰に立つ荒垣と、日陰と日向の境目に立つ真田。PS2版はこういう表現が凄かったんだよ…。


エモい選択肢とアニメムービー、仲間の過去が判明する会話

真顔でボケたり突っ込んだりする主人公の選択肢台詞。実はPS2版とポータブル&リロード版では異なっているものがある。

筆者も全ての違いを把握している訳ではないが、とりあえずこのシーン。
「少し、よろしいでしょうか」「もうすぐ、満ち潮だね…」がポータブルで「話がある」「キレイだね」に変更されている。変更された理由は謎。
「満ち潮だね…」はメディアミックスで採用されており、原作ファンにとって印象深い台詞でもあるのだが…。


選択肢以外でもポータブル以降オミットされたテキストがある。
代表的なのが「特別なんだろ、お前!」のシーン。原作では順平が自分の父親について吐露するのだが、ポータブルとリロードではその台詞が存在しない。


P3Pハム子ルートの順平コミュで父親の話を打ち明けられるのだが、そのためにポータブルでこの台詞を削ったのか?という思いもあり…。うーん複雑。

ポータブルで台無しにされたものと言えば、最終決戦の後主人公が仲間達の元に戻ってくるシーン。
原作のエモいムービーが、ポータブルでサムい演出に改悪されてしまった場面である。

台詞とBGMが一切存在せず、キャラの表情と鐘の音のSEだけで結末をプレイヤーに伝えてくる秀逸なコンテ。
尊いという言葉は彼らのためにある。


これがポータブルでは校舎の中から主人公が現れ、仲間達が「良かったぁ〜…!」と出迎えてくる演出に変更されている。
紙芝居で表現しなければならない以上仕方ないのだろうが、なぜかリロードもポータブルと同じ演出になっている。
わざわざアニメムービーと人形劇でポータブル版を再現する理由が分からない。原作と同じ演出にした方が、人形劇とボイスの工数をカットできるだろうに。

(演出単体で見ればポータブル版もハッピーエンド感があって良いとも言えるが、私は原作のムービーが圧倒的にエモくて好き。あとこの後に記憶を失って再会するんだから会話は要らないと思う)

これ以外にもPS2版ではなくポータブル仕様になっているテキストや演出が見受けられるので、もしかしてP3Pを元にした?と疑いたくないのに疑ってしまう。だから私はポータブルが嫌いなんだよ…

大事な要素が削られていないPS2版、ぜひプレイしてみてください。

ちょっと不自由だけど、そこがいい。P3のダンジョン探索

ほとんどの人がP3のダンジョンをボロカスに貶しているが、私はタルタロスが好きだ。
不穏な色合いとBGM、不気味なシャドウ、主人公達の靴音、果てしなく伸びる塔をひたすら登る作業。もう最高だ。
ダルい、つまんない、単調すぎて眠くなると散々な言われようのタルタロスだが、私から言わせるとそこがいい。レベリング用のダンジョンに、頭を使うおもしろギミックなどは求めていないのだ。
努力に見合った報酬と適度な自由度、没入感を高めるBGMとマップ、魅力的な仲間とバトルユニットがあればいい。作業なんだから戦闘システムなんかは二の次。
(これでも十分贅沢を言っている自覚はある)

PS2版のタルタロスは画面にモヤのようなエフェクトがかかっている。ポータブルで消された要素の一つ

私の心を掴んだのは、ギミックの無い広大な自動生成マップとシャッフルタイム、無限湧きのダンジョン内アイテムだ。
稼ごうと思えばいくらでもお金を稼げるし、ソードのカードで武器も拾いまくれる神仕様。誰に止められる訳でもなく、ゲームオーバーにならない限り好きなように走り回れる。イイよこれ、こういうのを求めてたんだよ。

疲労システムというストッパーはあるにせよ、ひたすら作業としてレベリングとアイテム集めに没頭できるし、それがやりやすいようにゲームデザインされているのがP3だ。
ダンジョン内では上から見下ろす形でカメラが固定されており、ワンボタン・シームレスで宝箱を開けられる。これがぴったりはまったせいで、P4P5のダンジョンがしゃらくさくて仕方がなかった。

ぶっちゃけ、リロードでも宝箱を開ける度にカメラが切り替わるのが集中を邪魔してくる。1階ごとのエリアサイズも狭くなってしまった。
オブジェクトを破壊できるのは爽快だし、戦闘も探索もだいぶ快適になったが、なーんか違うんだよなあ…と感じてはいる。
原作と比べてアイテムザクザク感が足りないからだろうか。ソードのカードがスキルカードになってしまったし、通常宝箱から武器や大金が出てこなくなったのは残念だった。バランスブレイカーだから仕様変更は仕方ないのは理解しているが。

思えばP5のメメントスもタルかった。
タルタロスを走っていて寝落ちする人の気持ちが分かった、あそこは監獄だ。パレスに至っては二度とやりたくないレベル。

リロード版タルタロスを彷徨っていると時々出現する開けた場所。アイテムがたくさん配置されているボーナスエリア。マップデザインも異質で大好き


ここまではポータブルでもあった要素だが、PS2版はひと味違う。
原作では、仲間に直接話しかけないと装備変更やスキルでの回復が行えない。仲間キャラを一人の人間として見てもらうため、というリアリティを重視したディレクターの方針ゆえだが、これが本当に良い。

もちろん、システムとしてははっきり言って面倒くさい。P3と特別課外活動部の面々が好きじゃないとやっていられない仕様だ。
でも私はP3とS.E.E.S.が大好きなので、探索中にゆかりに話しかけて回復をお願いするのは全く苦ではない。散開中に拾ったお金をネコババされても許しちゃう。
没入感を高めてくれるこの仕様、大歓迎です。今の時代にやられたら怒るけど。

レベルアップ画面の仕様がポータブルで変わり、聞く機会が減った順平のボイス


理不尽?爽快?今とは違う歯ごたえのあるバトル

PS2版の戦闘システムは、ワンモアの仕様が今とは異なっている。

  • ダウンした相手に攻撃を加えるとダウンから立ち直る

  • 複数敵相手に全体攻撃した場合、一度にダウンさせられないとワンモアが発生しない

  • ダウンからの立ち直りに1ターン消費する

  • 味方に直接指示できない

という若干不親切な仕様。

P5以降の戦闘は、とても快適で爽快だ。だが、「雑に全体魔法や全体物理をぶっ放してバトンタッチして総攻撃」という戦闘は、裏を返せば大味とも言える。それらと比較すると、原作P3の戦闘はP5以降の戦闘とも、もちろんP4〜ポータブルの戦闘とも全く違う代物になっている。

まず、ダウンの仕様が異なるため、主人公が弱点を突かれたらそのままハメ殺しになる場合がある。そうなったら仲間にリパトラをかけてもらうよう祈るしかないが、そういう時に限って仲間への指示が「攻めに徹しろ」や「SPを節約しろ」だったりする。
一時のミスが命取りになるシビアさがめちゃくちゃ楽しい。P4以降には無かったものだ。

もちろんこちらも毎ターン敵をひっくり返して「ずっと俺のターン!」が可能だが、PS2版は魔法の命中率に難があるので、そこまで単純な戦闘にはならない。(つまり、そこが改善されたP4以降の戦闘が単純化してしまったとも言える)

攻撃が外れないよう祈って総攻撃を狙うか、敵を全員ひっくり返したらあえて総攻撃せず味方の立ち直りにターンを費やすか、プレイヤーは常に判断を迫られる。総攻撃を発生させるには敵と味方の攻撃順も重要だ。状況をチェックして、ペルソナを変えて、味方への指示も変えて…原作のリーダーはとにかくやる事が山程ある。
後述の仲間への指示も含め、とにかく頭を使うのがPS2版の戦闘なのである。シビアでハードだが、だからこそ仲間達と共に戦っている実感が高まる。RPGらしさを楽しみたいという人に全力でおすすめできるのが原作P3だ。


最初は頼りないが、ちゃんと成長する仲間達

先に述べた通り、原作では味方に直接指示ができない。
(全てAI任せだが、無印ではポンコツすぎてネタにされた。フェスで改善されたので大幅に遊びやすくなっている。)
この仲間任せの戦闘が本当におもしろい。

最初こそ選択肢は少ないが、愚者コミュのランクが上がると指示できる内容も増える。「ダウンさせろ」「後に続け」「攻めに徹しろ」など、味方のやれる事が増えていく。
プレイヤーは状況に合わせてほぼ毎ターン指示内容を変えて、味方をうまく動かしていく。忙しないのだが、なぜか不思議と楽しくてはまるのだ。

原作では、指示内容を変えると仲間がボイスつきで反応してくれる。普段ギスギスしている仲間達でも、戦闘になればこちらの指示にちゃんと応えてくれるのが嬉しい。
しかも、各キャラのボイスはペルソナが覚醒すると台詞も変わる。「しゃーねえなあ」と言いつつ従ってくれていた順平が、トリスメギストスに覚醒してからは「分かったぜ!」と力強く返事するようになるのだ。

成長する仲間達と一緒に戦っていく。この感動こそがRPGであり、原作P3でしか味わえないものだ。
不自由なのに楽しい。不自由だからこそ楽しい。絶妙なバランスで成り立っているゲームが、原作P3なのである。


重ねて言うが、原作P3が遊びにくいのは確かだ。ファストトラベル機能も無いし、グラフィックは古臭いし、夜は暇だし、ペルソナ合体は○×ゲームだし、スキルカードは無いし、色んな仕様がシビアで不親切。リンクエピソードや寮イベントのような掘り下げも足りないから、チームに絆が感じられないと思う人も多いだろう。
でも、昔の作品だからこそおもしろいのは確かだし、P3好きにはたまらないゲームだ。リロードが深く刺さった人はプレイして損はない。
間違っても劣化移植作のポータブルには手を出してはいけない。
女性主人公ルートをどうしてもやりたいなら別だけど。

あと、フェスをプレイするならエピソードアイギスには本当に気をつけた方がいい。あれは人によってはP3愛に泥をぶっかけられる劇物だから。
どうしてもプレイしたいならネットの評価をよく調べて。これはマジで言っています。


最後に、原作に不足している要素を一つ。リロードをプレイするまでは全く気にならなかったこと。

殺風景ってレベルじゃねーぞ!

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