タイトル: 風の声

小さな町の外れにある丘の上に、一軒の古い家があった。その家に住んでいるのは、70歳になるおばあさんの花子さん。花子さんは若い頃からここに住み、ずっと一人で静かな生活を送っていた。

ある日、花子さんは庭の手入れをしていると、小さな男の子が家の前に立っているのに気づいた。男の子は8歳くらいで、少し困ったような顔をしていた。

「どうしたの？」花子さんは優しく声をかけた。

「ぼく、道に迷っちゃって…」男の子は涙目になりながら答えた。

花子さんは男の子を家の中に招き入れ、温かいミルクを出してあげた。男の子の名前は翔太と言い、近くの町から来たのだという。両親と一緒にピクニックに来たが、少しの間目を離した隙に迷子になってしまったのだ。

「大丈夫よ、翔太くん。おばあさんが君をおうちに帰してあげるわ。」花子さんはにっこり笑って言った。

花子さんは翔太の手を握り、丘を下って町へ向かった。歩きながら、花子さんは翔太に色々な話をしてあげた。昔話や、自分の若い頃の冒険の話。翔太はその話にすっかり夢中になり、恐怖心を忘れていった。

やがて、二人は翔太の家にたどり着いた。両親は心配していたが、花子さんが翔太を無事に連れてきてくれたことに感謝し、何度もお礼を言った。

「また、いつでも遊びに来てね。」花子さんは翔太に微笑みかけた。

「うん、ありがとう、おばあさん！」翔太は元気よく答えた。

その日から、翔太は花子さんの家によく遊びに行くようになった。二人は孫と祖母のような関係になり、翔太は花子さんからたくさんのことを学んだ。

季節が巡り、翔太が大人になったとき、花子さんは静かに眠りについた。しかし、翔太の心の中には花子さんとの思い出がいつまでも生き続けていた。

風が吹くたびに、翔太はその声の中に花子さんの優しい声を感じた。そして、そのたびに元気をもらい、どんな困難にも立ち向かう勇気を得たのだった。

この短編小説があなたの心を少しでも温かくし、元気を与えることができれば嬉しいです。