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メタマッスル

メタバースが隆盛になってしばらく経った時代。みんな運動しなくなり、不健康体質になりどんどん医療費もかさんできた。また、電気もじゃんじゃん使うから持続可能な世界構築とは程遠い世の中になってしまった。それをみかねた保健省が規制にのりだす。

もうすでにメタバースに慣れきってしまった日常では、「メタバース禁止」にはできない。そこで、利用はいいが、体力をつかうようにお達しが出された。例えば、軽くジョギングしながら、操作をするようなことだ。心拍計をつけてある程度以上の心拍数でないと利用が制限される。また、マウスがやたらと重く、キーボードも軽くタッチしたぐらいでは押せないようにしてある。ちょっとでも体力を使わせようとする方針だ。イスにもドカっと座ったままにするのではなく、ときどきは、いわゆる「空気椅子」のように中腰やスクワットしながら操作する。

もちろん、こんな小手先の体力消耗では全然効果があらわれない。さらに、電力がひっ迫している問題にも解決の糸口を探した。たとえば、自家発電。みんな自転車みたいなのを漕いで発電する。使わない分は蓄電し、次の機会に使う。食事のときも体力を使うように要請が出された。炊飯器でご飯を炊くときも自家発電。強火で炒め物するときも自家発電。エアコンもそうだ。夏、暑いのにクーラーで冷房する際にも、まずは汗だくになりながら発電するしかない。汗を流そうとシャワーするにも、まずは汗水たらして発電しないとお湯にならない。本末転倒のような、、。最初は、みんな、かなりしんどいと不満をいっていたが、少しすると発電にも慣れ、健康にもなり、この日常が浸透してきた。

当局はこの機を逃すまいと家の中だけでなくさまざまなところでも発電させようと手をひろげた。例えば、葬儀まで省エネ。喪服は禁止。みんなジャージ姿でいろいろな方法で発電して火葬する。生焼けはみんないやだから一生懸命に発電する。広い通りの横断歩道では、ただ歩くだけでなく、みんなスキップして横断する。飛び跳ねることにより、振動発電しているのだ。公園では、回す遊具で発電し、夜の照明に利用。町中が発電システムにあふれてきた。

近未来では、ボタンを押すだけで生活できるようになるだろう、ということで、進化の果てに人間は指1本だけになるかとおもいきや、自分で発電できる電気ウナギ人間みたいな進化を遂げるのではないだろうか。

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