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「VRChatユーザーの睡眠に関する調査」の集計結果

0.はじめに


オズワルドと申します。VRChatは2020年6月に始めたので、プレイ歴は2年とちょっとになります。現在は主にショタホストクラブ「カムパネルラ」のキャストをしたり、「バーチャル懺悔空間 The Entrance」というトークイベントを開いたりして遊んでいます(これはダイレクトマーケティングです)

わたしです

今回2022年8月31日から9月7日までの7日間で、VRChatユーザーの睡眠について、Googleフォームを用いたアンケート調査を行いました。このような調査を行った理由としては、単純に「VRChatter夜中までログインしてる人多い...…みんな眠れてるのかな」という素朴な疑問があったからです。簡潔に答えられるように項目数をなるべく絞り、睡眠については「アテネ不眠尺度」という評価尺度を用いることで不眠症の大まかなスクリーニングを行いました。
今回は、ほとんど生データをお示しするだけの硬い内容になりますが、何かのご参考になれば幸いです。今後データを解釈して新たに分かったことがあれば発信していきたいと思いますのでよろしくお願いします。

1. 母集団


・総回答者は231名だった。
・VRChatをプレイする頻度としては「毎日」は全体の46%と最も多かった。
・「週4-6回」は28%、「週2-3回」は20%、「週1回」「たまに(週1回未満)」は3%だった。

・VRChatの1日あたりのプレイ時間としては「2-4時間程度」が全体の45%と最も多かった。
・「4時間以上」は41%、「1-2時間程度」は13%、「1時間以下」は1票であった。

・総プレイ時間の中央値は1600時間, 平均値は2726時間だった。

2. VR睡眠について


・VR睡眠について「したことがない」「したことがあるが、定期的にはしない」を選んだ人数は115名、「たまにする」「ほぼ毎日する」「毎日する」を選んだ人数は116名であった。

3. アテネ不眠尺度(AIS)


・本調査ではアテネ不眠尺度(AIS)を用いて不眠症のスクリーニングを行った。5-12番目の質問がそれに該当する。個々の選択肢に付記された数字を合計したものが得点となる。カットオフ値は6点である。
・99名(43%)が6点以上で、不眠症の疑いありとなった。あくまでスクリーニングのための検査であり、不眠症の診断が必ず付くか/治療が必要かどうかなどは分からず、疑いレベルに留まることは留意すべきである。また同様に、「6点未満=不眠症ではない」という訳ではなく、不眠症の人も混じっている可能性はある。

4. カイ二乗検定


・VR睡眠と不眠の大まかな関連性を調べるため、カイ二乗検定を行った。
・全体から4番目の質問(VR睡眠)において「たまにする」「ほぼ毎日する」「毎日する」を選択した者を「VR睡眠あり」群とした。「したことがない」「したことがあるが、定期的にはしない」を選択した者を「VR睡眠なし」群とした。
・アテネ不眠尺度(AIS)において6点未満の者と6点以上の者を2群に分けた。
・前述の通り、アテネ不眠尺度自体は不眠症の「スクリーニング」に用いられる検査であり、6点以上であることがただちに不眠症を意味するわけではない(あくまで疑いに留まる)ことに留意する必要はある。
・帰無仮説を「VR睡眠の有無と不眠症の疑い(AIS≧6)の有無には関係がない」と設定した。
・p値はExcelのCHISQ.DIST.RT関数を用いて求めた。



・X二乗値は4.207871064で、p値は0.040236806436 であった。
・p値<0.05であり、帰無仮説は棄却された。
・今回の検定では対立仮説「VR睡眠の有無と不眠症の疑いの有無には関係がある」が採択された。

5.ご意見


・アテネ不眠尺度の質問1「寝床についてから実際に寝るまで、時間がかかりましたか?」において、「いつもと変わらない」という選択肢が欲しかったというご意見を多数いただいた。0点の選択肢は「いつもより寝つきは良い」であった。
・本調査ではアテネ不眠尺度を使用するにあたり、インターネット上で得られた訳文を採用しており、妥当性が保証された訳文が使用されたバージョンではなかった。一般的に使用されるバージョンの訳文では、質問1における0点の選択肢は「いつも寝つきは良い」であった。また英語版の質問1は「SLEEP INDUCTION (time it takes you to fall asleep after turning-off the lights)」で、0点の選択肢は「No problem」であった。
・以上の点より、実際に寝るまで時間がかかっていない人は0点の選択肢を選べばいいものと思われる。いずれにせよ今回の調査においては本来、妥当性が保証された訳文を使用するべきであった。
・本調査では、VR睡眠に関する質問の直後に睡眠に関する質問(=アテネ不眠尺度)が連続するという構成上、「睡眠に関する質問は、VR睡眠をした時のことを答えるべきなのか、いつもの睡眠のことを答えるべきなのか分からなかった」というご意見があった。意図としてはVR睡眠に限定せず一般的な睡眠について回答して頂きたかったが、分かりづらい部分もあり、説明を丁寧に記載すべきであった。

6. 今後の展望


・VRChatユーザーの睡眠について調査を行い、予想よりはるかに多くの方にご参加いただいた。検定の結果、VR睡眠の有用性が示唆されるとも解釈できる結果が得られた。
・本調査は完全に匿名で実施した調査である。Googleアカウントにより複数投票を制限する処置は取ったが、複数アカウントを所持している人物が投票を複数回行うことを抑止することはできず、データの信頼性については客観的に担保されているとは言えない。このため今回のデータを論文、発表などに用いる予定は現時点ではない。
・本調査について、これまでに記載した内容以外にも改善すべき点は多く、設問内容、選択肢を一新した調査を再度実施することを検討している。その際は正式に倫理委員会の承認を得て、筆者の所属を明記したうえで調査を行う予定である。

(2022/10/18 追記)
コメント欄にて質問があった内容について追加で解析を行いました。

・アテネ不眠尺度において、カットオフ値を4点以上とした場合どのような結果が得られるか
アテネ不眠尺度では合計点が4点以上の場合「不眠症の疑いが少しあり」6点以上の場合「不眠症の疑いがあり」と基準値を設定されることが多い。今回の調査では参加者を6点以上の群と5点以下の2群に分けて解析を行ったが、もし参加者を4点以上の群と3点以下の2群に分けた場合、どのような結果が得られるか検証した。


・p値<0.05であり、帰無仮説は棄却された。
・対立仮説「VR睡眠の有無と不眠症の疑いの有無には関係がある」が採択された。


・プレイ時間とAISの関係について
散布図を作成した。また、説明変数をプレイ時間、目的変数をAISの合計点として単回帰分析を用いて、プレイ時間とAISの関係について確認した。

・p値は0.310909で0.05より大きかった。
・プレイ時間はAISの合計点と関係がないと考えられる。

今後種々の仮説を考え、解析を継続していく予定です。
何かご質問ご意見などあればコメント欄にご記載ください。

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