見出し画像

公立の専門高校(実業高校)の現状と課題

 私の担当教科は主要5教科以外の専門教科(工業)です。

地域にもよるが、全国的に専門高校は人気がない

 私の住んでいる地域では、普通科進学校が一番人気です。よって、専門高校には、一般的な高校入試での点数はあまり高くない生徒が入学してきます。高校入試のあり方がどうということもあると思いますが、ここでは書かないことにします。専門高校の人気の地域差は、地場産業の強さによるような気がします。

 専門高校はあまり学習が得意でない生徒が多くなってきているのが、私の住んでいる地域の現状です。また専門教科の内容というのは、はっきりいって簡単ではありません。特に私の担当教科である工業は、これまで学習が得意でなかった生徒にとっては、計算式一つとってみても容易なものは少ないです。学習する内容と、生徒の学習の力がますます乖離していって、授業を進めていくのが年を重ねるごとに困難になってきている感じがします。

 いわゆるテストの点数が取れれば良いとは全く思っていませんが、中学校までに学ぶということを苦手としてきた生徒は、何事にも意欲が低めです。やる気スイッチを探して入れたいのですが、小学校中学校からの習慣を変えるのは容易ではありません。

 学校を選ぶときに、「家から近いから」、「入りやすそうだったから」、「中学校の先生に言われたから」、などという理由も実際は多く、実は専門の教科に興味がないという生徒もいます。理由はどうあれ、せっかく選んできてくれたのだから、高校3年間で専門の知識や技能を身に付けていってほしいという気持ちで授業や学校行事をしますが、ほとんどの場合いつも片思いです。
 もちろん意欲的な生徒もいて、もっと多様な体験をして、知識・技能や社会を生き抜くための力を伸ばしてあげたいのですが、学ぶ意欲の乏しい生徒に目が向きがちで申し訳ない気持ちです。

多くの中学校の先生は普通科高校出身なので、専門高校のことを良く知らない

 中学校の先生は、高校への進学指導をするわけですが、先生自身は基本的には高校は普通科を卒業し、大学へ行き、教員免許を取得し、現在に至ります。専門高校がどのようなところで、卒業生がどのような社会生活を送っているか十分に把握できていないのが現状で、これがなんとかならないのかなと思っています。

専門高校から輩出される若者

 多くの卒業生は、社会構造でいうところの縁の下の力持ち的な部分の仕事には就いていると思います。いろんな方にお話を聞きますが、高卒と大卒では昇進のルートが違うような昔ながらのスタイルの企業もあれば、そうでない企業もあります。前向きな若者そのものを評価してくれる後者のような企業が増えてほしいと思っています。

 
進学する生徒の多くは専門学校です。名の知れた大学にも、専門高校枠がある場合がありますが、工業なら工業の専門のことが好きで在学中に多くのことにチャレンジをして実績を残し、大学でもさらに学びたいという意欲的な生徒しか受からないと思います。また受かった後、大学では普通科進学校で学んできた生徒と横並びで学ぶので、普通教科の科目のが授業時間がそもそも少ない専門高校の生徒は、大学の授業で苦労をするようです。

専門高校卒の生涯年収について

 高卒、大卒という分類は個人的にあまり好きではないのですが、現実的な話だと、生涯年収なんていうデータがあって、高卒より大卒のほうが多いというのが一般的な見方です。しかし、大企業の高卒枠というのは、大卒と昇進ルートこそ違うかもしれませんが、休みが取りやすいなど福利厚生は大卒と同じで、生涯年収も中小企業の大卒より高いと言われています。専門高校には、大企業の高卒枠へのルートがある場合があります。年収面だけで見ると、このルートはアリな選択肢かなと思います。

 専門高校卒で地元企業に就職する生徒も多いですが、高卒の求人票を見る限り、収入は都市部の企業に比べると確かに低く、娯楽やモノはあふれていませんが、自然いっぱいで豊かな暮らしをしているように思います。

#教育 #教員 #現職教員 #専門高校 #教師のバトン

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?