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いつの日か還る場所
海がこんなにも好きだったなんて
生まれ育った福岡市に住んでいた頃、海とは距離がある生活だった
地理的な距離というよりも、精神的距離の方が遥かに大きかった気がする
海に近づくことが少しばかり怖かったような気もしなくもない
あの頃の私には海は大きすぎて、そして、全てを一飲みにしてしまう底知れぬ強さが私を少しだけ緊張させた
だが、ここオーストラリアに住み着いて以来、私は海の虜として生きている
私の全てを投げ出すと、何の躊躇なく私の全てを飲み込んでくれるであろう海
そんな思いを胸に訪れた夕暮れの海岸
いつの日か還る場所を愛でているような感覚が押し寄せては消える
未知の世界のような、でも少し懐かしくもあるような
どうやら私は、そんな海の深みにはまってしまったらしい。