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尾瀬のミニ観察~第6回~

 前回は、「ニッコウキスゲ」を紹介しましたが、今回は「ウメバチソウ」についてご紹介します。

(6)「ウメバチソウ」

 秋、星のように点々と咲く白い花。その5枚の花弁に囲まれて、黄色く小さい粒々がいくつも光っている。「おー蜜がこんなに」と思って触れても、粘らないし取れることもない。これは蜜に見せかけた偽物なのだ。この粒々を支える細い柄は、緑色の手のひら状のところに集まっている。ルーペで見ると、その手のひらに透明な液が盛り上がっている。それが本当の蜜なのだ。
 花は粒々で昆虫を騙したのではない。我々も食堂のサンプルを見て、誘い込まれるではないか。

筆者紹介
田中 肇(たなか はじめ)
フラワーエコロジスト
専門は花生態学
著書は「花と昆虫がつくる自然」(保育社 尾瀬の花の生態を多く取上げた)、「花の顔」(山と渓谷社)ほか多数

(2009年9月発行「はるかな尾瀬」より抜粋)

次回は、「ザゼンソウ」についてご紹介します!