CPM 日常コミュニケーション遂行度測定 (3)ー 適用の実際(事例1)

日常コミュニケーション遂行度測定は,構音障害のある人のふだんのコミュニケーションを,会話了解度(comprehensibility)という尺度を用いて共有し,障害の軽減に向けて協働していくための手段です.

ここでは,その適用の実際について紹介します.

事例1 

事例1は,失調性構音障害(dysarthria)がある70歳代の女性です.
言語聴覚士(ST)が評定した会話明瞭度は5段階中のレベル2(時々分からない言葉がある)でした.

次の表は,会話相手(夫)と,ご本人による会話了解度,満足度の評定結果です(了解度(高):「よく伝わったとき」,了解度(低):「あまり伝わらなかったとき」).

事例1

両者の評定値は,了解度,満足度ともにほぼ一致していました.

了解度(低)を「7」とした理由として,本人は発音の不明瞭さ(子音,母音の歪みや弱音化,長音,促音の短縮化)を挙げました.

一方,会話相手は,発音の不正確さのために分かりにくいこともあるが,「主語などを省略して話す」ことがあり,話題を理解するのに時間がかかることを挙げ,話の内容の「伝え方」の影響が大きいと考えていました.

会話相手が,本人の満足度を推測して「7」と評定した理由は,「本人が実際以上に伝わっていないと思い,ストレス,自信のなさを感じている」ためとのことでした.
そのため,会話相手からご本人に対して,「ほぼ伝わっているから,あまり気にしなくていい」と伝えているとのことでした.

このほか,会話相手へのインタビューを通して,STとの練習場面では,ほとんど認められなかった「発話の不自然な途切れ」(「〜は」,「〜を」の後などの意味の句切れ目ではないところで,急にことばが中断されたり,息継ぎが挿入される)が日常場面ではみられることが分かり,それが了解度を低下させている可能性も示唆されました.

普段の会話において,主語を省略して話すことがある点は,ご本人も心当たりがあるとのことでした.
担当言語聴覚士から,ご本人に,ふだん話す際に,主語など,大事な情報をなるべく省略しないで言うこと,これから話そうとする内容について,相手に簡潔に伝えてから話しを始めると伝わりやすいこと,話している途中で息が途切れないように,適切なタイミングで息継ぎすることなどを助言しました.

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