「あら、おかえり。おはようございます、昨日の夜は少し残念だったわ。」と大泉に意地悪な人という目を投げかけながらビジネスカードを手渡してきた。
「ありがとう。こちらから連絡とることがあるかですが、上海に行く時には連絡します。」と大泉も少し残念だったかと後悔しながら、ビジネスカードを受け取る。そこには、携帯番号とメールアドレスに加えて、直筆で、『明後日の夜、上海で待つ。電話ください」と書かれていた。
何も言わず、会釈だけする大泉を残し、ちゅーさんは自分で運転するメルセデスに乗り込み走り去っていった。その後、すぐにハイヤーが到着、大泉は乗り込み東京品川のマリオットまでお願いした。今日は、会社には出ず、ホテルで仕事をする予定にしていた。これまでのことを振り返り
整理して次のアクションを考える必要があるからだった。車の窓を流れる熱海の海を眺めていると運転手が珍しく声をかけてきた。
「なぜ、昨夜、取り込まれなかった。もし取り込まれていれば、親密な関係ができて、動きやすくなるのに」とミラー越しに見えるのは例のCIAだった。大泉は何も言わず窓に目を向けたが、内心どうしたものかと悩んだ。続けて例の男は言った。
「明後日は、おそらく最後のチャンスだ。しっかり取り込まれてくれ。後のフォローは心配しなくていい。必ず私たちが守るから」と言われて大泉は質問した。
「一体、竹村社長の動向を探ることがどれだけ重要なのか、やはり、分からない。もっと詳しく教えてくれないか」と言い終わると、座席の前のディスプレーに画像が映しだされた。
そこには、尖閣諸島や日本海の海底資源および北朝鮮と中国との軍事協力に対して竹村がいろいろ関わっていることが記されていた。官房長官と結託して、私財を増やすがけでなく、日本の国益および国家の安全を脅かすことに加担していることが告げられていた。
特に、安倍首相が靖国参拝をするようにしむけたのは、竹村社長と官房長官であり、そのタイミングで中国内で大きな日本パッシングが起きるように仕組んだのも、竹村社長とちゅーさんだったと書かれている。しかし、まだ確たる証拠がなく、とかめることができないし、日本の公安に任せていては自体は悪化するばかりなので、CIAが動きだしていたのだった。
これを見て大泉は、自分の関わっていることがこれほど大きなことだとは、むしろ知りたくなかった。大泉は少し後悔しながらも、次の手順を考え始めていた。
「家族の安全は絶対だぞ。なら、やるよ」とだけ言って大泉は目をつぶり思考にふけることにした。深呼吸をすると不思議と落ち着き覚悟が決まったことが自分でも感じることができた。
上海に降り立った大泉は、まず、上海支社で斎藤支社長に会い、そして、少し事務処理をした後、夕方には、ちゅーさんに会うために、電話で会食のアポイントを入れた。
明日は竹村社長が上海に来るので、その事前準備ということで、上海に降り立った大泉は、すでに、ちゅーさんとの関係を深める覚悟ができていた。ご指定の中華料理店に出向くと、個室のなかではすでにちゅーさんが、真っ赤な薔薇が刺繍された黒のチャイナドレスに身を包み、自慢の豊満なボディを強調して大泉をまっていた。
「こんばんは、またお会いできてうれしいは。しかも、大泉さんからのお誘いですから。なお嬉しくて、ほら、チャイナドレスを新調しました。」と、挨拶しながら、くるりと一周からだを回転させて、ヒップも自慢と言いたげに、身体の全身から、フェロモンを放出していた。
「いや、これは素敵だ。本当、熱海の時よりもチャーミングですね。」と満面の笑みを浮かべ、内心、あーどうしたものかと少し悩みながら、ちゅーさんにちかより、軽く、ボディを抱きかかえるように包容的な挨拶をして、自分の席に落ち着いたが、その時にはすでに 大泉の心の中の男性が最後まで行く決意をしているのは自分でもよく分かっていた。
料理が運び始めたので、まずは、ビールで乾杯。そして、上海ガニがでてきたところで、珍しく、大泉は中国のワインをたのんだ。これはきついので、ダメかもと大泉は内心思いながら、全身を取り込まれてしまう覚悟で、ちゅーさんと親密度を上げる努力をしていた。個室には2つのドアがあり、一つは入ってきたものだったし、料理を運ぶにも使われていた。
はじめは隣の部屋と繋がっているだけかと思いきや、そういえば、方向が少しおかしい。と思っているとちゅーさんが、面白いものをお見せするはと立ち上がり、そのもう一つのドアを開けて、大泉にドアの向こうを見せた。そこはようは個室のカラオケボックスで、壁に大きなスクリーンがあり、よく見ると、シミュレーションゴルフも楽しめる作りになっている。
「これはいい。ゴルフもできるし、」と大泉はうれしくてしょうがないという振りをして、中に入っていった。続いてちゅーさんも入って、客室がかりが飲みものと食事をそのボックス室のテーブルにならべはじめた。今度は個室も暗い個室で、しかも二人がけのゆったりとしたソファーに二人で寄り添いながら、食事と会話を楽しみ始めた。完全にふたりだけの世界が出来上がり、しかも、少し立って気がついたが、こちらから呼ばないかぎり客室がかりは決して入ってこないようだった。
「ねえ、大泉さん。今回はいいのかしら。」と言いながらちゅーさんは、大泉の太ももの内側に手をはわせながら、豊満な胸を大泉の胸元に押し付けてきた。前は逃げたが、今度は大泉もちゅーさんにもたれかかり、唇を会わせるまで演じていた。いや、求めていた。
「あら、うれしい。じゃ、今日はゆっくりしましょうね。」と今度は乙女のような反応をわざとか、ちゅーさんは大泉に返していたが、これで完全に大泉はノッウアウト。もうどうでも良くなっていた。ようは、罠に結局はまり込んだことになる。
この部屋は、防音になっているらしく、外の音は全く聞こえない。中からの音も漏れてないはず。大泉は、欲望と目的の交差した感情で、チューさんとのひと時を楽しい出していた。
チャイナドレスのバックのファスナーを一気におろし、ノーブラでスベスベの背中を露出させた。そして、肩からドレスをずらし、豊満なバストのトップにそれすがひっかった状態で大泉の右手がチューさんのスベスベの背中に軽く触れるかどうかの圧力で、上下に滑らかに滑っていた。チューさんの口元から、「あ・」というと息が少し漏れているのが大泉んもわかった。大泉の右手は上下運動を繰り返し、、時には爪を立てて、傷つけない程度にスクラッチも織り交ぜ、時には、横に移動して脇を愛撫ぶ、そして、豊かなバストのサイドの膨らみと柔らかさを堪能していた。左の手の指は、シャイなドレスのスリットから太ももを滑り、そして、足の付け根を経て、秘部に到達していた。すでにそこは、泉のごとく、湧き上がっていた。
親密になるに連れて、大泉のだんだんだいたんになって来ていた。昨夜、ちゅーさんとのひと時の後、ホテルに戻ると例のCIAの男が待っていた。
「おめどとう。大泉さん。第一関門はクリアー、次のステップに進みましょう。
このプラグをちゅーさんの携帯、iPhoneですけど、差し込んでください。そうすれば、彼女の携帯の位置や会話、メイルブラウジング、すべての情報をモニターすることができます。プラグを指して10秒でかんりょうしますから。」
プラグを受け取った大泉はどうしたものかと考えこんだが、時が解決するだろうとくよくよするをやめて、ブランデーを飲んですぐに寝たのだった。
上海支社の役員室のソファーで会話をしながらお互いの体をまさぐり合う二人。どうにもお互い、セーブすることができなく、欲望が止まらなず、どんどん過激になっている。外から見えないと言われても、見られているような感覚が、なお一層、快感を増長していた。ここでは服を脱具のはまずいので着たままで、チューさんのパンティをずらし、大泉もずぼんの前のチャックを上げた状態で、挿入していた。これがまた、チューさんの奥まで入ることができないことが幸いして、二人ののかんどを高める結果となっていた。10分程度で二人とも絶頂を迎え、満足すつ頃ができた。
ちゅーさんが居ずまいをただしてドレスルームに行った隙に大泉はちゅーさんのポーチから携帯を取り出してプラグを差し込んで様子を見た。10秒程度で完了しすぐに携帯をポーチに戻したが、うまく行ったのかは良くわからない。
昨日の余韻を残すことなく、竹村社長を空港で迎えたあと、支社の会議室で、社長、支社長、ちゅうーさんと大泉は、中国での食糧調達状況の確認と今後の拡大策について議論していた。大泉は昨夜のことが気になり、途中、ちゅうーさんをちらりと見るが、素知らぬふりなので、会議に集中するようにした。
中国からの調達額45億円は、当社の中では15%程度でアメリカからの調達額35%に対し、まだ大きな差があると竹村社長が主張し、今後の3年間で倍の90億円以上の調達を中国からの行う、その際、売り上げ増にならない場合には、アメリカや他の地域からの、調達を縮小する方向で考える。上海支社、ちゅーさんと連携して本社は大泉が責任者とすることが決定した。
大泉は、植物工場の拡張の件で、どの幹部にお願い、ようは、賄賂を渡せば良いのか、ちゅーさんと相談するため、二人で役員室に閉じこもっていた。不思議なことに、役員室の扉は外から開けるには、暗証番号が必要でかつ、廊下から見ると壁しかないが、中からは外を見れるようになっていた。
「ね、大泉さん、知ってます。外の景色見えるけど、外からは見えないのよ。」とちゅうーさんがソファーで大泉の横に座りながら話し始めた。
「そうですね、廊下からは役員室の中は見えませんでしたですね。」と大泉。
「ちがうの。屋外もそうよ。この外の景色もそうで、外からはこの部屋の中は見えないのよ。」とちゅーさんは、上海の摩天楼の方を促しながら、大泉に体を寄せながら、話を続けた。大泉の腕に、また、ちゅーさんの豊満ボディーが感じられ、鼓動が早くなる大泉だった。
上海支社にて、植物工場の拡張計画の進め方をちゅーさんと相談し、3人の中国高官に賄賂を渡すことを決めて、大泉は少し早くホテルの部屋に戻ると、1台のiPhoneがテーブルにおかれていた。眺めていると着信コールがなったので、爆発しないだろうなと思いつつ、手に取ってみると、陰の男と発信者が誰かを示していた。CIA。とすぐ気づき、会話を開始すると、ちゅーさんの携帯からの情報が入るようになったこと。それから、今後の連絡はこのiPhoneで行うことを告げて、ぶつっと、会話は切れた。
大泉は、植物工場の拡張のための資材や人の手配をするように、ドクター・チャンに詳細計画の作成含め指示するメイルを送信し、次に、ちゅーさんからの着信メイルを確認していた。
『大泉さん。ちゅーです。また会いたいですね。上海の商業関連部署の長と植物工場周辺の地区を管理する高官と商人の3名について、すべてアポがとれましたので、順番にお願い説明にいってきます。』
とメイルには書かれている。結局、悪巧みにのめり込む自分を冷静に見つめる一人と、どうしょうもないと思う自分が頭の中でいったりきたり。大泉は、この状況を楽しんでいる自分に気がつき、スパイの醍醐味てこういうことかと思いながらも、しかし、大泉は真面目に、竹村社長の謎を解き明かし、事件の全容を明らかにしたいと強く思っていた。
食糧の安全と確保は日本の国家、国民にとって最重要優先事項であり、その一翼を担い、そして、一攫千金を狙う当社と従業員にとっても、大切な取り組みになる。私も一度は葬りされらそうになったが、ここで、何とか持ち直して、わくわくする生活が送れるようになってきた。
明日は、ドクター・チャンに会いにいこう。アポイントメントはないが、担当重役である以上、いつ行ってもいいだろう。仕掛けられた罠を見落とさず、慎重に調査しないといけない。でないと、命をおとすだろう。ここは中国だ。
ドクター・チャンの指揮する植物工場はまだまだ広大な敷地が開いていた。今の生産量を3倍に増やすには、土地は十分だったが、工場建設許可と中国人労働者の確保が課題だった。ちゅーさんが考えた賄賂作戦が上手く行けば、すぐに増設作業に入れるが、今回は難しいかもしれないと大泉は感じていた。そでの下もかなり積まないといけないだろう。
上海からすぐのところにある植物工場に来ている大泉。
「大泉さん。お久しぶりです。どうやら、勝ったようですね。この間お会いした時は、私、心配してました」とオフィースでドクター・チャンは大泉を迎え入れながら、うれしそうに笑いなが話していた。
「いや。それはもういいんです。今は竹村社長と一緒に、この工場を拡張して、中国からの食糧調達をどうやって増やしていくか。それが私のミッションなのです」と大泉も自信ありげに受け答えしていた。
一通り計画を説明した大泉は、ドクター・チャンがどのように実行するかを聞きたいと思ったが、なかなか話始めない。その原因は何かと考えながら、様子を見る大泉。内心、いらいらしてきていた。ここからが勝負。どこまで、竹村社長の協力者なのか見極める必要があった。そして、裏切り者である証拠を探し出す必要があるがどうしたものか、それが今の関心事だった。
大泉の説明の後、少し、自分のデスクでパソコンをいじりながら、静かに考えていたドクター・チャンがようやく話し始めるのに、10分以上かかっていた。
「大泉さん。大きな計画ですね。土地はありますが、建設の許認可が得られるか。また、労働力を確保できるかです。しかし、許認可が一番の障害と言われてましたが、そうではないです。私が考えるに、建設のための資材調達が問題です。実は、この植物工場には特殊な土を使っているのです、モンゴルから鉱石のある成分を含んだものを取り入れ、それを工場内のプレ処理エリアで肥料や科学成分といろいろ調整して使います。しかし、そのモンゴルからの土が最近入手できなくなってきており、その成分調整に四苦八苦しています。今回の増設には、相当な量の土を用意する必要がありますので、その対策を考える必要があります。」とドクター・チャンは大泉に説明し、今日はここまでで、夜の食事をセットして、二人は別れた。別れ際、ドクター・チャンは何となく、寂しそうで、しかし、申し訳なさそうな仕草をしていた。
役員用の執務室に入ると、大泉は、ドクター・チャンがさっき言ったことを竹村社長にメイルで簡単に報告した。すると、いきなり、メイルが返信されてきて、モンゴルからの土がどれくらい確保できるのか、正確に知りたいので調べるようにとのことだった。従来の植物工場と違い、ここは肥料と化学成分を調整し、植物の成長を促進するとともに栄養価が高く育つように設計したのだった。そのためにモンゴルの土が良いことを見つけたのはドクター・チャンだった。仕方がないので大泉は、ドクター・チャンに竹村社長からの指示をメイルで伝え、明日、詳細を知りたいことを付け加えた。
メイルを打ち終わり、今後の行動計画について、モレスキン手帳にメモを取りながら考え始める大泉。いつも見に付けているCIAから渡された携帯にメイルが着信したことを告げる2回に振動があることを感じてので、携帯を取り出し、メイルをチェックすると、どうも、ちゅーさんの携帯に竹村社長からのメイル着信の頻度がこの10分間に急増。その中に、大泉がモンゴルの件に関与し出すので少し注意することと書かれている。確信に近づいていることをにおわせるので、そのまま任務継続するようにと書かれていた。
大泉にとっては、なんのことかさっぱりという感じだった。なにせ、モンゴルの土がどうなのか、さっぱり分からなかった。工場立ち上げ時に一度モンゴルにドクター・チャンに同行していったものの、地酒を飲んで、のんびりしたことしか思い出せなかった。
少し考え事していると、ドクター・チャンが大泉の部屋にやってきた。すでに手には2本のビール瓶がもたれていた。
「や、大泉さん、せっかくですから、上海ビールを飲んでください。少しゆっくりとお話しましょう。」と役員室のソファーに座るドクター・チャン。それを受けて、デスクからソファーに移り、瓶を一つ手渡してもらい、正面に腰をかけながら、笑顔でドクター・チャンに話しかける大泉。
「ありがとうございます。ドクター・チャン。少しお話したいと思っていたところでした。先ほどメイルしたように、竹村社長から揉んどるの土の調達可能量を見積もるようにとの指示があり、どうしたものかと考えてました。」と大泉は、さっき受け取った上海ビールを一口飲んでから、話し始めていた。
「そうですか。モンゴルからの土の買い付けは、直接工場の調達部が仕切ってます。先ほど、調達予測を出すようにお願いしました。ただ、状況を確認する必要があるので、明後日までかかると思います。」と当然と言いたげにドクター・チャンも一口のんで、応えた。
それを受けて、しばらく黙りこんで、ビールを味わう二人。大泉はふと気になることを聞いてみた。
「モンゴルの土には特殊な鉱物が含まれているとか言われてましたね。立ち上げ時にはそんなことがあったかどうか、思い出せないんですけど、何の鉱物ですか?」と探りを入れているのではなく、単純に疑問がうかんだように何となく聞いているフリをした。
「大泉さん。炭素、それに亜鉛や鉄分が少し多い鉱物なんですが、その塊の中にマグネシウムも含んでいて、肥料成分などとうまく会わせれば、豊かな壌土になるんですよ。そのバランスが絶妙でした。ここの植物にあっているようです。ただ、実は、何故あの成分でこれだけ成長がよく、栄養価の高い植物ができるのかは、まだわかってないのです。そこが問題で、結局、別の地域の土を使うと成長率も変わる。こまった門です。」とドクター・チャンは説明した。そんなことは聞いたことはなかったが、ドクター・チャンが言うのだからどうなんだろう。
「そうですか。じゃ、増設計画と土の調達を上手くバランスさせないと、立てたはいいが、出荷量は変わる可能性があるわけですね。日本の仙台の工場は、ここからの食糧が原料になっていて、凄く成績がいいので、なんとかしたいですね。」と大泉はドクター・チャンの説明に納得したことを強調しながら、残りの上海ビールを飲み干し、テーブルに瓶を置いた。
それを見たドクター・チャンも飲み干して瓶を置き、こんどは、大泉の昇格を誉め称え、そのお祝いを今夜やることを決めて部屋を出ていった。大泉は、鉱物になにかあると感じているものの深入りしすぎないように用心して、取り組むことにしていた。ここで怪しまれてはだめだ。CIAは日本とアメリカのそれぞれの国益がどうのこうのといっていた。それが何かは分からないが、ひょっとすると、アジア地域での局地戦争でも起きるかもしれないことなのかと自分ごとではないと思いながら、少し妄想モードに入りながら、ビールの余韻を楽しんでいた。
上海に戻り、ドクター・チャンの指定した中華料理店に入ると、そんなに高級ではない、コンパクトな店だったので、大泉は少しがっかりした。しかし、個室に通されるとそこにはすでに、ドクター・チャンとチューさんが、大泉を待っていた。それを見て大泉は内心だけでなく、満面の笑みを浮かべて、相手うれしいとチューさんに伝え、そして、まねいていただいたお礼をドクター・チャンに伝え、席についた。円卓で、4人がちょうどぐらいの少し小さいスペースを3人なので、比較的ゆったりと構えることができそうだった。
チューさんが、ビールを手に取り、乾杯を上げると、大泉、ドクター・チャンも一気にビールを飲み干し、歓談に移っていった。
「今日は、大泉さんの昇格いわいなんでしょう」とチューさんが、ドクター・チャンと大泉を行ったり来たりする目で、微笑みながら、話始めていた。
「ここは私が選んだんです。実は、あまり高くないですが、新鮮な食材がそろっていて、沢山美味しいものを食べれるので、きっと大泉さんも喜んでもらえると思ったものですから、」と運ばれてくる食べ物を見ながら、チューさんが大泉とドクター・チャンに、ね、と言わんばかりに誇らしげに背筋をピンとのばして話していた。その姿はやはり、綺麗なS字と豊満なところを強調した仕草だったので大泉もドクター・チャンも釘付けになっていた。
「じゃ、今日は、仕事の話はなし、と思ってましたが、2つだけ先に話させてください」とドクター・チャンが春巻きを突きながら話し始めた。
「まず、チューさんと先ほど話したのですが、高官への説得は上手くいきました。すぐに許可がおりるでしょう。しかし、モンゴルからの土の調達で少し譲歩するように言われました。ようは、賄賂の増額です。仕方がないですのでお支払いしますが、そのため、少し利益率が下がる可能性が出てきてます。竹村社長に許可を取っていただきたい。モンゴルからの土の搬入は、幾つかの工場がある程度建設が進んでからになりますが、しかし、掘る効率と今後のリスク、ようは搬入がダメになる可能性をさけるために、今の採掘量を当面1.5倍に増加させ、工場に入れないものは中間貯蔵場所を設定することにしました。
それは、われわれの工場の敷地内ですので、搬入がすんでしまえば、あらゆるリスクを回避できます。いいですね。そのために少しお金を支出しますが、今期の損益ですべてまかなえますので、中長期には得することになるはずです。これも竹村社長に承認をとっていただきたい。大泉さんにお任せして良いですか?」とドクター・チャンは大泉を見ながら、確認のための目配せを要求した。
大泉は分かったと確認したが、一言付け加えた。
「わかりました、承認をとりますが、一度、搬入されてくるモンゴルの土をみせていただけますでしょうか?それから工場でのプレ処理プロセスも見学できればうれしいですね。」と大泉はドクター・チャンの目をじっと見て言い渡した。ようは、これは指示だということを分からせるような口調で。ドクター・チャンは何も問題ありませんので明日いきましょうということになり、後はただの飲み会となった。それにしても、チューさんのチャイナドレスは生かしている。
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