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シューマンピアノ四重奏曲変ホ長調第三楽章Op.47 を聴きながら。

https://www.youtube.com/watch?v=6VsLshXUyio
シューマンピアノ四重奏曲変ホ長調第三楽章Op.47

この曲を聴いていると、冬木立のなかを母と二人でお散歩した時間を思い出す。美しく大きな噴水が飛沫をあげ、冬ざれた公園を子供たちが走っていく。母とわたしは、いつも文学や絵画の話をしながら欅並木を歩いた。永遠のような静謐としたあの時間を思い出す。この曲が、シューマンピアノ四重奏曲変ホ長調第三楽章Op.47だと知ったはのはつい最近のことだ。「オーケーグーグル、この曲はなに?」と聴いたら教えてくれたから。


 それで、シューマンのことが気になり、色々調べてみた。哀しい運命の作曲家。amazon primeで、シューマンの伝記映画『愛の調べ』(1947年米公開、監督ジュレランス・ブラウン)も観た。シューマンには、ポール・ヘンリード、妻でピアニストのクララ・シューマンにキャサリーン・ヘップバーンが扮している。二人の間には、子供が8人もいた。シューマンを尊敬して自分の音楽を聴いてもらおうとやってくるブラームスの役には、ロバート・ウォーカーが扮していた。彼はそのままシューマンの家に下宿して、子供達の面倒を見たり、家の様々な用事をしたりする。そしていつしか、クララ・シューマンに惹かれいく。40歳ぐらいから精神に障害をきたしてしまったシューマンが、1856年に46歳で亡くなったあと、ブラームスがクララに結婚を申し込む。クララは、申し出を静かに断る。そのシーンがなんとも美しい。シューマンとクララの静かで限りなく美しい日々に想いを馳せることができる映画だ。ほかにもいくつかこのテーマの映画ができているようだが、もう他の映画は観なくてもいいように思う。

 そういえば、母が以前「シューマンの『子供の情景』ってとってもいいのよ」と教えてくれた。シューマンとクララのあいだには8人もの子供がいたので、きっとその情景を音楽にしたのだろう。大勢子供がいるのがシューマンは好きだったようだ。先日、母にこの映画を見たことを電話で伝えると「わたしその映画みたわ」と言っていた。調べてみると日本での公開は、1949年2月1日と書いてある。もしそうだとすると、母は、22歳だ。冬木立のなかをもしかしたら父と一緒に観に行ったのかもしれない。戦後4年目の冬である。この映画を観ていると、私たちがこの70年間で何を失ってしまったのかを思い知らされる。

 「キャサリン・ヘップバーン大好き」母はつづけてこう言った。ハリウッドの女優のなかでは、異質な知性美を持った女優だった。もう一度聴いてみよう。もしかしたら、失ってしまった何かを取り戻すことができるかもしれない。

https://www.youtube.com/watch?v=6VsLshXUyioシューマンピアノ四重奏曲変ホ長調第三楽章Op.47
(わたしは、特にグレン・グールド版がお気に入りです。)



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