![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/106031969/rectangle_large_type_2_f3b2de5359980eecd06477fa815fc48b.png?width=800)
Photo by
hamahouse
七つ下がりの雨
雨は嫌いだった
気圧は下がるし 洗濯物は乾かないし 髪の毛はまとまらないし
そんな憂鬱な雨を君は天からの恵みだと言う
雨がなければ作物は育たないし そもそも水がなければ生物は生きていけない
なんだかスケールの大きな話だ
私には自分の事で精一杯で 世界や環境の事なんて考えてみたこともない
雨は嫌いだった
傘を忘れて 駅の改札から外に出るタイミングを見計らって降る雨のせいで 雨宿りしてる時なんか惨めに思う
蒸し暑くて 体に貼り付くシャツが鬱陶しい
そんな恨めしい雨を 君はラッキーだという
雨が降らなければ 君とここで遭遇する事も無かったし こうやって傘に入れてあげる事もできなかった
笑いながら傘を私にさしてくれる君の 雨に濡れてしっとりとした前髪が やけに色っぽくて
首筋を滴る雨水から思わず目を背けてしまった
私達の距離を縮めるきっかけが こんな憂鬱な雨のおかげだなんて 悔しくて でもありがたくて
俯いて少し濡れたスニーカーを睨む
今日だけは 嫌いから普通に繰り上げてやらん事もない
傘の中で触れ合う腕が 妙に熱っぽくて
家に着いてからも その感覚の余韻で全身に熱が広がっていく気がした
あわてて熱を冷ますように 冷水のシャワーを浴びる
シャワーを浴びながらまた 雨に濡れた君を思い出してしまう
やはり雨は嫌いだ 冷静でいられなくなる
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?