スクリーンショット_2018-05-04_13

室町・桃山の要素を混ぜた現在を創りたい

お二人とも沢山の質問をありがとう。
私からの回答と、日々の出来事を織り交ぜながら軽く纏めていきますね。

もし自分が違う時代に生きているとしてどの時代がいい?(東京都・wakaba.worldさん)

「日本に暮らし続けるのだとしたら」室町時代、桃山時代かな。
日本の文化は約700年前の室町に大成し、現代まで継承されて成り立っていると私は解釈していて、この時代には「寄合(よりあい)」というお茶や連歌を様々な身分の人が集い楽しむ社交空間が流行ったの。
ただ、楽しむだけではなく、禅宗と絡んだ真面目なお茶の席もあり、制限のある空間の中で「見立て」て遊んだり。「侘び寂び」が生まれたのもこの時代。

Wabi-Sabi わびさびを読み解く for Artists, Designers, Poets & Philosophers - レナード・コーレン

気楽さと、締めるところは締める硬さの高低差ある二つが両立したからこそ生み出された価値転換や想像力豊かな文化の膨らみを見たいし、文化を支える人々がどんな人だったのか会ってみたいなと思うよ。
日本の近代化=西洋化だったけど、それが人々に齎したのは孤独だと思っていて。
「なんかお洒落!」「インスタ映え!」「粋がって煙草燻らせてます」みたいな所謂キャッチーでポップ、クールみたいな日常って様々なことが身体的に一致しないしギクシャクする、美しくない、そこには裏があると本能的に気づいている人も多いはず。
「私を見て!」みたいな主張強くて、自己顕示欲の塊みたいなものって、試してみたら本質抜けてるってことに気づくから。
そんな紛い物ではないものを、拾って行きたいし人々に広めたい。
「なるほどですね」「深いですね〜」だけで話を終わらせないで、一つ一つに考えを巡らせる余白、理解して手に取るだけの素養を持ち合わせた人々がこの先に増えて欲しいと心から願っている。
物事の仕組みとして、始まった点から、徐々に派生していくことが常であるから、大衆文化(江戸期)になる一つ手前の仕掛ける点を織り交ぜた文化を創りたいなと思うのです。
広めるということは、重すぎず時々キャッチーさも大切なのだけどね。

ふと思うんだけど “好き” ってだれのもの?(ロンドン・碧さん)
それにね、昨今は “好き” の所在が迷子になってない?とも感じてる。一次情報の濃度が薄いSNSの怖いところはそこにあるとも思ってる。それもずっと、無意識のうちに、切り・張り・合わせた誰かの “好き” を自分のそれと誤認してしまうという虚しい事象。

碧さんの仰るように、好きって無意識的な要因が多いと思うな。
好きになる前段階には「受け入れられるか」と「面白いと思えるか」があって、その中からより惹かれていったり、引かれていって残ったものが「好き」に昇華していくのではないか。
社会的経験を通して感じた「違和」によって、伝統側に戻ってきたし改めて自分を見直し「好き」だったと気づいたこともあるよ。
伝統を追って、その真逆のティール型組織である自由大学に行ってみたけど、西洋的コモディティ化されたカルチャーを私は受容できなかった。だからまた伝統に回帰した。
個人的な意見としては「好き」に昇華すると「好き」を軸に派生したり、突き詰めていくもので、一生かけて無視できないものではないだろうか。
私にとって「好き」が「いけばな」であって、なんだか今も「好き」にしがみついている。
DNAに刷り込まれたことかもしれないし、親の影響かもしれないし、環境かもしれない。

毎日を過ごすなかで、時間飛行を感じることってある?(ロンドン・碧さん)

これは日本の伝統芸能、芸術を学んでいると感じる。
能や合気道の剣術の時の足の運びなんかは、当事者以外から見るととてもゆっくりに見えるのだけれど、物凄い速さを表現していたり、とてもゆったりとした時を表していたり、創造性を孕んだ動きになっている。
実際に、時間軸は未来にも過去にも繋がっていると思っていて。
小学生の時の体験で、木刀の剣先をみていると、剣先は壁の筈なのにブワーっと奥に広がる神宮の森が見えたことがあって。
その時から「今ここ」に立っているにも関わらず未来と過去、ハイスピードにもスロウにもにもなる異空間に触れる現象に屡々遭遇することがあるよ。
最近は、華を生けている時は、「立てる(生けるの解釈の前にあったもの)」と言う行為を通して、時間軸を超えて何かを地に下ろしているのかも知れないと感じる。
先日、結婚式のブーケを依頼されて仕上げた時に、花の仕事とそれ以外の仕事で計3日間休むことなく稼働して改めて気づいたのだけど、アレンジメントは全然エネルギーを消耗しない。
それに比べて立てている時は、時間軸や空間を超えている気がするので一つの作品を仕上げるのにめちゃくちゃ疲労する。
今までこれを説明すると道のつくものを嗜んだことの無い方には「はあ、何を言ってるのかさっぱりわからん!」と言われるのだけど、これを机上の空論だと思われたくなくて調べていたら日本の芸能を拡張現実とを重ね合わせて話している方を見つけまして。

「心」とともにうまれたこと——日本的ウェルビーイングの可能性 vol.4

興味のある方はぜひ見てほしいです。
「心」の概念が「シンギュラリティ」に上書きされるのではないか、と言う内容についても書かれているので、それならみんな興味ありそうだよね。

「お二人はSNSの目的意識や解釈についてどう思う?」
SNSは不特定多数にフェロモンを拡散できるツールなので、自分とはなんぞや。をより明確に出していく場であり、面白い出会いを見つける場だと思っている (若葉ちゃん)“クラス格差のないディストピア” という名の憩いの場 (碧さん)

自らの意見を日常に置いて感じる階級(日本はイギリスとかと比べてあまり格差を感じない方の社会だとは思うのだけど)とかそういったものをフラットにして、拡散できるという意見。
ただ五感を網羅できていないところは私も感じるなあ。

五感を癒すという意味で、人々は内心的に求めているのだな、と体感した会があって。
それが先日、根津美術館の班鴨庵で催された燕子花茶会でした。

茶室では田島さんという中国茶と日本茶の道に正通された方の聞香と試飲、それに混ぜるように香合やパフュームなど様々な香りを作られているさりさんの香りで感じる空間が作られていて。
黒文字の迎え茶から、聞香すると視界が冴えるような清らかさが空間に生まれ、鉄観音茶をいただきながら、Neroli or Aquaの柑橘系の香りを聞くと、土っぽい赤と柑橘の温かな香りが鼻と喉の奥で柔らかに混ざる。
まるで、お抹茶を点てた時のお湯と粉が撹拌されて一見混じっているようなのだけれど、全く別のものを喉の奥で通しているような繊細な感覚。
釜炒り茶を飲むと、懐かしさからの安心が生まれた。
「日本人に生まれてよかった」というアイデンティティと繋がるものを感じ、日常でガチガチに張ってしまった肩の力を落とすことができた。
静岡の釜炒り茶に合わせて、400年前の伽羅木のお香を聞くと、安心で力のと抜けた身体に金色の幸福感が駆け巡る。
蓮の蒸留水を混ぜた岩肉桂をいただくと、身体を突き抜けるようなお茶の温かさと時間差でくる蓮の香り。
しかも蓮は鼻で聞いた時はとても花独特のフェロモンの様な誘惑の香りを放っているのだけれど、口にすると花弁から香るものに限りなく近い。
今までに経験したことのない感覚が、身体を癒し熱量を与えてくれた言葉にすることができない体験でした。

最後に、この会の色を一人づつ話していくのだけど、みんな伽羅木の香りに金色を挙げていて、同じ空間にいた人々が全く同じ色を表現をするって人には計り知れない力が香りには秘められているよね。

岩肉桂は昔から薬にも使わていて、麻疹を直したという伝説もあり、このお茶は基本的に一般人が入手しようとしてもブレンドされた粗悪品が手に渡ったりと、到底たどり着けないものなのだそう。
400年前の伽羅木もお店などでは表に決して出されないもので、信用を元に師匠と弟子の間で代々受け継がれているものとのこと。
「良いものが自分の知る人に手渡されたら良いな」と思う心理は昔からきっとあって、大切なものはあまり拡散されない構造になっている。
SNSで受け取る情報だけでなく、現実社会で受け取る情報も五感を使って感性全開で受け取っても嘘偽りのないものにしたいと思った戊戌、孟夏でした。


さて、私の質問した好きな本と音楽についてまとめ

若葉ちゃんの選ぶ好きな本と音楽
<本>
サマセット・モームの『月と六ペンス』
いしいしんじ『ブランコ乗り』
ミヒャエル・エンデの『モモ』
<音楽>
jan and naomi
光と影 / ハナレグミ

若葉ちゃんの強烈なエネルギーの中に、目の前の人を理解しようとする力、大きな包み込むような優しさ、人という実態のその奥にある見えないものを見ようとする力は、これらの本や音楽の選択にも表れているような気がしました。
「光と影」を聞いた時に、これに共感できるということは若葉ちゃんの中に壮絶な経験があったのかな、なんて思ってしまった。

碧さんの選ぶ好きな本と音楽
<本>
浅井 泰範の『七色のロンドン』
伊丹十三先生の『ヨーロッパ退屈日記』
<音楽>
恋は桃色 / 細野晴臣
君は天然色 / 大瀧詠一

日々インスタライブなどで碧さんの近況拝見してます。
既に餡子が恋しくなっているようだけど、やっぱり碧さんはロンドンにいる時の方が文字が生き生きとしている感じある!器と魂が一致したね!
自分が掘った先にいる人が細野さんってわかるかも。
私も文化人類学で掘っていたらぶつかったよ!
人々のどこか懐かしさを抱える部分にフックする声とメロディがあるね。

そんなで2人から見つけられたことは
- 人間味
- 普遍性(懐かしさ、共通)
- 国境を超える力
- 愛
- 光と影

(私後ろ二つがキーワードな気がする!)
今読み返したら混沌としていたので、私からは質問を一旦これで締めるね笑
そろそろタイトル決めたいところだね。

私の今の心情にあった好きな音楽は、

OWLCITY - Alligator SkyRoller coaster through the atmosphere, I'm drowning in this starry serenade,Where ecstasy becomes cavalier,My imagination's taking me away.Reverie, whisper in my ear,I'm scared to death that I'll never be afraid,Roller coaster through the atmosphere,My imagination's taking me away.

共感ベースで物事が広がっていく社会において、情緒的=エモさや弱さが鍵で、エモい曲を只管聴いている時があるよ。一昔前だけど、この曲が好き。
あと、歌詞が発射台から宇宙に向かっている気持ちになる。

Ryoji Ikeda - dataplex

点を只管置いていくような単調が生み出す複雑性。
時々、点の渦の中にいるような感覚が心地良い。
深夜の制作にこれを聴く時もあるよ。

終わりに、サムネイルの写真は、現在の根津美術館の燕子花。
日記が一周回って今が盛りです。
お茶席にちょこちょこ知り合いや友人が訪ねてくれて、普段会う雰囲気から少し気の抜けた姿を見て人間って愛らしい生き物なのだなぁ、と謎の母親心みたいなものが芽生える日々です。

日本は梅雨入りも間近、ロンドンにも雨が多く降る時期はあるのかな。
お二人ともご自愛くださいね。

ご興味いただけましたらサポートをお願いいたします。 サポートいただいた費用は活動に関する書籍や勉強の費用に充てさせていただきます。 もしサポート費用の使い道が気になる場合はお問い合わせいただけましたら、開示いたします。