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#05 A Poem Review

海底に夜ごとしづかにとけゐつつあらむ。航空母艦も火夫も

塚本邦雄

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わたしはこの一首を詠んで次のようなイメージを持った。

海深く、地上の光が届かないほど深い底に、無人艦となった航空母艦がしずかに身を横たえている。

重い鉄の扉は開かれ、静かに魚が出入りする。光が届かない海底は、常に夜の様に暗い。

航空母艦の館内には船員のものと思われる軍帽が沈んでいる。持ち主の姿は見当たらない。

魚が泳いで戦艦の室内に進む。藻に覆われながら、航空母艦は沈んだ日を漂流している。

魚が死んだ。ゆっくりと死骸が海底に沈む。

無人艦は沈んだ日のまま居座りつづける。魚の死骸は他の魚に食べられた。
残ったのは僅かな肉片と骨だった。

あの時、この航空母艦と共に沈んだ船員も、あの魚の様に肉体を貪られたのか。

陸では、昼と夜が交互に折り重なり人々に過去を与える。海底の、あの無人艦は、まだそこにある。

国語の授業で、この首は「薄れゆく戦争の記憶に対する風刺」と習った。時が経つにつれ、人々の戦争の記憶は薄れゆく。悲しみが徐々に薄れることは、良いことかもしれない。だが、忘れてはいけない悲しみもあるだろう。

悲しみを忘れた代わりに得た笑顔や喜びは、やがて、陸で広がりにぎやかで鮮やかな色を帯びいく。

しかし、海底に沈む航空母艦や火夫の白骨は、いつまでもあの時の色のまま、悲しみに包まれ、セピア色の写真のように残っている。

夏が来るたびに戦争を知らない子供が増え、知っていた者が死んでいく。

わたしたちは、この短歌に倣って、戦争について正しい理解をしなければならない。

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学生時分に書いた感想文を修正し再掲
当時は校内作品集に掲載され、うれしかった記憶があります。

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