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「十九の散華」(一)

「父上様、母上様、嫂様、ご無沙汰しています。その後母上の容態はいかがでしょうか、お変わりありませんでしょうか。何か新しい特効薬が出て来るのをいつも願っております。  さて、僕、いや海軍では自分のことを僕と言ってはいけないことになっていますので、これからは私と言います、私は予科練に来てようやく一月が経ちました。  この一月の毎日と言ったら、もう無我夢中でした。殆ど一時も身体や気が休まる暇がありませんでした。私は自分が怠けものという自覚はこれまでなく、勤勉とは言わないまでも、そこ

    • 「十九の散華」(序)

      (あらすじ:昭和十七年初春、予科練入隊を志した16歳の和田徹は、以後霞ヶ浦河畔の予科練基地(土浦航空隊)で厳しい訓練を受け、続いて同じ茨城県内にある霞ヶ浦航空基地及び筑波海軍航空基地にてそれぞれ飛行練習及び飛行練延長教育を受け、筑波基地にて特攻兵器を使った特殊航空隊(神雷隊別名桜花隊)入隊を志願するも、採用されず。その直後、戦況悪化したフィリッピンの特攻部隊(201航空隊)に招集され、僅か十日間の特攻出撃訓練を受けたのみで、昭和20年初頭の早暁、フィリッピン・ルソン島のツゲガ

    「十九の散華」(一)