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おとなの思うようにはならない

コロナ禍の影響で、中学生の娘の
学校生活も今までのやり方と
大きく変化してしまった。

例えば中学最後の修学旅行は、
僅か60名余りが友達同士でも
距離を取らなくてはならず、
大型バス3台に乗って東北地方を巡った。

ホテルでは一部屋を二人で使い、
部屋の往き来は禁止となった。
宴会会場での食事も会話は最小限になり、
食後のレクリエーションは
三密を避けて遊ぶ方法が取られた。
それでも、大いに盛り上がったそうだ。

そんな中、学校祭が11月にあった。
みんなで企画し、進めることが好きな娘は
実行委員に加わった。

娘はお芝居を披露するグループになり、
忙しそうで帰りも遅くなった。
自分達がやりたい事と先生が
生徒にさせたいことが食い違い、
夕飯の時間に娘の愚痴をたくさん聞いた。
私は「親の時間」で話を聞くみたいに
時々娘を励ましながら話を聞いた。

そんなある日、娘が自分達の要求が
先生に通ったと明るい顔で帰ってきた。
私も嬉しくて二人でハイタッチをして喜んだ。

劇中で踊るダンスの練習も
自主的に朝早く何度も集まっていた。
本当によく頑張っていた。

当日、私も娘の劇を見るのを
楽しみに学校に行った。
衣装も生徒達が短い時間で
良く作ったなあと感心するくらいの
素晴らしいものだった。
娘たちのお芝居もダンスも
努力の成果がよく出ていた。

歌を一人ずつ披露するグループもあり
その中に娘の友達がいて、
私はその子が歌った曲に
釘付けになってしまった。

音響設備が悪く、なかなか聴き取れない中で、
その子が吐き捨てるように
「考えたんだ、あんたのせいだ!」
と言う歌詞だけがはっきり聞こえて、
びっくりした。

暫くしてまた
「どうでもいいよ、あんたのせいだ!」と聞こえ、
その訴えるような娘の友達の歌い方と
歌詞が耳に残り、どうにも気になって、
学校から帰った娘に、あの歌は
誰が歌っていて何ていう曲なのかと尋ねた。

「ヨルシカ」の「だから僕は
音楽を辞めた」という曲だった。
早速検索して聞いてみた。
歌詞も歌声も私の心に突き刺さり、
聞いていたら泣きたくなってきて
「親の時間」の仲間に聞いてもらった。

そうしたら、中学生の頃の記憶が
一気に押し寄せてきた感じだった。

自分のことが好きになれなくて、
勉強もわからなくって、
親は夫婦喧嘩ばかりで、
学校にも家にいても
居場所が見つからなくて、
でもおとなには相談したくなくて、
友達も信用できなくて、
将来に不安が一杯で、
もうどうして良いか
わからなくなっていた
中学生の私が、周りのおとなや社会や、
私のことをダメな人間だと
思わすもの全部に、
「あんたのせいだ」と
言いたかったのだと気がついた。

散々、思い出して泣いていたら、
私の娘のように
『おとなの思うようにはならないぞ』と、
抵抗していた、たくましい自分も
いた事に気づいた。
ただ、娘には仲間がいるけれど、
あの時の私にはいなかった。

でも、今の私には気持を話せる仲間が
たくさんできたことも実感した。

まきちゃん

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