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歴史学とアイデンティティについて

執念深いわけではないんです。重ねていいますけれども、問題提起をいただいた方には感謝しなければなりません。

歴史学とアイデンティティの関係についていろいろ考えたのですが、アメリカの歴史学者リン・ハントの言葉を引用するのが一番適していると思いました。

「集合的記憶が、書物や博物館からテレビ番組やインターネットの噂まで、多用なかたちをとって形成されている。トラウマ的な出来事であろうとも、国民的偉業であろうとも、集合的記憶は過去についての真実の説明に基づいているとき、アイデンティティをかたちづくる最も有効で、持続性のある仕事を行っているといえる。一般市民は、注目を集めるようなものではなく、できる限り正確な歴史的出来事や歴史的経緯を知らされねばならないのである。問題は、正確性と人為性とのあいだのバランスであり、それはまた歴史的真実とそれをどうやって立証するかという問題に私たちを連れて行ってくれる」。(リン・ハント『なぜ歴史を学ぶのか』p26)

リン・ハントは「過去についての真実の説明に基づいているとき」という重要な留保条件を付けたうえで、集合的記憶(つまり人々の歴史認識)はアイデンティティの形成にもっとも有効で持続性のある仕事を行っているとしています。そしてそれはアメリカのみならず、日本でも、韓国でも、中国でも、ヨーロッパでも、中東でも、南アフリカでも当てはまることを、具体的な例を挙げています。


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