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魔女旅に出る

社会人4年目。一人暮らしにも慣れて、毎日あれこれ苦戦しながらも、おおむね元気でやっている。任される仕事も増えてきて、しっかりしてきたかなと思う日々だが、実家から帰る道すがら、いつもひっそり泣いてしまう。

 実家を出るのは大体夜だから、自分の家まで向かう電車から見える窓の外は真っ暗で、そのくせ速く進んで行くから無性に不安になるのだ。もともと夜の散歩も好きだし、旅行に夜立つ時なんかはものすごく興奮するのだけど、ほっとゆるめていた気をまた張り直すこの感じにはまだ慣れられない。

そういう時いつもスピッツの「魔女旅に出る」という曲のタイトルをおまじないのように思い出している。曲自体のメロディーが浮かんでくることはないが、不思議とその言葉に、背筋が凛と伸びるような心地がするのだ。

一人暮らしは自分で選んだし、自由に身軽でいたいと思っている。自立した人間でありたいとも思う。そうやって足を前に進めていく自分が好きだ。それでも、ときどき不安になったりさみしくなったりするのだ。

東京が近づくと窓の外も少しずつ明るくなってくる。魔女旅に出る。優しい気持ちを見失わずに、心をおどらせていけるかな。しっかりとした足取りで電車を降りた。

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