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「地球の窓」は長瀞に

旅行中の車移動が好きではない。車は自分のタイミングで出発できるし、目的地まで歩かずに直行できるから便利ではあるけれど、景色を見れなかったり気になるスポットに寄りにくいという旅にとって大きなデメリットがあると思う。

目的地を決めない旅はしたことがないけれど、道中気になった場所に寄ったり、景色を見ながら移動したりするのが旅の醍醐味な気がする。そのほうが人の流れや、街の明るさが記憶に残りやすい。つまり旅は移動手段でその濃淡が決まるといっても過言ではないんじゃなかろうか。

そんな自分が車で草津を目指すことになったのは、メジャーすぎる観光地はつまらないという勝手な先入観と車の旅は疲れるしつまらないという先入観、この2つを確かめたい、そして出来るならそれを捨てたいと思ったからだ。

これまでなかなか選択肢としても挙がらなかった草津がどんな場所なのか、自分史上一番ハードルの低い旅行、いや、もはや旅行でなくて視察と言ってもいいくらいの感じで期待せず行ってみることにした。しかも、車で。

草津までは高速道路を使って止まらずに走っても3時間弱かかるので、行きと帰りに事前に調べておいた気になるスポットをその時の気分で行くことにした。まず向かったのは長瀞岩畳。山間を走る秩父鉄道の長瀞駅からすぐそばにある岩畳は紅葉の終盤を迎え、平日の真っ昼間もあってか人は疎ら。

車を駐車場に停めて看板の進路通りに進むと、50年以上は経っているだろう昭和な建物が何件か廃墟として残る道に出た。ガラス張りの建物の中は薬局だったであろうことが伺えるポスターや看板が埃を被って残っている。子供の頃から昔の状態がそのまま残る建物を見ると不気味に思ってしまうところがあり少し背中がゾッとしたが、とにかく歩いた。

川沿いに近づくと「地球の窓」というタイトル岩畳の全体図と解説付きの案内板が立っていて、そのすぐ横の坂を下ると岩畳に出れるようになっていた。

岩畳は地殻変動によってできた割れ目や、水の流れが一定期間同じサイクルで流れたり渦を巻いたりしたことにより削れた部分などが地表に顔を出したもので、凹凹した道が500メートルにも及んでいるという。川沿いを歩いてみることにした。

空は曇っていたものの空気が澄んでいて川の水が遠くの山や対岸の植物を映して綺麗だったが、どこか自然の厳かさを感じられる場所だった。普段登山で土と根が張り巡る山道を歩くのと違い、雨が降って滑らない限り岩の上は非常の歩きやすく疲れにくいことが発見だった。

地殻変動のように誰からも気づかれないくらいゆっくりのスピードで大きな変化を続けてきた地球。

人間も大きく変化するには結局のところ、ゆっくり時間をかけてジワジワ進んでいくことが最短ルートなのかもしれない。地球の計り知れない歴史上のたった僅か100年余りの一瞬の人生に、人が変われることがいつくあるのだろうか。そして、それが地球にもたらす影響はどれだけ小さいものなんだろうか。

でもだから、自分自身が納得できる生き方をしなければいけない。そんな漠然な大きなことを思ってしまうくらい大地の肌と触れ合えたようなそんな時間だった。

「地球の窓」は長瀞にあり。
岩の上を歩ける場所、探しにいこう。




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