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「品詞」のこと

今回は語彙のお話です。語を意味や機能によって分類したものを「品詞」といいます。日本語と英語ではこの品詞の立て方が違うので、これが日英語を比較対照しながら学ぶときに問題となります。英語だけを使ってダイレクトに英語を学ぶのであれば話は別ですが、母語である日本語を媒介語として使う場合は、日本語と英語を突き合わせて比べてみることになります。例えば、日本語にあって英語にない品詞に形容動詞があります。形容動詞を認めない文法学者もいますが、「彼の息子は健康だ」と「彼の願いは健康だ」の「健康だ」は文法上は違った仕組みをもっています。前者は形容動詞で後者は「名詞+だ」ですから形容動詞という品詞は一応必要ということになります。英語にすると、それぞれHis son is healthy.とHis wish is health.となり、日本語の形容動詞が英語では形容詞に対応することがわかります。

日本語の形容動詞が必ずしも英語の形容詞に対応するとは限りません。「りんごが好きだ」はI like apples.です。この英文を「私はりんごを好む」と訳して考えればよいとする人もいますが、漢文「我好林檎」の書き下し「我林檎ヲ好ム」に由来する日本語は私たちがふだん使う日本語とは別で、こうした文体に習熟するにはそれはそれで国語の授業でしっかり学ぶことが求められます。日英語の比較対照による学びは、自然な日本語と自然な英語をつきあわせてみることが大切なのです。

「like-好きだ」と似た組み合わせに「want-ほしい」があります。日本語の「水がほしい」という形容詞文は英語ではI want some water.となります。「君がうらやましい」もI envy you.です。ただ、これらの次例を見ていくと日本語の形容動詞・形容詞が英語の動詞と対応するのは主に好悪のような感情に関わる語だということが見えてきます。(「need-必要だ」のような微妙なものもありますが。)こう考えると述語の意味と構文のパターンに一定の対応関係があるのではないかということも見えてきます。これが「文型」を学ぶときの重要な視点になってきます。

英文法を学び始めていきなりついていけないと感じてしまう人がいるのは、日本語と英語には基本的なところで大きな違いがあるにもかかわらず、授業などでその違いに焦点が当てられていないことが原因です。文法を学ぶには、英語の文法をよく知る国語の先生や、日本語の文法をよく知る英語の先生から教わることが大切なのです。

ちなみに、ここで触れたことは『ゆっくりとしっかり学ぶ英文法』改訂版の第2章で扱っております。

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